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ジアルジア症と胆嚢炎様症状

(IASR Vol. 35 p. 194: 2014年8月号)

ジアルジア症の主な症状は下痢や腹痛であるが、胆嚢炎様症状を呈する場合もある。ジアルジアは体内で鞭毛を持ち運動性を有する栄養型となり、小腸、胆道系において増殖する。毒素産生は知られておらず、細胞に侵入せず、無症状のシストキャリアにもなり、多くの場合は無害で、病原体としてはあまり問題にされていなかったかもしれない。低γグロブリン血症、腸内分泌型IgAの低下、AIDS、免疫抑制剤投与など、免疫能が低下した時に本原虫が著明に増加することが知られている。

感染症発生動向調査の届出患者では、免疫機能が低下するであろう高齢者に胆嚢炎様症状等を有する割合が高かった()。届出票(2006~2013年)には胆管系の症状や疾患等が35例(578例中の6.1%)あり、胆管炎(14例)、胆嚢炎(9例)の他に、胆嚢腫瘍(胆嚢癌1))、胆嚢ポリープ、胆管狭窄(2例)、肝エコー異常、肝脾腫(2例)、黄疸(2例)、膵癌(2例)、膵嚢胞(3例)、膵炎(2例)の記載がみられた(一部重複計上)。腫瘍との因果関係は不明であるが、注視したい。

 

参考文献
  1. 長嵜寿矢,他, 日本消化器病學會雜誌108(2): 275-279, 2011

国立感染症研究所寄生動物部 泉山信司 村上裕子
  同 感染症疫学センター 木下一美

 

 

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