国立感染症研究所

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ネズミイルカから分離された海洋ブルセラ菌のヒト曝露、2012年―米国・メイン州

(IASR Vol. 33 p. 248: 2012年9月号)

 

2012年1月28日、メイン州南部の海岸で大学Aの海洋哺乳類施設のレスキューチームがネズミイルカの死骸を回収した。翌29日、同大学において、職員1名、学生2名およびボランティア1名により検死解剖が行われた。この時、脳の採材のため電気ノコギリによる骨の切断を行っている。また、その際、4名とも手袋とガウンを着用していたが、呼吸器感染防護は行っていなかった。検死解剖後、研究室AおよびBに送付された子宮角のぬぐい液検体からブルセラ菌が検出、同定された。その後、CDCによる遺伝子検査により海洋ブルセラ菌(Brucella pinnepedialis またはB. ceti )と確認されたが、分離された動物がイルカであることからB. ceti が疑われた。

研究室Bから報告を受けたメイン州CDCは、死骸や検体を取り扱った人々の曝露の可能性について調査を開始した。大学Aで検死解剖を行った4名は呼吸器感染防護をしていなかったことから、エアロゾル化したブルセラ菌への曝露の可能性が高いと判断され、メイン州CDC はCDC と協議を行い、この4名に対し、3週間の予防的抗菌薬投与(リファンピシンおよびドキシサイクリン)、CDCによる血清学的モニタリング、自己体温チェック、24週間にわたる週1回の急性熱性疾患のモニタリングを行うよう勧告した。一方、研究室AおよびBでは適切な手順で検体処理を行っており、曝露の可能性はないと判断された。なお曝露の可能性が高いとされた4名は、2012年6月26日の時点では発症しておらず、抗体陽転もしていない。

近年、米国海岸線沿いに座礁する海洋動物の数が増加傾向にあり、ヒトと海洋動物が接触する機会が多くなっていることから、ブルセラ菌や他の病原体に感染するリスクが高まっている。座礁した海洋動物を救助、治療もしくは検死を行う際は、携わる人々の病原体への曝露を防ぐため、適切な予防措置をとることが求められる。エアロゾルを発生する手技を行う際は特に注意を要する。

(CDC, MMWR, 61,  No.25,  461-463,  2012)

 

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