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2014年の仙台市におけるA型肝炎の発生状況

(IASR Vol. 36 p. 4- 5: 2015年1月号)

A型肝炎発生状況
仙台市での患者の発生は第5週より始まり、第7週には5件でピークとなり、その後、第23週の1件を最後に現在(第49週)に至るまで届出はなく、計16件となっている(図1表1)。当市では2010年以降、2010年3件、2011年3件、2012年1件、2013年0件であり,2014年の例年にない状況について、保健所とともに共通の感染原因を疑った。2月下旬には感染症対策課および国立感染症研究所(感染研)実地疫学専門家養成コース(FETP)を通して厚生労働省、国立感染症研究所との情報共有を行った。感染地域はすべて日本国内であり、感染原因は81%(n=13)が経口感染とされ、このうちカキ喫食ありが69%だった。また、2名は同居家族であり、家族内感染が疑われた(図1)。

A型肝炎ウイルス検査状況
医療機関からの届出受理後、各保健所による速やかな検体搬入が行われ、発病後6~25日(平均14日)に採取された糞便計14件の検査が依頼された。検査は通知法1)表1 A法)に準拠し行い、すべての検体からA型肝炎ウイルス(HAV)遺伝子を検出した(表1)。増幅産物についてダイレクトシークエンスによる塩基配列決定後、系統樹解析により遺伝子型別を行った結果、IIIA(9件)、IA(4件)、IB(1件)を確認した(図2)。国内感染ではあまりみられないIIIA型が多く検出されたため、さらに詳細な解析を行う目的でB法2)およびHAV-KOR-A-F/AN-R/HAV-JCT-2RプライマーセットによるC法3)を併せて実施した(表1)。A法では3件のみ1stPCRで検出可能で、B法ではすべて1stPCRで検出可能だった。また、C法は韓国で流行したIII A株と比較するために行ったが、IB株は検出できなかった。IIIA9株のうち1塩基異なる1株以外は同じ塩基配列(AB973400)であり、BLAST検索ではNOR-21株(AJ299464)と近縁(相同性99%)で、2011年の韓国流行株(JQ655151)と同じクラスターに属した。IAの4株はすべて同じ配列で、2014年広域型とされた株(AB969748)と近縁(相同性99.9%)であり、2010年の国内流行の株(AB973401)とは異なっていた。IBの1株は2014年千葉県で検出された株(AB974364)と近縁(相同性98.8%)だった。

最後に2010年に続き、国内での広域的なA型肝炎の発生となったが、潜伏期間の長さが感染源究明の壁となり、多くの場合が推定の域を出ない。今回、HAV IgG抗体の保有率が低い世代が感染しているが、海外には依然A型肝炎の流行地域が多く、加速度的に増加しているグローバルな物流や、人の移動に伴う感染のリスクを早期に探知できる監視システムの構築が望まれる。

 
参考文献
  1. 食安監発第1201第1号(平成21年12月1日)
  2. IASR 35: 154-156, 2014
  3. Yoon, et al., Korean J Clin Microbiol 13: 7, 2010

仙台市衛生研究所
    関根雅夫 中田 歩 勝見正道 小林正裕

 

 

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