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愛知県における成人に対するMRワクチンの公費助成による抗体検査, 接種事業の状況について~保健所の視点を踏まえて~

(IASR Vol. 37 p. 75-76: 2016年4月号)

はじめに

愛知県の風疹対策は 「愛知県麻疹風疹対策会議」 を設置し, 保健所は地域の感染症対策の要として, 疫学調査, 予防接種率の向上等に取り組んでいる(図1)。特に風疹対策は, 麻しん風しん混合ワクチン(MR)の定期予防接種に加え, 成人の接種が先天性風疹症候群(CRS)の発生をなくすため非常に重要である。愛知県では2014(平成26)年度からワクチン接種が必要な者を抽出するため, 国庫補助を利用し抗体検査を実施している。また, その結果, 抗体価が低いと判定されたものに予防接種を推奨している。

抗体検査事業の実際

対象は, 妊娠を予定または希望する女性で, 風疹抗体検査希望者のうち, ①愛知県内に居住, ②経産婦および妊婦を除く, ③過去に風疹ワクチンの接種歴がない, ④過去に風疹の既往がない, ⑤過去に風疹抗体の検査歴がない, のすべての条件を満たすものとした。抗体検査からワクチン接種の全体の流れを図2に示した。

抗体検査実施機関は保健所が医師会を通じて委託契約を締結した医療機関とし, 保健所窓口にて受検票を交付, これにより受検者の費用負担なしで抗体検査を受検できる。検査方法は赤血球凝集抑制法(HI法)または酵素抗体法(EIA法)とし, HI法で抗体価16倍以下, EIA法で8.0未満を低抗体価の者とした。

平成26年度は愛知県内で1,718人が抗体検査し, うち34.9%の600人が低抗体価であった。管内人口約52万人の当保健所管内では290人が抗体検査し, 33.4%の97人が低抗体価であった。

2015(平成27)年度(4月~12月)は途中集計であるが, 愛知県で1,094人が抗体検査し, うち37.3%の408人が低抗体価であった。当保健所管内では167人が抗体検査し, 37.7%の63人が低抗体価であった(表1)。

風疹ワクチン接種事業費補助金

風疹抗体検査を受け低抗体価であった妊娠を予定または希望している女性を対象に, ワクチン接種の費用を補助するもので, 費用分担は県1/4, 市町村1/4, 自己負担1/2となっており, ワクチン接種促進に効果を上げている。平成26年度は愛知県で596人が接種し, 低抗体価者の接種率99.3%であった。当管内では低抗体価者の接種率92.8%であった。平成27年度(4月~12月)は途中集計であるが, 愛知県は390人が接種し, 低抗体価者の接種率95.6%であった。当管内では低抗体価者63人で接種率100%であった(表2)。

まとめ

CRSの届出は, 愛知県では2013年の2例が最後となっているが, 2014年以降も県内で届け出された風疹患者数は2014年21, 2015年第53週まで13となっており, 患者は発生している。油断せず風疹排除に向け2016年も引き続き抗体検査・ワクチン接種の対策を実施していくことが必要である。保健所は市町村の保健事業計画等において成人のワクチン接種事業の重要性を引き続き助言・支援していく。

愛知県一宮保健所 
 澁谷いづみ 伊藤泰高

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