国立感染症研究所

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ポリオ根絶認定-東南アジア地域, 2014年3月

(IASR Vol. 36 p. 16: 2015年1月号)

2011年1月のインドにおける野生株ポリオウイルス(WPV)確認を最後として、WHO東南アジア地域ポリオ根絶認定委員会は、11の加盟国からなる東南アジア地域(SEAR)のWPV伝播遮断を宣言した。SEARはWHOの6地域の中で、米州地域(1994年)、西太平洋地域(2000年)、欧州地域(2002年)に次ぎ4番目のWPV根絶認定地域となった。これにより、現在WHO加盟国の約80%がポリオ根絶地域に住むこととなる。SEARにおいて最も広大で、かつ根絶が最も困難であった加盟国の一つであるインドでの根絶活動について要約する。

地域認定に向けたステップ
地域におけるポリオ根絶の証明には、各国において、感受性に優れる標準的なサーベイランスで3年以上のWPV伝播が無かったこと、輸入WPVを検出・報告し、対応できる能力があること、実験室レベルの封じ込めに向けて実質的な進展があること、が求められる。SEARの各国が最後にWPVを確認した年は以下の通り。ネパール、バングラデシュ、ミャンマー(以上は2000年)、タイ(1997年)、北朝鮮(1996年)、東ティモール(1995年)、インドネシア(1995年)。ブータン、モルディブ、スリランカの最後の症例は1995年以前。インドでは、2011年1月のWPV 1型(WPV1)の報告が最後であった。

インドにおける予防接種活動
国内における経口生ポリオワクチン(OPV)は、12~23か月の小児を対象として定期接種がされており、2009~2010年のOPV(3回)接種率は70.4%と推定されている。地域別では、Bihar (61.6%) とUttar Pradesh (53.9%)の2地域が最も低いものの、2006年の接種率(各47.6%、43.8%)と比べて、いずれも改善されている。

補足的ワクチン接種活動(SIAs)として、2000年以降に230万人のワクチン接種担当者により、1億7,000万人の5歳未満児がワクチンを受けた。2005年には、単価OPV1型(mOPV1)と3型(mOPV3)をそれぞれ導入し、2010年には2価(1と3型)のOPV(bOPV)を導入したことで、WPV1とWPV3両方の減少につながった。

インドにおけるWPVサーベイランス
WPV伝播遮断を表すための急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランスについて、世界的な標準では15歳未満小児における非ポリオAFP(NPAFP)率は人口10万対2以上である。国内全体のNPAFP 率は、13.9(2012年)、12.5(2013年)であった。AFPからの適切な便検体採取率(標準は80%以上)は、87%(2012年)、86%(2012年)であった。

環境サーベイランスとして、下水検体からのウイルス分離検査が各地で行われており、直近に国内で分離されたウイルスは、2010年11月にMumbaiで分離されたWPV1であった。 

(CDC, MMWR, 63(42): 941-946, 2014)
(抄訳担当:感染研・齊藤剛仁、砂川富正)

 

 

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