シラミによって媒介されるリケッチア症で、戦争、貧困、飢餓など社会的悪条件下で流行することが多く、第一次大戦中にはヨーロッパで数百万の死者を出し ている。その後、発生が減少したとはいえ、経済状態の悪化したロシアでは本疾患の再興が報告されており、アフリカのブルンジでも刑務所内で多数の患者が発 生した。いずれも衛生状態の悪化でシラミが大量発生したことによる。わが国では発生がみられなくなって久しいが、路上生活者でコロモジラミの発生が報告さ れており、今後注意しなければならない疾患である。
 我が国では、「チフス」の用語は腸チフス・パラチフスを意味することが多いが、英語の“typhus”は発しんチフス、その他の節足動物媒介性リケッチア症を意味する。

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