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2017/18および2018/19シーズンのインフルエンザウイルスの流行について―沖縄県

(IASR Vol. 40 p186-188:2019年11月号)

沖縄県では近年, 一年を通してインフルエンザ患者の発生が報告されている(久場由真仁ら, IASR 33: 242, 2012)。2017/18シーズン(2017年第36週/9月~2018年第35週/8月)は, 3種類のウイルスによる流行の長期化が認められ, 2018/19シーズン(2018年第36週/9月~2019年第35週/8月)は, 2016/17シーズン以来となるB型Victoria系統の検出と, 夏季の注意報発令に至ったことから, その概要を報告する。なお, 沖縄県ではインフルエンザの県全体の注意報発令基準を定点当たり報告数10人以上, 警報発令基準を同30人以上, 警報解除基準は同10人未満と定めている。

患者発生状況

2017/18シーズンにおけるインフルエンザ流行は, 第50週(12/11~12/17)に定点当たり患者報告数10.43人と注意報発令基準, 2018年第1週(1/8~1/14)には31.76人となり警報発令基準に達した。その後, 第13週(3/26~4/1)には警報解除となったが, 流行の兆しの指標である定点当たり患者報告数1.0人/定点を下回ること無くシーズンを終えた(図1)。注意報および警報発令中である2017年12月~2018年3月には, 0~14歳の年齢群が患者の44~55%を占めたが, 警報解除後の2018年4~8月には30~38%と減少した(図2)。

2018/19シーズンは, 2019年第1週(12/31~1/6)に定点当たり患者報告数28.53人と注意報発令基準, 第2週(1/7~1/13)に41.79人となり警報発令基準に達した。その後, 第9週(2/25~3/3)には警報解除となった。しかし, 第14週(4/1~4/7)より再び増加傾向に転じ, 第32週(8/5~8/11)には定点当たり患者報告数10.64人となり, 再度, 注意報が発令された(図1)。注意報および警報発令中である2019年1~2月には, 0~14歳の年齢群が患者の44~45%を占めたが, 5月以降は49~50%と増加した(図2)。

病原体検出状況

患者から採取された咽頭ぬぐい液を検査材料とし, リアルタイムRT-PCR法によりインフルエンザウイルスの遺伝子検出およびMDCK細胞によるウイルス分離を実施した。

2017/18シーズンは, 検査を実施した163例中, 146例(89.5%)がPCR陽性であった。また, PCR陽性146例のうち113例(77.4%)でウイルスが分離された。遺伝子型は, AH1pdm09亜型40例, AH3亜型63例, B型山形系統43例であった。注意報発令から警報解除まではAH1pdm09亜型, AH3亜型およびB型山形系統の3種類のウイルスの混合流行となった(図1)。その後, 第17週(4/23~4/29)以降は, AH1pdm09亜型とAH3亜型が主流となり次シーズンを迎えた。

2018/19シーズンは, 検査を実施した207例中, 180例(87.0%)がPCR陽性であった。また, PCR陽性180例のうち117例(65.0%)でウイルスが分離された。遺伝子型は, AH1pdm09亜型54例, AH3亜型81例, B型Victoria系統45例であった。注意報発令から警報解除まで, AH1pdm09亜型, AH3亜型の2種類のウイルスが流行の主流であった。しかし, 警報解除前の2019年第8週(2/18~2/24)にB型Victoria系統が検出されて以降, B型Victoria系統が増加した。さらにその後, AH1pdm09亜型およびAH3亜型の検出件数の増加とともに定点当たり患者報告数が注意報発令基準に達し, 2016/17シーズンぶりに夏季の注意報発令に至った(図1)。

抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいては, 2017/18および2018/19シーズンにウイルス分離された70例のAH1pdm09亜型についてH275Yオセルタミビル耐性マーカーの有無を検索したところ, すべての株が感受性を示した。

まとめ

2017/18シーズンは, 冬季にAH1pdm09, AH3亜型, B型山形系統の3種類のインフルエンザウイルスが検出され警報発令期間が12週間継続し, その流行の主体は15歳未満の若年層であった(図1)。過去には, 本県では2013/14シーズンの冬季において4種類のウイルスの混合流行により警報発令期間が12週間にわたり継続した(久場由真仁ら, IASR 35: 262-263, 2014)。また2016/17シーズンには3種のウイルスの混合流行により, 警報発令には至らなかったものの, 注意報発令期間が16週間にわたり継続したことが報告されている(久場由真仁ら, IASR 38: 226-227, 2017)。これまでの報告と同様に, 2017/18シーズンも3種のウイルスの混合流行により流行が長期化したと考えられた。

2018/19シーズンでは, 冬季にAH1pdm09, AH3亜型の2種類のインフルエンザウイルスが検出され警報発令期間が7週間継続した。また警報解除となる直前より, 2016/17シーズン以来1例も検出されていなかったB型Victoria系統が増加し, 特に5月以降は0~14歳の年齢群が患者の約半数を占めた。本県で2018年度に実施したインフルエンザの流行予測調査の結果, B型Victoria系統のHI抗体保有率(HI価40倍以上陽性)は40~49歳を除くすべての年齢群において, 他の3つの型と比較して低く, 特に0~14歳の年齢群の抗体保有率は35%を下回っていた(沖縄県website平成30年度感染症流行予測調査より引用)。このことから, 夏季のB型Victoria系統の増加は, 県民のB型Victoria系統に対する抗体保有率の低さが一つの要因と考えられた。2018/19シーズンはさらに, その後, AH1pdm09, AH3亜型が増加したことで, 2016/17シーズン以来となる夏季の注意報発令に至ったと考えられた。本県においては通年で患者が報告されていることから, 今後も引き続き通年でインフルエンザの発生動向に注視する必要がある。

 
 
沖縄県衛生環境研究所
 眞榮城徳之 大山み乃り 久場由真仁 仁平 稔
 柿田徹也 宮平勝人 喜屋武向子
沖縄県感染症情報センター
 大川 賢 山内美幸
沖縄県保健医療部地域保健課
 岡野 祥 久髙 潤
Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan