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2013年に広域において見出された同一PFGEタイプを示す腸管出血性大腸菌O157およびO26について

(IASR Vol. 35 p. 128-129: 2014年5月号)

 

国立感染症研究所細菌第一部に送付され、解析を行った2013年分離のヒト由来腸管出血性大腸菌(EHEC)は2,636株あり、そのうちO157は1,465株、O26は633株あった(2014年2月現在)。2013年にはXbaIによるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンがO157で768種類(2013年に初めて検出されたパターンはi1~i680)みられ、少なくとも3つ以上の異なる都府県から分離された同一PFGEパターンが41種類あった。このうち、6つ以上の都府県から分離されたO157には5種類の泳動パターンがあり〔Type No. (TN) d483、h406、g307、i28、i195〕、特にTN d483およびh406を示す株は、16府県、10都府県の広域で分離されていた(図1)。また、O26では、2013年にXbaIによるPFGEパターンが244種類(このうち2013年に初めて分離されたものはi1~i232)みられ、5つ以上の異なる都府県から分離された同一PFGEパターンが2種類 (TN i16、i110)あった。TN d483は2008年に初めて分離された後、毎年6つ以上の都道府県から分離されているパターンであり、TN h406は2012年に初めて分離されたパターンである。それぞれのパターンを示す株は、5~6カ月にわたって各地の散発事例から分離されており、TN h406のパターンを示す株は集発事例からも分離されていた。

上記広域株のうち、TN d483を示す株を反復配列多型解析法(multiple-locus variable-number tandem repeat analysis; MLVA)で試験すると、いくつかのタイプが得られた。これらについてminimum spanning treeを描くと、4つの型は互いにsingle locus variants(SLVs)であり、これらの株については近縁性が示唆された。一方、残りの型はそれらと2遺伝子座以上の距離があり、d483を示す株には近縁性の低いMLVA型を示す菌株が含まれることが示された(図2)。

現在O157、O26、O111に関してはMLVAによるタイピングの整備を進めており、文献1)に示されている18遺伝子座のうち、O157-10を除く17遺伝子座のリピート数に基づいてMLVA型を付与している。参考までに 上記広域分離PFGE TNに対して、これまでわかっているMLVA型を次ページ表1に示す(いずれも2013年分離株の結果である)。上記d483の場合を除き、ほとんどの場合は、複数のMLVA型が出ていても互いにSLVの関係にある。

広域分離株の探知のためには、迅速な情報還元を可能とするMLVA法が有効であり、今後はその活用を進めていく必要がある。

 

参考文献
1) Izumiya H, et al., Microbiol Immunol 54: 569-577, 2010

 

国立感染症研究所細菌第一部  石原朋子 伊豫田 淳 泉谷秀昌 大西 真

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