2023年10月30日
国立感染症研究所
所長 脇田 隆字
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、ウイルスゲノムの変異を繰り返しながら世界中に広がっています。日本国内でも数次に渡る流行を経験し、感染管理や行動自粛、ワクチンなど様々な対策が実施されてきました。今年5月8日に感染症法上5類に指定されましたが、現在も市民の皆様をはじめ、医療従事者や高リスク者のケア従事者、自治体など様々な人々による感染対策が行われています。
10月28日に私たちは感染研の業務やサイエンスの楽しさを知っていただくため、戸山庁舎の一般公開を実施しました。私は4年ぶりに来場者と直接お話する機会を得ました。私にとって生の声を伺うことは大変貴重であり、500人以上の来場者の方々とお話をさせていただくことができました。
その中で、私の意図とは異なる内容が、私の言葉としてSNS等で広まることとなってしまったため、ここで改めて見解を述べさせていただきます。
新型コロナワクチン(mRNAワクチンを含む)が新型コロナウイルス感染症による重症化、入院及び死亡を減らすことは、多くの適切にデザインされた研究に基づいて実証されており、学術的に確立された知見です[1-3]。これは日本国内で実施された複数の研究でも確認されています[4-10]。WHOの予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)は、こうした学術的知見に基づいて、重症化、入院、死亡のリスクが高い集団に対してワクチン接種を行うことは公衆衛生上の最優先事項であるとしています[11]。
「新型コロナウイルスのワクチン接種が原因で超過死亡が発生した」と考えられる科学的根拠は、現時点において確認されていません。
2020年以降の超過死亡の発生については、以下の複数の要因が影響したと考えられています。
なお、上で述べたように、新型コロナワクチンは重症化及び死亡を減らす効果があることが知られています。
今後も私を含め当所の職員一同は、市民の皆様の健康と安全の維持に寄与するために、より早く、より分かりやすく、より有益な情報を発信して参ります。
一人でも多くの皆様に、正しい情報が届き、活用していただくことを願っております。