国立感染症研究所

ブタの日本脳炎抗体保有状況 -2021年度速報


(2021年7月25日現在)
速報一覧へ
戻る
 

 日本脳炎は、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus: JEV)に感染した者のうち100~1,000人に一人程度が発症すると推定される重篤な急性脳炎である [1]。ヒトへの感染は、蚊(日本では主にコガタアカイエカ)がJEVに感染したブタ等を刺咬・吸血し、その後ヒトを吸血することにより引き起こされる。

1960年代までは毎年夏から秋にかけて多数の日本脳炎患者が発生しており [2,3]、ブタの感染状況からJEVが蔓延している地域に多くの患者発生がみられた。Konnoらは当時調査したブタの半数以上がJEVに感染すると、約2週間後からその地域に日本脳炎患者が発生してくると報告している [4]。現在では、日本脳炎ワクチン接種の普及や生活環境の変化等により、ブタの感染状況と患者発生は必ずしも一致しておらず、近年の日本脳炎患者報告数は毎年10例前後である。しかし、ブタの抗体保有状況からJEVが蔓延あるいはウイルス陽性蚊の存在している地域と推測され、このような地域ではヒト感染のリスクが高くなっていると考えられる。2015年には10か月齢の小児にも感染が確認されている[5]。

 感染症流行予測調査事業では、全国各地のブタ血清中のJEVに対する抗体を赤血球凝集抑制法(Hemagglutination inhibition test: HI法)により測定し、JEVの蔓延状況および活動状況を調査している。前年の秋以降に生まれたブタがJEVに対する抗体を保有し、さらに2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体(IgM抗体)を保有している場合、そのブタは最近JEVに感染したと考えられる。下表は本年度の調査期間中におけるブタの抗体保有状況について都道府県別に示しており、JEVに最近感染したブタが認められた地域を青色、それに加えて調査したブタの50%以上に抗体保有が認められた地域を黄色、80%以上に抗体保有が認められた地域を赤色で示している。

 本速報はJEVの感染に対する注意を喚起するものである。それぞれの居住地域における日本脳炎に関する情報にも注意し、JEVが活動していると推測される地域においては、日本脳炎の予防接種を受けていない者、とくに乳幼児や高齢者は蚊に刺されないようにするなどの注意が必要である。

 なお、日本脳炎定期予防接種は、第1期(接種回数は初回2回、追加1回)については生後6か月から90か月に至るまでの間にある者、第2期(1回)については9歳以上13歳未満の者が接種の対象であるが、平成7年4月2日(1995年4月2日)から平成19年4月1日(2007年4月1日)までに生まれた者で積極的勧奨の差し控えなどにより接種機会を逃した者は、20歳になるまでの間、定期接種として合計4回の日本脳炎ワクチンの接種が可能である(詳細は厚生労働省ページを参照)。また、平成19年4月2日(2007年4月2日)~平成21年10月1日(2009年10月1日)までに生まれた者に対しても、生後6か月から90か月未満のみならず9歳以上13歳未満の間にも、第1期(3回)の不足分を定期接種として接種可能である。ただし、生後90か月(7歳半)以上9歳未満は定期接種として接種することができないので、注意が必要である。市区町村からの案内に沿って接種を受けていただくようお願いしたい。また、令和3年度は、日本脳炎ワクチンの供給量が減少するため、ワクチン接種の案内が、翌年度に延期される場合があるので、詳細は市区町村からの案内あるいは厚生労働省のホームページ[6]を参照されたい。

抗体保有状況
(地図情報)



抗体保有状況
(月別推移)
JE 2021 11
1. 日本脳炎とは
2. 松永泰子,矢部貞雄,谷口清州,中山幹男,倉根一郎. 日本における近年の日本脳炎患者発生状況-厚生省伝染病流行予測調査および日本脳炎確認患者個人票(1982~1996)に基づく解析-. 感染症学雑誌. 1999. 73: 97-103.
3. Arai, S., Matsunaga, Y., Takasaki, T., Tanaka-Taya, K., Taniguchi, K., Okabe, N., Kurane, I., Vaccine Preventable Diseases Surveillance Program of Japan. Japanese encephalitis: surveillance and elimination effort in Japan from 1982 to 2004. Japanese Journal of Infectious Diseases. 2008. 61: 333-338. Pubmed
4. Konno, J., Endo, K., Agatsuma, H., Ishida, N., Cyclic outbreaks of Japanese encephalitis among pigs and humans. American Journal of epidemiology. 1966. 84: 292-300.Pubmed
5. 2015年夏に千葉県で発生した日本脳炎の乳児例. IASR Vol. 38 p.153-154: 2017年8月号. 
6. 厚生労働省. 日本脳炎. (2021年7月9日アクセス)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou20/japanese_encephalitis.html

国立感染症研究所 感染症疫学センター/ウイルス第一部

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version