国立感染症研究所

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福島県における梅毒の発生状況(2008~2016年)

(IASR Vol. 38 p.131-132: 2017年6月号)

はじめに

近年, 梅毒の届出数は, 大都市を中心に全国的に急増している1)。梅毒を診断した医師は, 感染症法により都道府県知事に報告するよう義務づけられており, 保健所を介して各地方感染症情報センター(福島県は衛生研究所内に設置)へ報告されている。

今回, 福島県における2008~2016年の梅毒の発生状況について報告する。

方 法

感染症発生動向調査システム(NESID)に登録された症例のうち, 2008~2016年に福島県内で診断された梅毒の症例を解析した。

結果と考察

福島県における性別, 年次別梅毒届出数の推移を図1に示す。

特に2015年以降, 増加が目立ち始め, 2015年は前年の3倍(24例), さらに2016年は前年の約2.9倍(69例)となった。毎年, 男性の割合がやや高く, 60%前後で推移している。

福島県における2008~2016年間の年齢, 病型別の患者報告数(男性81例, 女性53例, 総数134例)を男性について図2に, 女性について図3に示す。

年齢の中央値は, 男性は37歳(四分位範囲30-46歳), 女性は31歳(四分位範囲23-38歳)であった。

病型別では, 男性は早期顕症梅毒(I期)39例(48%), 早期顕症梅毒(II期) 25例(31%), 晩期顕症梅毒2例(2%), 無症候15例(19%) であり, 特に早期顕症梅毒(I期)の割合が高かった。女性は早期顕症梅毒(I期)8例 (15%), 早期顕症梅毒(II期)17例 (33%), 晩期顕症梅毒2例(4%), 無症候25例(48%)であり, 特に無症候の割合が高かった。これは, 女性は早期顕症梅毒(I期) の症状が気づきにくいこと2)や, 妊婦健診など検査の機会が多いことが影響し, 男性に比べ早期顕症梅毒(I期)の割合が低く, 無症候の割合が高いのではないかと考えられる。さらに, 2004年以降報告のなかった先天梅毒が2016年に1例報告されており, 届出数の増加に伴い先天梅毒の増加も危惧される。

福島県における感染経路別割合は, 異性間性的接触が74%, 同性間性的接触が1%, 異性間・同性間性的接触が2%, 性的接触詳細不明10%, その他・不明13%であった。福島県は, 以前から異性間性的接触が大部分を占めており, 近年の届出数の増加も, 異性間性的接触が大半を占めている。

近年は, 妊婦健診や術前検査, パートナーの感染確認からの受診勧奨で発見される例も散見されており, 今後もより一層, 性感染症(STI)に関する正しい知識の普及啓発やパートナーへの接触者検診の勧奨の周知に努め, 早期発見・早期治療につなげていくことが非常に重要である。

現在の取り組み

梅毒届出数増加に伴い, 福島県では2016年12月より保健所における無料・匿名の梅毒相談・検査を開始した。

また, 性感染症の医療や保健, 教育に関わる者への情報提供および知識向上を目的とし, 専門家を招き性感染症に関する研修会や協議会を開催している。

さらに, 医師からの届出を保健所がNESIDへ報告する際, 積極的疫学調査等により判明した特筆すべき事項(受診の動機, 集団発生の有無など)がある場合は, 可能な限りNESIDの備考欄へ入力するよう保健所へ通知した。本庁, 保健所, 感染症情報センター(衛生研究所)と密接な連携を図ることで, 地域における流行状況の把握, 感染経路の究明, 対策に努めている。

  

参考文献
  1. 国立感染症研究所, IDWR 18(12): 7-8, 2016
  2. 柳澤如樹ら, モダンメディア54(2): 42-49, 2008

 

福島県衛生研究所総務企画課(感染症情報センター)
 塚田敬子 千葉一樹 河野裕子
福島県健康増進課 三瓶ゆかり

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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