疑似症定点医療機関からの届出状況のまとめ(2017(平成29)年1月1日~12月31日)

国立感染症研究所 感染症疫学センター
(掲載日:2018年12月21日)

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」 第14条第1項に規定する厚生労働省令で定める疑似症(以下 「疑似症」 という)の届出状況について以下にまとめる。なお、これは、前回の2015年7月10日から2016年12月31日までのまとめの続報である。

疑似症届出制度は, 2007(平成19)年4月1日から, 生物テロを含む感染症の発生を迅速に把握するため, 医師の確定診断以前の、疑似症の診断の段階で情報を収集するべく, 指定届出機関による疑似症患者の年齢, 性別等の情報の届出制度として規定されたものである。具体的には, 同疑似症には2つのカテゴリーがあり, 摂氏38度以上の発熱及び呼吸器症状(明らかな外傷又は器質的疾患に起因するものを除く)を一号, 発熱及び発しん又は水疱を二号と表記する。ただし, 感染症法に基づく届出基準等及び感染症発生動向調査実施事業実施要項に基づき, 当該疑似症が二類感染症, 三類感染症, 四類感染症又は五類感染症の患者の症状であることが明らかな場合を除く, とされる。小児科または内科を標榜する医療機関が第一号疑似症定点として, また, 小児科, 内科または皮膚科を標榜する医療機関が第二号疑似症定点として, 保健所管内人口から算定された数に応じて指定され, 本サーベイランスが開始された。

2007(平成19)年11月~2015(平成27)年7月までの期間,疑似症定点医療機関が感染症サーベイランスシステム(NESID)への入力による届出を実施していたが,平成27年7月10日以降、疑似症定点からの情報を保健所が把握し、システム上に入力を行う方法が用いられていた。

一号疑似症定点からの届出数:全国で累計703件の届出がなされた。集計の年齢区分は0歳, 1歳, 2~3歳, 4~5歳, 6~7歳, 8~9歳, 10~14歳, 15~19歳, 20~29歳, 30~39歳, 40~49歳, 50~59歳, 60~69歳, 70~79歳および80歳以上となっている。年齢区分を0~9歳群, 10~59歳群および60歳以上群の3群に分類した場合, 各群の届出数(割合)は0~9歳群が277件(39.4%), 10~59歳群が79件(11.2%), 60歳以上が群347件(49.4%)であった。年ごとの届出件数は, 2015(平成27)年(7月10日~12月31日まで)は537件(2015年1年間では,1,369件),2016(平成28)年は818件であった。都道府県別では, 期間中1件以上の届出があった都道府県は3都府県6保健所で, これらの都道府県ごとの累計届出数は24~651件(中央値28件)であった。また、2府県2保健所より該当症例なしの報告があった。

二号疑似症定点からの届出数:全国で累計536件の届出がなされた。集計の年齢区分は一号と同様であるが, 上記と同様に患者年齢を3群に分類した場合, 0~9歳群が356件(66.4%), 10~59歳群が132件(24.6%), 60歳以上群が48件(9.0%)であった。年ごとの届出件数は, 2015(平成27)年(7月10日~12月31日まで)が357件(2015年1年間では,603件),2016(平成28)年が601件であった。都道府県別では, 期間中1件以上の届出があった都道府県は5都府県7保健所で, 都道府県ごとの累計届出数は1~528件(中央値2件)であった。

各都道府県が指定した疑似症定点の総数や診療科の内訳の情報が得られていないこと, また, 自治体規模が異なることを考慮しても, 一号, 二号それぞれの疑似症定点からの届出数は, ともに都道府県ごとの届出数として, 依然大きなばらつきが観察されており, 自治体ごとに本サーベイランスの運用状況が異なる可能性がある。

 


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