新興呼吸器感染症はパンデミックをもたらす可能性がある。そのため, 病原体診断によらずに探知すべく, 重症急性呼吸器感染症(SARI)という症候群サーベイランスを運用している国も多い。日本では感染症法第14条に基づく疑似症サーベイランスが, その役割を目的として運用されている1)。しかし, 本サーベイランスは, 原則として自治体によって定められた疑似症定点からの報告であり, さらに日常的な検査診断で病原体が明らかとなった感染症は対象とならない。つまり, 既知の急性感染症の異常な経過や集積は探知できない。そのような事例については, 主に臨床医のネットワークで情報交換がなされることも少なくない。