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島根県における2017年(第35週まで)の手足口病およびヘルパンギーナの患者発生の推移とエンテロウイルス検出状況について

(IASR Vol. 38 p.197-198: 2017年10月号)

1.患者数の推移

本県の2017年の手足口病患者は, 第28週から警報レベル(定点当たり5.0人)を超える流行となり, 第30週でピーク(定点当たり10.04人)となった。このことから, 本県では第29週に注意喚起の報道発表を行った。

患者数は第30週以降減少し, 第33週に警報レベルを下回っているが, 第35週においても警報終息レベル(定点当たり2.0人)を超える流行が続いている。本県での定点当たり10人を超える流行は2011年以来である。

一方, ヘルパンギーナは第28週をピーク(定点当たり2.7人)とする流行となったが, 手足口病と比べやや患者数が少ない状況である。

2.検出方法

2017年第1週~第31週までの手足口病患者57例からの59検体(咽頭ぬぐい液54, 扁桃ぬぐい液1, 鼻汁1, 髄液1, 便2), ヘルパンギーナ患者15例からの16検体(咽頭ぬぐい液15, 便1)について, RD-A, A549の培養細胞を用いてウイルス分離を行った。ウイルス分離後は, 自家製単味抗血清で中和後, RD-A細胞上でプラック減少法により同定を行った。

ウイルスが分離されなかった検体および一部の中和同定済みの分離株について, エンテロウイルスのVP1領域を増幅するCODEHOP VP1 RT-semi-nested PCR1)を実施し, ダイレクトシークエンスにより増幅が確認された遺伝子断片の塩基配列を決定した。

3.ウイルス検出結果

手足口病:41検体(41例の患者)からウイルスが検出され, コクサッキーウイルスA6(CV-A6)が34株, CV-A16が2株, CV-A10が2株, エンテロウイルスA71(EV-A71), CV-A5, エコーウイルス(Echo)3がそれぞれ1株であった。

CV-A6は第17週から検出され始め, 第21週~第30週を除く第31週までほぼ毎週検出された。患者数がピークとなった第30週にはEV-A71, CV-A16, CV-A5?およびCV-A10が検出された(図1)。

ヘルパンギーナ:13検体(12例の患者)からウイルスが検出され, CV-A5が6株, CV-A2が3株, CV-A10が2株, CV-A6, Echo 3がそれぞれ1株であった。

患者数がピークとなった第28週~第31週ではCV-A2, CV-A5, CV-A10が検出された(図2)。

まとめ

手足口病患者からのエンテロウイルスの検出はCV-A6が多数を占めたが, 第30週のピーク時にはCV-A5, CV-A10, CV-A16, EV-A71が検出され, これら複数種のウイルスが流行したことで患者数が増加した可能性が考えられた。

EV-A71の流行は3~4年周期2)とされ, 本県においても2014年以来3年ぶりに検出された。

ヘルパンギーナの患者数は例年と比べ多くはないが, CV-A2やCV-A5, CV- A10等, 複数の型が同時期に検出されている。全国ではCV-A6が最も多く, 次いでCV-A10が検出されているが, 本県はCV-A2やCV-A5がやや多く検出された。

CV-A16とEV-A71の検出数は少ないが, 本県の2015年の手足口病のように冬季に流行する可能性もあるため, 患者情報およびエンテロウイルス検出状況を今後も注視していく必要がある。

 

参考文献
  1. Nix WA, et al., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006
  2. IASR 33: 55-56, 2012

 

島根県保健環境科学研究所ウイルス科
 藤澤直輝 山田直子 辰己智香 黒田 諭 田原研司

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan