国立感染症研究所

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小児侵襲性肺炎球菌感染症患者において7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)接種後にみられた感染血清型に対する低応答

(IASR Vol. 35 p. 239: 2014年10月号)

PCV7は2010年11月から小児に対して公費助成が開始され、2013年4月には定期接種となった。我々は、2009年10月~2013年4月の期間に、小児侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease: IPD)患者を対象としPCV7の接種前後の特異免疫応答(特異IgG量、オプソニン活性: OI)を、PCV7含有の7血清型について検討した1)

方 法
国内協力病院より得られた小児IPD症例について、その感染血清型、PCV7接種歴、基礎疾患等の情報を収集するとともに、IPD急性期血清および回復後のPCV7接種1カ月後以降の血清を回収した。研究期間中に小児IPD症例が56例報告され、IPD後にPCV7接種を受けた17例についてIPD前後のペア血清を比較した。

結 果
17例の幾何平均では、血清型6Bを除く6血清型に対して有意な特異IgG量の上昇が認められた。OIについても7血清型すべてに対して有意な上昇が認められた。次に、17例中14例のPCV7含有血清型によるIPD症例について、PCV7接種による各血清型に対する免疫応答を検討した。その結果、IPD急性期(PCV7接種前)の特異IgG量は1例を除いてすべての症例でIPD感染予防閾値とされる0.2 μg/mlを上回っている一方で、OIは全例においてIPD感染予防閾値を下回る4以下であった。さらにPCV7接種後のOIについては、8例では感染血清型特異的OIが顕著に増加上昇したが、6例は4以下と不変であった。低応答症例6例においてPCV7接種後の感染血清型特異IgG量は0.13~2.80μg/mlとなっていることから、IPD予防閾値として特異IgG量(≥0.2μg/ml)よりもOI(≥8)が、より血清学的感染予防免疫能の指標として有用であることが考えられた2)。また、低応答6例のIPD原因血清型は6Bが5例、23Fが1例であった。感染血清型以外についてはPCV7接種後に良好なOIの上昇がみられたことから、PCV7接種に対する低応答は感染血清型特異的に認められていることが明らかとなった()。

このような小児IPD後の感染血清型や保菌血清型に対する低応答は、莢膜ポリサッカライドT細胞非依存性2型抗原: TI-2 antigenが感染防御抗原となるような他の病原細菌(インフルエンザ菌、髄膜炎菌)による感染症でしばしば報告されており3)、普遍的な現象と考えられる。低応答は数カ月~1年以上継続することが我々の症例や過去の報告にも認められることから、該当ワクチンの追加接種とともに、低応答症例における特異免疫応答の経過観察が重要である。

 
参考文献
  1. Tamura K, et al., Vaccine 32: 1444-1450, 2014
  2. Oishi T, et al., Vaccine 31: 845-849, 2013
  3. Kaplan SL, et al., J Pediatr 120: 367-370, 1992

大阪大学微生物病研究所感染症国際研究センター 田村和世 明田幸宏   
国立感染症研究所感染症疫学センター 大石和徳
 

 

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