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小児の百日せきワクチン接種スケジュール

(IASR Vol. 33 p. 323: 2012年12月号)

 

2012年11月1日から、現行の沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(diphtheria, acellular pertussis and tetanus vaccine: DPT)に国内で開発された不活化セービン株を加えた四種混合ワクチン(沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ混合ワクチン:DPT-IPV)が定期接種に導入された(http://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2012/ImmJP121101.pdf)。また既に、2012年9月1日からこれまで長年、定期接種に使用されてきた経口生ポリオワクチン(oral polio vaccine: OPV)に代わって、不活化ポリオワクチン(inactivated polio vaccine: IPV)が小児の定期接種に導入されている。

それぞれのワクチンの定期接種の期間は生後3か月以上90か月未満で同じであるが、DPT-IPVについては、生後3か月~12か月に達するまでの期間を標準的な接種期間として、第1期初回接種は20~56日までの間隔をおいて3回、追加接種は初回接種終了後12か月~18か月を標準的な接種期間として1回接種することになっており、従来のDPTと全く同じである。

一方、IPVについては生後3か月~12か月を標準的な接種期間として、20日以上の間隔を置いて3回、追加接種については初回接種終了後12か月~18か月に達するまでの期間に1回接種することとなった。ただし、2012年9月から一定期間(3年程度)経過後は、DPT-IPVと同様に20~56日までの間隔を置いて3回接種し、初回接種終了後12か月~18か月に達するまでの期間に1回接種になる予定である。

以上のことから、百日咳の予防には、国内ではDPT あるいはDPT-IPVが使われることとなり、DPTを使用する場合は、IPVとの同時接種あるいは別の日に接種がなされている。

ただし、2013年3月末までに出荷される予定のIPVは 477万ドーズであるのに対し、DPT-IPVは147万ドーズであることから、DPT-IPVについては、2012年8月以降に生まれた者と、2012年7月以前に生まれた者であっても、DPT、OPVをいずれも接種していない小児、IPVで接種を始めたがDPT-IPVへの変更を希望する一部の小児が対象とされている1) 。

近年国内外で、年長児あるいは成人の百日咳患者の増加が問題になっているが2,3) 、海外では、抗原量を減量した成人用の百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン(adolescent and adult tetanus, diphtheria and acellular pertussis vaccine: Tdap)が思春期に接種されている場合が多く、小児期の接種回数も日本より多い4,5) 。一方、日本では第2期として11歳以上13歳未満に接種されているのは、沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド(diphtheria and tetanus toxoid: DT)であり、これをDPTに変更する研究が行われている6) 。

ワクチン未接種の乳児の百日咳は極めて重症であることから、ワクチンの接種を待っていたために百日咳に罹患してしまったということがないように、生後3か月になったらできるだけ早く、百日咳含有ワクチンの接種を始めることが大切である。

 

参考文献
1)厚生労働省ホームページ:ポリオワクチン、2012年11月現在URL:
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/

2)国立感染症研究所:百日せきワクチンに関するファクトシート、 2012年11月現在URL:
      http://www.mhlw. go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000byfg.pdf
3)予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会百日せきワクチン作業チーム、
 2012年11月現在URL:
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000012z5v-att/2r98520000012z9z.pdf

4)米国CDC:Immunization Schedule, 2012年11月現在URL:
    http://www.cdc.gov/vaccines/schedules/index.html
5) European Center for Disease Prevention and Control: EUVAC-Net,  2012年11月現在URL:
     http://ecdc.europa.eu/EN/ACTIVITIES/SURVEILLANCE/EUVAC/Pages/index.aspx
6) Okada K, et al ., Vaccine 10; 28(48): 7626-7633, 2010

 

国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子

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