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2012~2014年に分離された劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症分離株の薬剤感受性

(IASR Vol. 36 p. 155-156: 2015年8月号)

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、病態の進行が急激かつ劇的で、発病から数十時間以内にショック症状、急性腎不全、急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全、壊死性筋膜炎などを伴う、致命率の高い重篤な感染症である。劇症型溶血性レンサ球菌感染症の治療には、抗菌薬として、ペニシリン系薬剤とクリンダマイシンの大量投与が推奨されている。両剤に対する感受性動向を調べるために、2012~2014年に分離された劇症型溶血性レンサ球菌感染症患者由来A群レンサ球菌243株について薬剤感受性試験を行った()。

菌株は、衛生微生物技術協議会溶血性レンサ球菌レファレンスセンターに集められた。薬剤感受性試験は、ドライプレート(栄研化学)を用い、Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の方法に準拠し、ペニシリン系薬剤およびクリンダマイシンを含む7薬剤(ペニシリンG、アンピシリン、セファゾリン、セフォタキシム、メロペネム、クリンダマイシン、リネゾリド)に対して判定を行った。PCRにより、クリンダマイシン耐性株の耐性遺伝子(ermA, ermB, mefA)を検出した。

243株のすべての劇症型溶血性レンサ球菌感染症患者分離株において、ペニシリン系薬剤であるペニシリンG、アンピシリン、その他セファゾリン、セフォタキシム、メロペネム、リネゾリド6つの薬剤に対して感受性を示した()。それぞれの薬剤のMIC90値は、ペニシリンGが0.008μg/ml (範囲0.008-0.015)、アンピシリンが0.03μg/ml (0.015-0.06)、セファゾリンが0.12μg/ml (0.06-0.25)、セフォタキシムが0.03μg/ml (0.015-0.03)、メロペネムが≦0.008μg/ml (≦0.008)、リネゾリドが2μg/ml (1-2)であった。

一方、クリンダマイシンに対して耐性菌が毎年分離された〔2012~2014年28株(11.5%);2012年13株 (11.8%)、2013年4株(4.4%)、2014年11株(15.3%)〕。クリンダマイシン耐性株の70%以上はemm 遺伝子型として、emm12, emm28, emm75 型に分類された。すべてのクリンダマイシン耐性株は、薬剤耐性遺伝子ermB 遺伝子を保有していた。これら薬剤耐性株は、emm 型と関連性が高いことから、今後も薬剤耐性およびemm 遺伝子型の両面から動向を調査する必要がある。


国立感染症研究所細菌第一部 池辺忠義 大西 真
福島県衛生研究所 二本松久子
富山県衛生研究所 三井千恵子
東京都健康安全研究センター 奥野ルミ
神奈川県衛生研究所 大屋日登美
大阪府立公衆衛生研究所 河原隆二
山口県環境保健センター 矢端順子 亀山光博
大分県衛生環境研究センター 一ノ瀬和也 佐々木麻里

 

 

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