国立感染症研究所

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百日咳の流行、2012年―米国・ワシントン州

(IASR Vol. 33 p. 248-249: 2012年9月号)

 

2011年中頃から、ワシントン州で百日咳の症例増加が報告されているのを受けて、ワシントン州公衆衛生局は2012年4月3日に百日咳流行宣言を出した。

ワシントン州では6月16日の時点で2012年に入ってからすでに百日咳の症例が2,520例(10万人当たり37.5人)に達している。これは2011年の同時期の13倍の数であり、過去最高の流行を記録した1942年に匹敵する。

2,520例を年齢別にみると、1歳未満、10歳、13歳、14歳の罹患率が高かった。1歳未満の155例のうち、34例(22%)が入院し、このうち14例が生後2カ月未満であった。ワシントン州と比較すると罹患率は低いものの、米国全体でも百日咳の症例は1歳未満、10歳、13歳、14歳で増加傾向にある。

2,520例のうち確定例が2,069例(83%が検査診断、17%が疫学的診断)、疑い例が451例であった。検査診断の95%はPCRのみ、2.4%は培養検査のみ、2.9%はPCRと培養検査であった。病原菌の確定のためにPCRが行われBordetella  DNAが検出された193検体のうち、175検体(91%)がB. pertussis 、11検体がB. parapertussis 、2検体がB. holmesii 、5検体が分類不能であった。

百日咳患者のワクチンの接種状況については、3カ月~19歳の患者2,006例のうち1,829例(91.2%)のワクチン接種歴が入手できた。3カ月~10歳の患者1,000例のうち758例(75.8%)が小児期のジフテリア・破傷風・無細胞型百日咳ワクチン(DTaP)のシリーズを完了していた。また思春期のジフテリア・破傷風・百日咳ワクチン(Tdap)接種率は11~12歳で43.1%、13~19歳で77.2%であった。

百日咳の流行に対し、ワシントン州の保健課は対策チームを設立し、医療従事者に百日咳の臨床像、検査法、治療と予防(ワクチンや予防内服)について啓発を行った。市民への啓発には百日咳の症状とワクチンの推奨に重きが置かれた。

百日咳は米国では1970年以降徐々に増加傾向にあり、2010年には27,550例が報告されている。2012年はこれまでのところ過去5年間の同時期までの症例数を凌ぐ。ワシントン州での13~14歳の百日咳の発症率の高さは米国全体の傾向を反映しており、DTaPによる免疫原性が早期に減弱することを示唆している。DTaPは接種後2年間は高い有効性を持つが、米国の疫学データからはジフテリア・破傷風・全菌体百日咳ワクチン(DTwP)に比べて効果の減弱が早いことが強く示唆される。しかしながら、ワクチン接種は百日咳の流行を阻止するための最も効果のある方策であり、妊婦や新生児に接する者へのワクチン接種は、まだワクチン接種を受けられない新生児を守るために推奨される。新生児の百日咳を防ぐために今後もDTaPとTdapの接種を進めていくことが重要である。

(CDC, MMWR, 61,  No.28,  517-522,  2012)

 

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