国立感染症研究所

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2013年9~10月に発生した食中毒事例において分離されたナグビブリオ株について

(IASR Vol. 35 p. 136: 2014年5月号)

2013年9月に大分県および石川県において、さらには10月に再び大分県において、ニシ貝を原因食品とするVibrio cholerae non-O1 & non-O139による食中毒事例が発生した。大分県より患者8名から分離された29株および食品から分離された30株が送付された。石川県からは患者2名から分離された4株および食品由来1株が送付された。これらに関し、O血清型別およびパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による解析を行った。

O血清型別は国立感染症研究所自家血清を使用して定法により行った。患者由来株は、1株を除きすべてがO144であった。1株はO176で、同一患者由来2株のうちの1株であった。食品由来株は、O144が2株分離され、その他O49、O90、O176等が含まれていた。

病原因子探索をPCRで行ったところ、分離株すべてがctxnag-st 陰性で、hlyはすべてエルトール型陽性であった。さらに、T3SS関連遺伝子vspDvscV2はO144株では陽性であったが、その他のO血清型株では陰性であった。すなわちO144株のみが患者由来、食品由来にかかわらずT3SS陽性で、これが病原性に関与していることが示唆された。

PFGEは制限酵素NotIを使用し、パルスネットプロトコールのVibrio cholerae O1の条件に従って行った。得られたPFGE泳動像をApplied Math社BioNumerics解析ソフトに取り込みクラスター解析を行った。その結果をに示す。患者由来株33のうち、30株は同一もしくは類似したパターンを示した、これには大分県の2事例および石川県の1事例のすべての事例の株が含まれていた。食品由来31株のうち2株も同パターンを示した。これらの血清型はいずれもO144であった。

残りの患者株3株のうち、大分県事例2の2株は同一パターンを示し、石川県の1株は大分県食品株の1つと同一パターンを示した。その他の食品由来株は2つの大きなクラスターを含む計12パターンを示した(なお、これらの菌株には血清型O144を示すものはなかった)。

患者株が血清型O144であり、なおかつ同一もしくは類似したPFGEパターンを示したこと、食品株からも同様の特徴を示す菌株が分離されたことから、大分県および石川県で発生したのべ3事例はナグビブリオに汚染された共通の食材による食中毒であったことが示された。

菌株送付ならびに情報共有に協力していただきました大分県および石川県の関係機関の先生方に深謝いたします。

 

国立感染症研究所細菌第一部
    泉谷秀昌 荒川英二 森田昌知 大西 真
 

 

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