国立感染症研究所

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2013/14シーズン最初に分離されたインフルエンザウイルス―島根県

(IASR Vol. 34 p. 345: 2013年11月号)

 

当県では、2013年9月17日(第38週)に益田保健所管内一保育園(園児108名)から、10名のインフルエンザの集団発生の報告があった。地域内小流行を含め、患者発生状況およびウイルス検出状況について概要を報告する。 

島根県において、過去5シーズンのインフルエンザ様疾患の学級閉鎖等報告の初発は、A(H1N1)pdm09が大流行した2009/10シーズンを除くと、第47週(2012/13シーズン)から翌年第2週(2010/11シーズン)であるが、2013/14シーズンは第38週に集団発生した。報告のあった県西部の益田保健所管内インフルエンザ定点(定点数5)患者報告数は、第37週(9月9日)から12件、第38週(9月16日)に10件、第39週(9月23日)には17件であり、益田保健所管内でこの時期10~17件(定点当たり2.0~3.4)と地域的な流行となっていた()。また、入院サーベイランスにおいても第38週に3名(80歳、64歳、5歳)、第39週に1名(1歳)、第40週に1名(12歳)、第41週に1名(4歳)のインフルエンザ入院患者報告があった。

この時期に集団発生を探知することは稀であり、今後のインフルエンザの流行を早期発見し、対策を迅速かつ的確に実施するために益田保健所と管内の定点医療機関にインフルエンザ患者検体の提供を依頼し、集団発生のあった保育園の患者1名(5歳)を含む計6名(前述の5歳の他、1歳2名、8歳1名、35歳1名、43歳1名)の患者から咽頭ぬぐい液検体が得られた。

検体からRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR(TaqMan Probe法)によりインフルエンザウイルス遺伝子検査を行い、6検体ともにA(H1N1)pdm09ウイルスが検出された。MDCK細胞によるウイルス分離でも、6検体とも初代培養で細胞変性が認められた。採取したウイルス培養上清に対して0.75%モルモット血球を用いて赤血球凝集(HA)試験を行った。1検体は6HA/25μL、残りの5検体は4HA/25μLのHA価を示した。そこで、国立感染症研究所より2012年に配布された2012/13シーズンインフルエンザ同定キットを用いてHI試験による同定を行ったところ、6株すべてにおいてA/California/7/2009(H1N1)pdm09の抗血清に対するHI価は320(ホモ価640)を示した。A/Victoria/361/2011(H3N2) の抗血清(同5,120)、B/Wisconsin/01/2010 (山形系統) の抗血清(同160)、B/Brisbane/60/2008(Victoria系統) の抗血清(同80)に対するHI価は10未満であった。また、A/H1N1pdm09 H275Y耐性株検出法実験プロトコールに基づき、遺伝子検査で用いたRNAからのH275Y耐性マーカー検出試験を行ったが、6株すべて感受性(H275)株であった。

益田保健所のその後の調査では、集団発生のあった保育園の新規患者は9月18日1名、20日1名、21日1名、24日2名、25日1名であり、合計16名の患者報告があった。9月27日以降、10月16日現在までは保育園での新たな患者発生報告はなかった。また、職員からの患者発生報告はなかった。益田保健所管内インフルエンザ定点患者報告数も第40週(9月30日)は6件、第41週(10月7日)は1件と減少し、散発的な発生となっている。保育園の集団発生が探知の端緒であったが、患者は小児のみでなく広範な年齢層で認められた()。

例年より早期の集団発生であり、県内の他地域ではほとんど患者報告は認められていないが、県薬事衛生課を通じて各保健所等と情報を共有し、今後のインフルエンザウイルスの動向を注視する必要がある。

 

島根県保健環境科学研究所   滝元大和 飯塚節子 穐葉優子 和田美江子   
島根県益田保健所   森永修司 竹田宏樹 坂本あずさ

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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