印刷
ippan title c
 
 
3 疫学
 
 我が国のC型肝炎感染者は200-240万人と推定されています。全国の日赤血液センターにおける初回献血者のデータに基づく2000年時点のHCV抗体陽性率は、年齢が上がるとともに増え、60~69歳で3.38%となっています。

 HCVの感染経路としては、感染血液の輸血、経静脈的薬物濫用、入れ墨、針治療、観血的医療行為などが考えられています。母子感染は妊婦がHCVRNA陽性の場合、出生児が感染する確率は10%程度と言われています。また、血液透析に伴うHCV新規感染の発生は平均年率2%程度の頻度あるといわれ、さらに歯科診療における潜在的な感染の可能性も示唆されています。また、ニュースで取り上げられている血液製剤フィブリノーゲンを投与された約28万人のうち感染者は約1万人と推計されています。我が国のC型肝炎患者のうち、輸血歴を有するものは3~5割程度にすぎず、多くの患者で感染経路は不明であり、感染初期では自覚症状に乏しいこともあり、感染の自覚がないまま病気が進行して初めて発見されるケースが多いのはこのためです。したがって、国はできるだけ多くのヒトにC型肝炎ウイルス検査を受けてもらいたいと考えております。

 HCV感染に伴って急性肝炎を発症した後、30~40%ではウイルスが検出されなくなり、肝機能が正常化しますが、残りの60~70%はHCVキャリアになり、多くの場合、急性肝炎からそのまま慢性肝炎へ移行します。慢性肝炎から自然寛解する確率は0.2%と非常に稀で、10~16%の症例は初感染から平均20年の経過で肝硬変に移行すると考えられています。肝硬変の症例は、年率5%以上と高率に肝細胞癌を発症するとされ、肝癌死亡総数は年間3万人を越え、いまだに増加傾向にありますが、その約8割がC型肝炎を伴っています。以上のようなことから、C型肝炎と診断されたヒトには適切な治療と経過観察が必要となるわけです。のべ約850万人のヒトがC型肝炎検診を受診し、1.16%が感染の可能性が指摘されていますが、その結果が検診受診者に通知されたにもかかわらず、2次精密検査のために医療機関を受診されたヒトは残念ながら3割程度にとどまっていると推定されています。

 現行のスクリーニングシステム実施下では、輸血その他の血液製剤による新たなC型肝炎の発生は限りなくゼロに近づいています。_現在、米国では薬物濫用者を中心に年間25000人の新たなHCV感染者が発生していますが、日本ではHCVによる新たな急性肝炎の発症は2001年以降年間40-70人程度と大変少なく抑えられています(国立感染症研究所情報センターhttps://idsc.niid.go.jp/idwr/ydata/report-Ja.html)。以上から、国のC型肝炎対策の基本は、多くの国民に対してC型肝炎ウイルス検査を行い、早期に感染の有無を確認し、感染者に対して適切な治療を行うことと考えられています。さらに、上記のような病気について正しい知識を普及させることは、感染者の就業・入所・入学等に伴う偏見・差別等を防ぐためにも重要であると考えられます。
Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan