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所長就任のご挨拶

国立感染症研究所長
脇田隆字

平成30年4月1日国立感染症研究所所長を拝命しました。平成18年にウイルス第二部長として感染研に着任し、平成27年からは副所長として3年間、倉根前所長を補佐する立場で運営に携わってきました。今後は所長として、これまでの経験を生かし、所長として国民の皆様の健康のために誠心誠意尽くす所存です。

国立感染症研究所の目的は感染症を征圧し、予防医学の立場から、広く感染症に係わる研究を総合的に行い、国の保健医療行政の科学的根拠を明らかにすることにあります。その業務は、感染症研究、レファランス、サーベイランス、国家検定および検査、国際協力、研修、アウトリーチ活動など広範囲にわたっております。一方で、新型インフルエンザ、中東および韓国でのMERS、西アフリカにおけるエボラ出血熱、国内でのデング熱、および麻疹・風疹など、近年多くの感染症の流行がありました。今後は、さらに訪日外国人の増加が予測され、気候変動、予測できない自然災害の発生による感染症の変化、多様化が進む可能性があります。日本と世界にとって脅威となる感染症の発生を迅速に探知・解析し、拡大を阻止するための科学的知見を行政、国内外の専門家、国民に提供することにより、国民の皆様の健康に貢献することが我々の使命です。国立感染症研究所では、感染症に関するデータを常に収集・解析し、さらに様々な感染症検査のための技術を開発・維持・改良しております。また、サーベイランス業務、レファレンス業務においては、全国の地方衛生研究所とのネットワークの中で親密な連携のもとに活動しています。国内の感染症対策に今後も地方衛生研究所との連携をさらに進めてまいります。

また近年、抗生物質が無効となる薬剤耐性菌感染症対策の重要性が認知されてきました。薬剤耐性アクションプランがまとめられ、国立感染症研究所では薬剤耐性研究センターが平成29年度から活動を開始しています。日本と世界の薬剤耐性菌の状況を調査および解析し、その対策を提言するシンクタンク機能を担って行くべく研究体制を構築しています。

種痘の開発以降、人類はワクチンによってさまざまな感染症を予防することができるようになりました。国立感染症研究所では、生物学的製剤(ワクチンおよび血液製剤)の国家検定を通じて、国民の皆様に安全で有効なワクチンと血液製剤を供給する役割を果たしています。人口の高齢化が進む現代において、ワクチンによる予防医療は今後ますます重要性を増していくと考えられます。国民の健康に直結する業務として取り組んでまいります。

国立感染症研究所の業務は特に国際連携が重要であり、WHO、特にWPROとの強い連携の下に行われており、今後も国際協力活動を推進して参ります。アジア各国・地域との協力関係を重点的に強化して、各国における感染症流行状況についての情報共有を強化しておりますが、近年ワクチンの品質管理においても感染研のより一層の貢献が求められており、対応を進めて参ります。

これまで国立感染症研究所が推し進めてきた、感染症研究、検定検査の改革、地方衛生研究所との協力体制の強化、国際連携などについてさらに発展させていきます。このためには、将来の感染症研究を担う若手研究者を育成し、また、国民の皆さんに研究所の業務内容を理解していただくためのアウトリーチ活動も重要と考えています。日本と世界の感染症対策のお役に立てるよう職員一同がんばってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 


平成29年度を迎えて

国立感染症研究所長
倉根一郎

  Kurane平成29年4月1日、新たな年度が始まりました。昨年度も国立感染症研究所が所として対応すべき事案が国内外で発生しました。例えば、蚊媒介性ウイルス感染症であるジカウイルス感染症は特に中南米で流行し、カリブ海諸国や米国にも侵入することとなりました。またアフリカのコンゴ民主共和国やアンゴラで黄熱の流行がありました。これらの事案でも明らかなように、世界のある地域で発生した感染症は瞬く間に国境を越えて広がっていきます。国立感染症研究所は、これらの事案に迅速に対応し、リスクアセスメントを行うと共に、厚生労働施策のための科学的基盤を確立しました。今後も、国立研究機関として、わが国にとって脅威となる感染症の発生を迅速に探知・解析し、拡大を阻止するための科学的知見を行政、専門家、国民に提供することにより、国民の皆様の健康に貢献してまいります。

