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2014年予防接種に関する戦略的諮問委員会ミーティング

(IASR Vol. 35 p. 201-202: 2014年8月号)

予防接種に関する戦略的諮問委員会(Strategic Advisory Group of Experts: SAGE)が2014年4月1~3日にジュネーブで開催された。この中では、WHO Department of Immunization, Vaccines and Biologicals, GAVI Alliance(ワクチンと予防接種のための世界同盟), GACVS(Global Advisory Committee on Vaccine Safety)の3つの機関からの報告が行われ、引き続き「ワクチンの10年」(Decade of Vaccines:DoV)と銘打った戦略でワクチン接種を多くの子どもたちが受けられるよう支援していくことが話し合われた。以下、主な内容を抜粋する。

WHOからの報告は主に以下である。2014年1月にWHO執行委員会が黄熱ワクチンについては、1回の接種で終生免疫として十分であるという推奨案を5月のWHO総会に向けて提出した。また、国際保健規則(IHR)Annex 7に黄熱ワクチンが1回接種で終生免疫が獲得できることを反映するよう求めた。アルゼンチンにおけるA型肝炎の1回接種の継続的なモニタリングではブレークスルー症例を認めておらず、長期の予防効果が示唆されている。国際的なコレラワクチンの備蓄は確立され、コレラワクチンの履行を広げるため顧問会議が開かれた。DoVの目標を達成するための進行状況が報告され、今後の目標として2015年までにすべての国でDTPワクチン3回(DTP3)を国民の90%以上で接種し、維持することが重要な挑戦であることを強調した。そのためにはさらに1,300万人の子どもに接種する必要がある。また、世界の子どもの71%が中等度の収入の国にいるが、そういった地域で新しいワクチンを導入する必要があることも強調された。予防接種の概略的計画としては1歳時に土台となる必要なものをまずカバーし、その後ブースター目的や不完全な接種歴をカバーする目的でキャッチアップを行うことが推奨される。

SAGEのミーティングで取り上げられたワクチンの各論について以下に述べる。

ポリオ根絶:ポリオ発生国(polio-infected countries)からの渡航者、すべての居住者、4週間以上滞在を予定する全年齢の者にも接種を推奨する。より高年齢層がポリオウイルスの国際的な拡散に関与しているとする報告がある。経口生ポリオワクチン(OPV)接種に加えて、不活化ポリオワクチン(IPV)を追加接種として使用可能である。インドの報告では2価のOPV1回接種とIPVは、OPVを以前に投与されていた人からのポリオウイルス排出を減らすことがわかった。IPVしか接種歴のない人は、入手可能であればOPVで追加接種を行うべきである。ポリオ発生国に居住し国際的な渡航をする者(全年齢)は、OPVあるいはIPVの接種を渡航前4週~12カ月の間に接種すべきである。最大効果は4週以内に得られ、腸管免疫の減衰は12カ月以内にみられる。出発の4週前までに間に合わないとしても、12カ月以内に接種歴がなければOPVあるいはIPVを接種すべきである。ワクチン株由来ポリオウイルス感染症の排除を2014年後半~2015年前半までに達成すべきと強調。

水痘・帯状疱疹ワクチン:SAGEは小児期の定期接種化、導入前からのサーベイランス導入による評価を推奨した。80%以上のカバー率を維持し、生後12~18か月での接種を推奨した。さらに、死亡率や重症水痘を減らすには1回接種で十分とされ、アウトブレイクなどを減らすために2回接種を推奨した。免疫低下者においては水痘が重症化しやすい。HIV患者へのワクチン接種は安全で免疫原性や効果が得られ、病状安定のCD4分画15%以上の患者では水痘ワクチンが考慮される。急性リンパ性白血病や固形腫瘍で再発の見込みがなければ化学療法終了後3カ月目からワクチン接種が可能であるが、細胞介在性免疫が欠損しているなど免疫不全がある場合には投与すべきでない。免疫のない医療従事者には2回接種が推奨される。高収入国での帯状疱疹ワクチンの臨床試験および市販後調査では、安全で効果的であると示唆された

HPVワクチン:最低6カ月以上の間隔での2回接種は十分である。2回目接種が初回接種から5カ月未満の場合は6カ月以上経過してから3回目接種を行う。0、1~2、6カ月に接種する3回スケジュールは16歳以上や免疫低下者の接種には推奨される。これらのスケジュールは2価でも4価でも同じであり、性的活動性が始まる前の9~13歳の女子に接種することが重要である。

百日咳ワクチン:全小児に対して、90%のカバー率維持を目標にすることが推奨された。生後6週を過ぎたらすぐに全菌体あるいは無菌体ワクチンを3回接種すべきである。調査した19カ国中5カ国で百日咳の再燃があり、うち4カ国は無菌体ワクチンを、1カ国は全菌体ワクチンを使用していた。無菌体ワクチン1回接種後の免疫原性は全菌体ワクチンに比べると弱く、無菌体ワクチンを初回に使用していることにより百日咳の再燃が起こる可能性がある。接種回数が限られる国では初回に全菌体ワクチン使用を継続すべきである。妊婦への無菌体ワクチン接種は安全で出生直後の乳児を百日咳から守るのに効果的だが、全菌体ワクチンまで拡大するものではない。

 

(WHO, WER 89(21): 221-236, 2014 )   (担当:国立国際医療研究センター・馬渡桃子  
                                                                                                 感染研・砂川富正) 

 

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