国立感染症研究所

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呼吸器症状を呈した小児から検出されたHuman coronavirus(2013年1~4月)-三重県

(IASR Vol. 34 p. 170-172: 2013年6月号)

 

はじめに
近年、本県では呼吸器系ウイルスを対象とした感染症発生動向調査病原体検査において、C型インフルエンザウイルス1)、パラインフルエンザウイルス2)、RSウイルス、ライノウイルス、ヒューマンメタニューモウイルス、ボカウイルス、コロナウイルス等が検出されている3)

2013年1~4月に三重県内の定点医療機関を受診した小児の呼吸器系疾患患者からコロナウイルス(Human coronavirus: HCoV)が高率に検出された。そこで本県でのHCoV検出状況および罹患者の臨床症状を報告する。

コロナウイルス検出状況および臨床所見
HCoVの検索には三重県感染症発生動向調査における小児の呼吸器系疾患患者から採取した咽頭ぬぐい液、気管吸引液等(78検体)を用いた。HCoVは細胞によるウイルス分離が非常に困難である4,5)。そこでRT-PCR法6,7)によるHCoVの検出を行った。検出された一部のHCoVについてはダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定した。78検体中29件(37.2%)からHCoVが検出された。月別検出数内訳は1月12件、2月8件、3月5件、4月4件であった(図1)。

現在、ヒトにおいて主に流行しているコロナウイルスは、α・コロナウイルスの229EおよびNL63、β・コロナウイルスのOC43およびHKU1の4種である。さらにβ・コロナウイルスに属する2003年に発生したSARSコロナウイルスおよび2012年に死亡例が報告されている新型コロナウイルスのMiddle East respiratory syn-drome coronavirus (MERS-CoV)がある8,9)。本県で検出されたHCoV型別内訳はOC43(28件)、NL63(1件)であった。2例ではOC43とRSウイルスが同一検体から検出された(表1)。なお、MERS-CoVは現在のところ国内での検出報告はない(2013年5月29日現在)。

HCoVが検出された29例の患児の年齢は0歳1カ月~8歳であった。特に0~2歳までが18人(62.1%)と多かった。受診時の発熱の程度は36.1~40.6℃であった。36℃台5人(17.2%)、37℃台2人(6.9%)、38℃台7人(24.1%)、39℃台14人(48.3%)、40℃台1人(3.4%)であった。臨床診断名は咽頭炎10例(34.5%)、気管支炎10例(34.5%)、細気管支炎6例(20.7%)、扁桃炎2例(6.9%)、RS感染症1例(3.4%)であった(図2)。また、消化器症状を伴う例も7人(24.1%)にみられた。

2002/03~2012/13シーズンにおける国内でのHCoV検出数は 281件10) で極めて少数であり、インフルエンザウイルスのように積極的な動向調査が実施されていないことが背景にあると思われる。実際に、国内での2013年1~4月のHCoV検出状況は57件(2013年5月29日現在)であったが、検出は岩手県 1.8%(1件)、さいたま市 1.8%(1件)、千葉市 5.3%(3件)、横浜市17.5%(10件)、新潟県 3.5%(2件)、静岡市 1.8%(1件)、三重県50.9%(29件)、大阪市7.0 %(4件)、山口県 1.8%(1件)、熊本県 8.8%(5件)と、少数(10カ所)の市および県からの報告のみで、国内の流行像は十分に把握されていない。このことからも患者数の実態がつかめておらず、継続的かつ積極的なHCoVのモニタリングが必要だと思われた。

 

参考文献
1)矢野拓弥,他,IASR 33: 199, 2012
2)矢野拓弥,他,IASR 33: 244-245, 2012
3)三重県感染症情報センター(http://www.kenkou.pref.mie.jp/byougentai/kenshutu.htm)
4)広川智香,他,IASR 29: 283, 2008
5) Kon M, et al., Jpn J Infect Dis 65: 270-272, 2012
6) Lau SKP, et al., J Clin Microbiol 44: 2063-2071, 2006
7) Lam WY, et al., J Clin Microbiol 45: 3631-3640, 2007
8) Centers for Disease Control and Prevention (CDC) (http://www.cdc.gov/coronavirus/about/index.html)
9)白戸憲也,他,IASR 33: 303-304, 2012
10)国立感染症研究所感染症疫学センター(https://nesid4g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data95j.pdf

 

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