国立感染症研究所

 

コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の流行に関するリスクアセスメント(2019年7月24日現在)

2019年7月24日
国立感染症研究所

 

WHOは2019年7月17日、コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の流行に関して、国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)であることを宣言した。これをうけ、今回リスクアセスメントを更新した。

 

■事例の概要

現在コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo:DRC)で発生しているエボラウイルス病[感染症法上の名称はエボラ出血熱だが、本文では疾患名としてのエボラウイルス病(EVD)と表記する]の流行は、2018年7月中旬~下旬にかけてDRC東部に位置する北キブ州のMabalakoにおける急性出血熱患者の発生とそれがエボラウイルスによることが確認されることにより確認された。2018年8月1日にキンシャサ国立生物医学研究所(INRB)は、患者から採取された6検体のうち4検体がPCR検査でエボラウイルス遺伝子陽性を呈し、それらの患者がEVDと診断されたと報告し、同日、DRC保健省は同国としては第10回目となるEVD流行を宣言した。2018年8月5日の時点では、北キブ州のMabalakoを含む5つのヘルスゾーンとMabalakoと近接するイトゥリ州Mandimaから計43例(うち死亡例34例)が報告された。なお、遡り調査では、2018年5~6月に発生していた死亡例の集積がEVDによるものであった可能性が指摘され、これら死亡例は疑い例(probable case)として扱われている。北キブ州におけるEVDの発生は、DRCの赤道州で2018年5~7月に発生した第9回目のアウトブレイクとほぼ同じ時期であるが、それぞれの流行の原因となっているエボラウイルスの遺伝子塩基配列の違いにより、2つのEVD流行には関連性はないとされている。

流行発生から約1年が経過する現在に至るまで、北キブ州およびイトゥリ州の地域においてEVD流行が続いており、DRCで発生したEVD流行としては最大規模になっている。今回のEVD流行地域は、以前から国連の平和維持活動(PKO)の介入を要する程の紛争地帯で、武力衝突や暴力事件が頻繁に発生しており、外務省の海外安全ホームページにおいてもレベル4(退避勧告)の危険地帯に指定されている。さらに流行地域は、一部の住民の保健当局や政府への不信感が根強く、EVD確定患者や疑いのある患者の収容・検査診断、接触者調査、接触者を中心とするハイリスクグループへのワクチン接種などの適切な公衆衛生対応が十分に実施できない状態にある。このことが、感染拡大の背景にある。

続きは、以下のPDF版をご覧ください。

コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の流行に関するリスクアセスメント(2019年7月24日現在)

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version