国立感染症研究所

国立感染症研究所 感染症疫学センター
2022年10月8日現在
(掲載日:2022年11月30日)
(一部改訂:2023年2月9日)

 

我が国の感染症発生動向調査においては、2011年頃から梅毒症例報告数が増加している。新型コロナウイルス感染症の流行下において、様々な感染症の報告数は減少した。しかし、梅毒は2020年にいったん減少したものの、2021年は再度増加に転じている。

近年の傾向として、異性間性的接触に伴う梅毒症例数の増加が認められており、女性症例の年齢分布は20代に多い1, 2。妊娠可能な年齢の女性症例が増えるとともに、特に若年妊娠、未婚、性感染症の既往・合併、性風俗産業従事歴、妊婦健診の未受診もしくは不定期受診等の妊婦の背景要因がある場合、先天梅毒発生に関連すると報告されている3。病原体である梅毒トレポネーマが梅毒に罹患した妊婦の胎盤を通じて胎児に感染することにより、先天梅毒、流産、死産が生じるが、妊婦への適切な抗菌薬治療により母子感染を防ぎうる。国内の梅毒症例には、性風俗産業の従事歴、利用歴のある症例が一定数報告されている4。女性の性風俗産業従事者(CSW)は、梅毒に感染するリスクが高いことが世界的に報告されており5、日本においてもその可能性は高く6、梅毒に罹患した女性のCSWから男性に伝播する可能性がある。一方で、梅毒に罹患した男性から女性のCSWやそれ以外の女性へ感染が伝播する可能性もある。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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