国立感染症研究所

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<速報>乳児における無菌性髄膜炎疑い患者等からのヒトパレコウイルス3型の検出―石川県

(掲載日 2014/7/18) (IASR Vol. 35 p. 200: 2014年8月号)

2014年6月上旬~下旬にかけて、石川県内の2医療機関(感染症発生動向調査病原体定点)から提出された無菌性髄膜炎疑い等の乳児検体からヒトパレコウイルス3型が検出されたので報告する。

患者の状況等についてはに示したが、患者1は不明熱を呈した生後1か月の女児で、発症翌日に採血された血清を検体とした。患者2は急性脳症と診断された生後1か月の男児で、発症翌日に採取された髄液と糞便を検体とした。患者3は無菌性髄膜炎疑いと診断された生後7日の女児で、発症翌日に採取された髄液と糞便を検体とした。患者4は無菌性髄膜炎疑いと診断された生後1か月の女児で、発症後4日目に採取された髄液、咽頭ぬぐい液、尿、直腸ぬぐい液を検体とした。なお患者はいずれも入院していたが、その後全員軽快している。

ウイルス検査は全検体について、エンテロウイルスを対象としたRT-PCR法1)およびヒトパレコウイルスを対象としたRT-PCR法2)によるウイルス遺伝子検索を実施したが、エンテロウイルス特異的遺伝子はすべての検体で陰性であった。一方、ヒトパレコウイルス特異的遺伝子はすべての検体で検出されたため、PCR産物のダイレクトシークエンスによる塩基配列の決定およびBLASTによる相同性検索で型別同定を行った。その結果、検査したすべての検体からヒトパレコウイルス3型遺伝子が検出され、その塩基配列はすべての検体で同一であった。

今回、短期間に4例のヒトパレコウイルス3型の感染事例を経験したが、過去の報告からも本ウイルスは6~7月に多く検出され、特に0歳児での感染が目立っていた3,4)。さらに0歳児においては発熱、上気道炎のほか敗血症様症状や中枢神経系症状等を呈する重症例も報告されている5)。以上のことから、今後、ヒトパレコウイルスの国内、県内での動向を注視するとともに、0歳児における発熱等の患者、特に重症例に対する本ウイルスの積極的な検査、および乳児医療関係者に対し本ウイルスへの関心を促すことが重要と思われる。

 
参考文献
  1. 病原体検出マニュアル 無菌性髄膜炎
  2. Harvala H, et al ., J Clin Microbiol 46: 3446-3453, 2008
  3. 山本美和子, 他, IASR 29: 255, 2008
  4. 戸田昌一, 他, IASR 32: 294-295, 2011
  5. Harvala H, et al ., J Infect Dis 199: 1753-1760, 2009

石川県保健環境センター     
  成相絵里 児玉洋江 崎川曜子 杉下吉一

 

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