
腸管出血性大腸菌O156:H-/Hg25の広域散発発生事例について(速報)
(IASR Vol. 43 p109-110: 2022年5月号)
血清型O156:H25〔非運動性だがH(べん毛)抗原の遺伝子型がHg25であるO156:H-/Hg25を含む〕の腸管出血性大腸菌(EHEC)は, 2007~2020年に56株が国立感染症研究所(感染研)細菌第一部へ送付されていたが, 2021年以降では95株が20以上の地方衛生研究所(地衛研)・保健所から送付されている(2022年3月31日現在)。
これらの多くは無症状の保菌者由来株であるが, 血便患者由来が5株, 水様性下痢等由来が5株含まれる。すべての菌株は志賀毒素遺伝子としてstx1, 接着遺伝子としてeaeを保有している。
感染研細菌第一部で実施したパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)解析の結果, 2021年以降に分離されたEHEC O156:H25は, 現在のところ5つの異なるPFGE型に分類され, このうち少なくとも64株が同一のPFGE型(156pt1)に分類されている。
2018年1月~2021年10月に分離された35株について全ゲノム配列解析を行った結果, PFGE型156pt1となる21株はいずれも単一のクラスターを形成した(図)。同一クラスター内の単一塩基多型(SNP)数は最大で3カ所であり, 非常に近縁な株から構成されることが明らかとなった。一方, 156pt1とPFGE型の異なる他の株間では184カ所以上のSNPが検出され, 156pt1と近縁の株は存在しなかった。
現在のところ, 共通する感染源等は不明であるが, 今後の分離状況について注視したい。