 感染症に対する国の施策には、その基盤となるデータを常に収集・解析するとともに、検査のための技術を開発し、改良、維持する必要があります。国立感染症研究所はサーベイランス業務として、国内で発生する感染症の患者に関する情報、感染症を起こす病原体の情報を受け取り、集計・解析し、国及び都道府県等に還元していますが、これらの情報は行政施策のための基盤として用いられています。また、情報は月報、週報やホームページ等を通じ広く国民の皆様にも提供されています。さらに、レファレンス業務として、わが国の感染症の病原体検査のための技術開発や、試薬の準備を行い、地方衛生研究所等に技術移転するとともに、検体を受け取り検査し、結果を迅速にお返ししています。このようなサーベイランス業務、レファレンス業務においては、地方衛生研究所との連携が必須です。全国の地方衛生研究所とはイコールパートナーとして連携を一層強固なものにし、感染研-地衛研ネットワークの下、活動してまいります。

 感染症の克服のためにはワクチンが必須の武器であることは論を待ちません。国立感染症研究所は、生物学的製剤(ワクチンおよび血液製剤)の国家検定を通じて、国民の皆様に有効で安全なワクチン、血液製剤を供給する役割を果たしています。国内で製造された製剤であれ、海外から輸入された製剤であれ、国立感染症研究所における国家検定に合格したもののみが国民の皆様に使用されます。近年、我が国で使用されるワクチンの種類の増加や、定期接種に供されるワクチンの増加にともない、品質管理業務量の増加は著しいものがありますが、国民の健康に直結する業務として、精力的に取り組んでまいります。国立感染症研究所の特徴としてこれらの業務を行っている職員のほとんどが、研究者としても国内のみならず世界に通じるレベルでの研究を行っていることがあげられます。これは、感染症サーベイランス、レファレンス活動および生物製剤品質管理がいずれも科学的研究基盤の上に成り立つものであるとの考えによるものであり、これら通常業務が感染研において高いレベルに維持されている所以でもあります。

 感染症に国境はないことから、国立感染症研究所の業務は世界保健機関(WHO)、特にWHO西太平洋事務局(WPRO)との強い連携の下に行われています。また、中国、韓国、台湾、ベトナム、インド、インドネシア、モンゴル等、特にアジア各国・地域の公衆衛生を主たる業務とする国立研究機関と協定を結んでおり、日々の情報交換や、相互の国・地域において毎年行われる発表会を通して、日本の感染症対策の基盤となる情報が得られる体制ができています。さらに、ワクチン等の品質管理業務においてもWHOとの連携のもと世界基準での活動を進めています。韓国、ベトナムの品質管理を業務とする国立機関と協定を結んでおり、中国の同様の国立機関とも本年5月上旬協定が結ばれることになっています。WHOやこれらの各国機関と緊密な連携を取りつつ、アジア全体におけるワクチン品質管理の向上にも貢献をしています。

 近年、世界的に特に大きな問題となっている薬剤耐性菌に対する対応として、感染研はこれまでも薬剤耐性に関する院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)等の活動を通して貢献を行なってきました。特筆すべきこととして、平成29年4月1日には国の薬剤耐性アクションプランに基づき、薬剤耐性研究センターが感染研に設立されました。これまでのJANIS活動や、薬剤耐性全般にわたる研究・業務を一層進展させ、わが国の薬剤耐性対策に大きな貢献を行ってまいります。

 国立感染症研究所村山庁舎にある高度安全実験施設は1981年に建設されました。本施設は長きにわたり本来の目的であったレベル4施設としての稼働が行われておらず、レベル3施設としての稼働にとどまっていましたが、平成27年8月7日厚生労働大臣によりレベル4施設として指定を受けました。指定により国立感染症研究所はレベル4施設を用いた感染症対策に貢献できることとなりました。また、指定後は、地元行政との連携、警察・消防の指導の下に村山庁舎全体における安全対策の向上に大きな力を注いでいます。今後も感染症対策における本施設の重要性をさらに理解していただけるよう努めるとともに、地域の方々に一層信頼いただけるよう安全対策に十分留意して施設運営を行ってまいります。

 これまで進めてきた地方衛生研究所との協力体制の充実、アジア各国の研究所・機関との連携、生物学的製剤の品質管理法の改良、全国の各大学と締結している連携大学院等を通じた若手研究者の育成、アウトリーチ活動の強化、については今後も継続して発展させてまいります。昨今の経済状況等から国立感染症研究所を取り巻く状況は決して穏やかなものではありませんが、所員は “国民のための研究所、国さらに世界に必要とされる研究所”として、より高いレベルでその役割を果たすべく、日々奮闘しています。国立感染症研究所は、国民の健康を守る研究所として、皆様の期待に応えるべく本年度も業務の一層の推進を図ってまいります。どうぞよろしくお願い致します。

 


 

