国立感染症研究所

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デイキャンプ参加者におけるヒストプラスマ症の流行―米国・ネブラスカ州

(IASR Vol. 34 p. 74 -75: 2013年3月号)

 

2012年6月21日、ネブラスカ州オマハ市で開催されたデイキャンプの指導員32名が急性の呼吸器症状を起こし、うち1名からヒストプラスマが検査陽性となった。ヒストプラスマは米国、特に中西部でしばしばみられる呼吸器症状を起こす真菌感染症で、鳥やコウモリの糞の混ざった土を吸って起こすことが多いが、ヒト-ヒト感染は起こらない。多くの場合は自然治癒するが、免疫不全者などで重症化することもある。

デイキャンプの指導員および参加者の保護者へ症状などの疫学調査を行い、加えて指導員は全員、血清および尿のHistoplasma capsulatum抗原の酵素免疫測定が行われた。参加者の保護者に対しては検査や治療法について手紙で説明し、希望に応じて無料で検査を提供した。

確定症例の定義は症状にかかわらず、キャンプに到着した以降に血清ないし尿検査でヒストプラスマ陽性の症例とした。疑い症例は検査結果にかかわらず、発熱ともう1つ以上の症状(頭痛、胸痛、息切れ、咳嗽のいずれか)が2012年5月21日~6月27日の間でキャンプ参加の3日以降に起こった症例とした。

32名の指導員のうち、19名(59%)が症例定義を満たし(17名は確定、2例は疑い)、11名(34%)は発熱ともう1つ以上の症状を有し、10名(31%)は医療機関を受診した。入院例、死亡例はない。指導員の年齢中央値は20歳(範囲:18~23歳)。症例全体でみると特に有意な要因はなかったが、確定例だけに限ると火の炉を掘る活動が関係していた(相対危険度 2.7)。キャンプ場の準備を行った5月21~25日の間、指導員たちは特に防護なしで作業し、6月4日からキャンプが始まった。参加者は年齢中央値9歳(範囲:6~14歳)で、自然の中での散歩やアウトドアゲームなどを体験した。キャンプに参加した797名の子供のうち、142名(18%)が回答し、ラボ検査は21名(3%)に行われ、全部で153名(19%)の情報が集められた。うち17名(11%)が症例定義を満たした(5名は確定、12名は疑い)。コウモリの糞の堆積物がみられたキャンプ場にいた子供は 2.4倍のオッズ比(95%CI: 0.5-11.4)、そこから20ヤード以内のキャンプ場で 2.2倍のオッズ比(95%CI: 0.5-8.2)だったが、距離に応じて感染リスクは低下した(Cochran-Armitage検定でp値0.04)。

市と州当局は2012年6月26日に現地を視察し、コウモリの糞の堆積物を認め、キャンプ場の閉鎖を勧奨し、閉鎖された。感染源はコウモリの糞に汚染されたキャンプ場の土地が、準備ないしキャンプ活動中に空中に舞いあがったものと考えられた。市はキャンプ場を変更し、汚染の除去を行った。流行地域の住人は浄化のために専門的な支援を求めるよう勧められている。

 

 

 

 

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