国立感染症研究所

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2017年度風疹予防接種状況および抗体保有状況―2017年度感染症流行予測調査(暫定結果)

(IASR Vol. 39 p39-41: 2018年3月号)

はじめに

感染症流行予測調査における風疹感受性調査は1971年度に開始され, 以降, ほぼ毎年度実施されてきた。本調査は風疹に対する感受性者を把握し, 効果的な予防接種施策を図るための資料にするとともに将来的な流行を予測することを目的として, 乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層における抗体保有状況ならびに予防接種状況の調査を行っている。

近年における風疹は, 2012~2013年に全国的な流行がみられ, その患者の多くはこれまでに風疹の定期接種の機会がなく, 風疹に対する免疫を有する者の割合が低い成人男性であった。翌2014年4月には 「風しんに関する特定感染症予防指針」 が施行され, 流行の中心となった世代を含む年齢層に対する抗体検査および予防接種の推奨が明記された。今回は全国的な流行の5年後で指針施行から4年目となる2017年度の調査結果から, 風疹の予防接種状況および抗体保有状況について報告する。

調査対象

2017年度風疹感受性調査は北海道, 宮城県, 茨城県, 栃木県, 群馬県, 埼玉県, 千葉県, 東京都, 神奈川県, 新潟県, 石川県, 長野県, 愛知県, 三重県, 山口県, 高知県, 福岡県, 沖縄県で実施された。抗体価の測定は各都道府県衛生研究所において, それぞれの地域で主に7~9月に採取された血清を用いて赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibition: HI)試験により行われた。2018年1月現在で5,656名(男性2,886名, 女性2,770名)の抗体価および予防接種歴が報告された。

風疹含有ワクチン接種状況

図1に風疹含有ワクチン(風疹単抗原, 麻疹風疹混合: MR, 麻疹おたふくかぜ風疹混合: MMR)の年齢/年齢群別接種状況について男女別に示した(※本調査結果は1調査時点における接種状況であり, 定期接種対象年齢の者であっても調査時点で未接種者が含まれることに注意が必要である)。

風疹含有ワクチンの接種状況をみると, 接種歴が不明であった者の割合は男女とも0~19歳では概ね10~30%, 20歳以上の年齢群では概ね50%以上であった。これら接種歴不明者を除いた1回以上接種者(1回・2回・回数不明)の割合について年齢別にみると, 男女とも0歳ではわずか(男/女:3%/0%)であったが, 定期接種第1期の対象年齢である1歳で87%に上昇した。また, 2歳以上19歳までは男女とも概ね95%以上の者が1回以上接種者であった。しかし, 20歳以上の成人層では男女差が大きくなり, 20代~50代の男性(41~83%)は, 同年齢層の女性(54~95%)と比較して10ポイント以上低い結果であった。

風疹HI抗体保有状況

年齢/年齢群別の風疹HI抗体保有状況について図2に示した。HI試験により抗体陽性と判定される抗体価1:8以上について2017年度の結果をみると, 30代前半までは男性と女性はほぼ同等の結果であり, 0歳で20%台(男/女:26%/24%)であった抗体保有率は1歳で70%台(男/女:77%/74%)に上昇し, 2歳以上30代前半までは概ね90%以上を維持していた。

一方, 30代後半以降の抗体保有率についてみると, 女性ではすべての年齢群で90%以上であったのに対し, 男性では60歳以上群を除くすべての年齢群で90%を下回り, 特に35-39歳群(84%), 40-44歳群(82%), 45-49歳群(77%) および50-54歳群(76%) では同年齢群の女性(97~98%)と比較して14~21ポイント低い抗体保有率であった。また, 過去5年(2012~2016年)の調査と比較して, これらの年齢群で男女差が大きい傾向は変わらず認められた。さらに, 生年度別の抗体保有状況の推移をみても, 女子中学生のみが定期接種の対象であった1962~1978年度生まれ(調査時年齢39~55歳)の男性の抗体保有率は, 2008~2017年度の10年間ほとんど変わらず約80%のまま推移していた(図3)。

まとめ

2017年度に実施された調査の結果, 成人男性(特に30代後半~50代前半)における抗体保有率は女性と比較して低かった。この傾向は全国的な流行後および特定感染症予防指針施行後の調査でも同様に認められており, いまだに多くの感受性者が残存していることが明らかとなった。

2020年度までの風疹排除達成に向けて, より積極的な対策が必要と考えられ, その対策を実施する際の資料ならびに対策の評価を行う上で, 本調査を継続して実施することが重要と考えられた。

 

国立感染症研究所感染症疫学センター 佐藤 弘 多屋馨子 大石和徳
同 ウイルス第三部 森 嘉生 竹田 誠
2017年度風疹感受性調査実施都道県:
 北海道, 宮城県, 茨城県, 栃木県, 群馬県, 埼玉県, 千葉県, 東京都, 神奈川県, 新潟県,
 石川県, 長野県, 愛知県, 三重県, 山口県, 高知県, 福岡県, 沖縄県

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