国立感染症研究所

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大阪府内における新型コロナウイルス感染症症例発生状況

(IASR Vol. 41 p110-111: 2020年7月号)

COVID-19症例発生状況と対応

大阪府内で2020年2月10日以降5月3日までに判明した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例は1,675例(無症状病原体保有者84例を含む)報告されている。

大阪市保健所は, 2月下旬に, 大阪市内のライブハウスで開催されたライブの参加者計2名がライブ参加後に発症し, COVID-19と診断されたことを探知した。さらに, 他自治体でCOVID-19と診断された症例1名が, 発症後に同ライブに参加していたとの報告を受け, 患者が不特定多数の人と接触し, 参加者の間でさらなる症例の発生が懸念されたことから, 大阪市と大阪府が連携し, 積極的に症例探索を実施した。当該ライブハウスの協力を得て, 大阪府のホームページなどを通じ, ライブハウス名を公表し, 参加者およびその濃厚接触者に対し, 注意喚起を行うとともに, 新型コロナ受診相談センター(帰国者・接触者相談センター)への相談を呼びかけた。また, ライブハウスに端を発する症例が継続して発生している可能性があったことから, 3月1日に新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班に専門家の派遣を要請した。加えて, ライブには大阪府内だけでなく, 全国から参加していることが予想されたことから, 関西広域連合や全国知事会を通じて, 全都道府県に対し, 注意喚起の協力を依頼した。大阪府では2月29日を皮切りに, 3月7日までに計4カ所のライブハウス(7つの開催日時)を対象に, 注意喚起し, 参加者の検査を積極的に実施した。その結果, 参加者等から延べ364件に及ぶ相談が寄せられるとともに, 2020年第8週(2/17~23)から第11週(3/9~15)の期間に発症日を有する患者41例および無症状病原体保有者12例, 発症日不明1例のライブ参加者が報告された。その後はライブハウスに関連した症例は報告されていない(図1)。ライブ参加者54例のうち37例(69%)が女性で, 40代女性が14例, 20代女性が9例, 両者で全体の43%を占めた。大阪府がライブ関連症例について資料を公表しているので参考にされたい(http://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/attach/hodo-37780_5.pdf)。

一方, 第11週以降に発症日を有する症例で大阪市内の歓楽街を訪問した, または, 歓楽街で働く人の症例増加が認められた(図1)。このことから大阪府は3月31日, 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため, 夜間から早朝にかけて営業するナイトクラブやバーなど接客を伴う飲食店の利用の自粛と, 訪れた方で症状がある場合には, 相談センターに連絡するよう大阪府民に呼びかけた。その結果, 歓楽街に関連した症例の積極的な探知に繋がり, 一時的な症例増加が認められたが, 第15週以降に発症日を有する歓楽街に関連した症例は急激に減少した。歓楽街に関連した症例は169例が報告され, そのうち113例が男性であった(67%)。年齢群性別では, 20代女性が34例(20%)と最も多く, 続いて20代男性が33例(20%)であった。30~50代の男性は71例で, 全体の42%を占めた。

発症日基準で歓楽街に関連した症例が増加傾向であった第12週以降, 症例数, 感染経路が明らかでないリンク不明症例ともに増加傾向となり, 4月の初旬にかけて症例数が急激に増加した。その頃から医療従事者の感染例(図1)も増加傾向となった。

大阪府内では4月7日に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく“緊急事態宣言”が発せられ, 「外出の自粛」と「イベント開催の自粛」などが要請された。その結果, 発症日基準で4月中旬以降の症例数およびリンク不明症例の割合も減少した。大阪府内で実施された3月22日~5月3日の累計検査数は検査実施日基準で13,437(退院時確認検査n=1,788を除く)であった。4月12日に検査陽性割合(陽性人数/検査人数)(退院時陰性確認目的のものを除く)が検査実施日前後3日を含む移動平均で20%に達したが, それ以降減少傾向が持続し, 5月3日時点で4%であった。

COVID-19症例の記述

大阪府内で2月10日以降判明した症例1,675例のうち男性が928例で55%を占めている。年齢分布は20~50代で約7割を占め, 30~70代では男性の割合が高い傾向があった(図2)。10代未満の症例数の占める割合は小さく, 特に小学生や未就学児症例の多くは家庭内における感染が疑われるものであった()。一方で80歳以上の症例は半数近くが医療に関連した感染が疑われるものであった。

5月3日までに判明した症例の6月20日時点の死亡例数は81例(40代男性3例, 50代男性2例, 60代女性1例, 60代男性8例, 70代女性8例, 70代男性21例, 80代女性11例, 80代男性17例, 90代女性9例, 100代女性1例)である。

まとめと考察

発症日基準で3月初旬はライブ参加者を中心に症例が探知されたが, 3月中旬以降, 歓楽街に関連した症例等のライブ以外のリンクが判明した症例や, リンク不明症例の報告が4月初旬にかけて増加し, それに伴い4月中旬にかけて医療関連症例の報告が増加した。このことは, 急激な症例数の増加による医療負担の増加と医療資源の不足が医療従事者症例増加の一因となったと考えられた。

4月初旬以降, 症例数, 検査陽性割合, リンク不明症例数は, いずれも減少傾向であることから, 緊急事態宣言による外出自粛等の効果が現れていると考えられた。今後の自粛等の段階的解除を見据え, 再び症例数が増加することも予想されることから, 引き続きの注意喚起と併せて, リンク不明症例に関する遡り調査結果に基づく解析を通じたクラスターの探知と, 早期対応に努めることが重要であると考える。

 
 
大阪健康安全基盤研究所公衆衛生部  
大阪府健康医療部保健医療室医療対策課
大阪市保健所

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