平成28年度を迎えて

国立感染症研究所長
倉根一郎

 平成28年4月1日、新たな年度が始まりました。前年度も国立感染症研究所が所として対応すべき事案が国内外で発生しました。西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行、韓国におけるMERSの流行は収束を見ましたが、年度後半には蚊媒介性ウイルス感染症であるジカウイルス感染症が特に中南米で大流行し、現在も続いています。これらの事案でも明らかなように、世界のある地域で発生した感染症は瞬く間に国境を越えて広がっていきます。国立感染症研究所は、これらの事案に迅速に対応し、厚生労働施策のための基盤を確立しました。今後も、国立研究機関として、我が国にとって脅威となる感染症の発生を迅速に探知・解析し、拡大を阻止するための科学的知見を行政、専門家、国民に提供することにより、国民の皆様の健康に貢献してまいります。

 感染症に対する国の施策には、その基盤となるデータを常に収集・解析し、さらに検査のための技術を継続的に改良し維持する必要があります。国立感染症研究所はサーベイランス業務として、国内で発生する感染症の患者に関する情報、感染症を起こす病原体の情報を受け取り、集計・解析し、国及び都道府県等に還元していますが、これらの情報は行政施策のための基盤として用いられています。また、情報は月報、週報やホームページ等を通じ広く国民の皆様にも提供されています。さらに、レファレンス業務として、我が国の感染症の病原体検査のための技術開発や、試薬の準備を行い、地方衛生研究所等に技術移転するとともに、検体を受け取り検査し、結果を迅速にお返ししています。このようなサーベイランス業務、レファレンス業務においては、地方衛生研究所との連携が必須です。改正感染症法が平成28年4月1日施行されることに伴い、全国の地方衛生研究所とのネットワークの下、イコールパートナーとして連携を一層強固なものにし活動してまいります。

 感染症の克服のためにはワクチンが必須の武器であることは論を待ちません。国立感染症研究所は、生物学的製剤(ワクチンおよび血液製剤)の国家検定を通じて、国民の皆様に有効で安全なワクチン、血液製剤を供給する役割を果たしています。国内で製造された製剤であれ、海外から輸入された製剤であれ、国立感染症研究所における国家検定に合格したもののみが国民の皆様に使用されます。近年、我が国で使用されるワクチンの種類の増加や、定期接種に供されるワクチンの増加にともない、品質管理業務量の増加は著しいものがありますが、国民の健康に直結する業務として、精力的に取り組んでまいります。国立感染症研究所の特徴としてこれらの業務を行っている職員のほとんどが、研究者としても国内のみならず世界に通じるレベルでの研究を行っていることがあげられます。これは、感染症サーベイランス、レファレンス活動および生物製剤品質管理がいずれも科学的研究基盤の上に成り立つものであるとの考えによるものであり、これら通常業務が感染研において高いレベルに維持されている所以でもあります。

 感染症に国境はないことから、国立感染症研究所の業務は世界保健機関(WHO)、特にWHO西太平洋事務局(WPRO)との強い連携の下に行われています。また、中国、韓国、台湾、ベトナム、インド、インドネシア、モンゴル等、特にアジア各国・地域の国立研究機関とは協定を結んでおり、日々の情報交換や、相互の国において毎年行われる発表会を通して、日本の感染症対策の基盤となる情報が得られる体制ができています。さらに、ワクチン等の品質管理業務においてもWHOとの連携のもと世界基準での活動を進めています。中国、韓国、ベトナム等の品質管理担当の国立機関とも緊密な連携を取るとともに、アジア全体におけるワクチン品質管理の向上にも貢献をしています。また近年、世界的に特に大きな問題となっている薬剤耐性菌に対する対策においても、院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)等の活動を通して一層の貢献を行ってまいります。

 国立感染症研究所村山庁舎にある高度安全実験施設は1981年に建設されました。本施設は長きにわたり本来の目的であったレベル4施設としての稼働が行われておらず、レベル3施設としての稼働にとどまっていましたが、平成27年8月7日厚生労働大臣によりレベル4施設として指定を受けました。この指定により国立感染症研究所はレベル4施設を用いた感染症対策に貢献できることとなりました。今後も感染症対策における本施設の重要性をさらに理解していただけるよう努めるとともに、地域の方々に一層信頼いただけるよう安全対策等に十分留意して施設運営をしてまいります。

 これまで進めてきた生物学的製剤の品質管理法の改良、地方衛生研究所との協力体制の充実、アジア各国の研究所との連携、全国の各大学と締結している連携大学院などを通じた若手研究者の育成、アウトリーチ活動の強化、については今後も継続して発展させてまいります。昨今の経済状況等から国立感染症研究所を取り巻く状況は決して穏やかなものではありませんが、所員は “国民のための研究所、国さらに世界に必要とされる研究所”として、より高いレベルでその役割を果たすべく、日々奮闘しています。国立感染症研究所は、国民の健康を守る研究所として、皆様の期待に応えるべく業務の一層の推進を図ってまいります。本年度もよろしくお願い致します。

 


 

所長就任のご挨拶

国立感染症研究所長
倉根一郎

平成27年4月1日国立感染症研究所所長を拝命しました。私は、過去5年間副所長として渡邉前所長を補佐する立場で運営に携わってきました。これまでの経験を生かし、所長として国民の皆様の健康のために誠心誠意尽くす所存です。

昨年のデング熱国内流行、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行等でも明らかなように、世界のある地域で発生した感染症は瞬く間に国境を越えて広がっていきます。国立感染症研究所の役割は、国の研究機関として、日本にとって、さらには世界にとって脅威となる感染症の発生を迅速に探知・解析し、拡大を阻止するための科学的知見を行政、国内外の専門家、国民に提供することにより、国民の皆様の健康に貢献することにあります。

感染症に対する国の施策のためには、その基盤となるデータを常に収集・解析し、さらに検査のための技術を維持・改良しておく必要があります。国立感染症研究所はサーベイランス業務として、国内で発生する感染症の患者に関する情報、感染症を起こす病原体の情報を受け取り、集計・解析し、国及び各都道府県に還元していますが、これらの情報は行政施策のための基盤として用いられています。また、情報は月報、週報やホームページ等を通じ広く国民の皆様にも提供されています。さらに、レファレンス業務として、我が国の感染症の病原体検査のための方法の開発や、検査のための試薬の準備を行い、さらに地方衛生研究所等に技術移転するとともに、検査困難な検体を受け取り検査し、結果をお返ししています。このようなサーベイランス業務、レファレンス業務においては、地方衛生研究所との連携が必須であり、全国の地方衛生研究所とのネットワークの中でイコールパートナーとして親密な連携のもとに活動しています。

感染症の克服のためにはワクチンが必須の武器であることは論を待ちません。国立感染症研究所は、生物学的製剤(ワクチンおよび血液製剤)の国家検定を通じて、国民の皆様に有効で安全なワクチン、血液製剤を供給する役割を果たしています。国内で製造された製剤であれ、海外から輸入された製剤であれ、国立感染症研究所における国家検定に合格したもののみが国民の皆様に使用されます。近年、ワクチンの種類の増加や、定期接種に供されるワクチンの増加にともない品質管理業務量の増加は著しいものがありますが、国民の健康に直結する業務として、日々取り組んでいます。

国立感染症研究所の特徴として上記の業務を行っている職員のほとんどが学位(博士号)を有し研究者としても国内のみならず世界に通じるレベルでの研究を行っていることがあげられます。これは、感染症サーベイランス、レファレンスおよび生物製剤品質管理はいずれも科学的研究基盤の上に成り立つものであるとの考えによるものであり、これらのいわゆる通常業務が高いレベルに維持されている所以でもあります。

感染症に国境はないことから、国立感染症研究所の業務は世界保健機関(WHO)、特にWHO西太平洋事務局(WPRO)との強い連携の下に行われています。また、中国、韓国、台湾、ベトナム、インド、インドネシア、モンゴル等、特にアジア各国・地域の国立研究機関とは協定を結んでおり、日々の情報交換や、相互の国における発表会を通して、日本の感染症対策の基盤となる情報が得られる体制ができています。

感染研が直面している喫緊の課題として村山庁舎における高度安全実験施設(レベル4施設)の稼働があります。1981年に建設された本施設は、本来の目的であるレベル4施設としての稼働は行われておらずレベル3施設としての稼働にとどまってきました。我が国の感染症対策における本施設の重要性を地域の皆様にも十分理解していただき、レベル4としての稼働に結び付けるべく努力してまいります。

これまで渡邉前所長が推し進めてきた、生物学的製剤国家検定法の改革、地方衛生研究所との協力体制の強化、アジア各国の研究所との連携、連携大学院などを通じた若手研究者の育成、アウトリーチ活動の強化、については今後も継続して発展させていきます。昨今の経済状況等から国立感染症研究所を取り巻く状況は決して穏やかなものではありませんが、所員は国立感染症研究所が“国民のための研究所、国さらに世界に必要とされる研究所”として、より高いレベルでその役割を果たすべく、日々奮闘しています。国民の皆様の期待に応えられるよう、一丸となって頑張ります。よろしくお願い致します。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan