国立感染症研究所

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<速報>無菌性髄膜炎患者からのエコーウイルス30型の検出―青森県

(掲載日 2014/9/11) (IASR Vol. 35 p. 242-243: 2014年10月号)

2014年5~7月までに青森県内の1カ所の病原体定点医療機関から採取された無菌性髄膜炎入院患者(疑い含む)21名の髄液21検体の検査を実施したところ、20名からエコーウイルス30型(以下E30)が検出された(表1)。E30が検出された患者の性別は男性12名、女性8名であった。年齢別では6歳が5名と最も多く、次いで9歳が3名、4歳、5歳、10歳、11歳が各2名、2歳、3歳、7歳、8歳が各1名であった。20名の主な症状は、発熱(20名)、頭痛(20名)、嘔気・嘔吐(2名)であった。発熱は37.8~39.7℃で、平均は38.6℃であった。なお、入院期間は3~6日間で、予後は良好であった。

エンテロウイルス(以下EV)検査は、RT-PCR法による遺伝子検出法および培養細胞法によるウイルス分離・同定を実施した。検査材料すべてについてVP4/VP2領域を標的とした RT-PCR法を行い、EVが検出された20検体についてダイレクトシークエンスを行い、同一クラスターを形成することを確認した(図1)。ウイルス分離には、2細胞(RD-AおよびHEp-2)を使用し、1代を1週間として3代目まで継代および観察を行った。このうち16検体から分離された16株について単味抗血清による中和試験を行うとともに、VP1領域を標的とした one tube RT-PCR法1)を用いて同定を行った。また、得られた塩基配列(423bp)を用いて近隣結合法による系統解析を行った(図2)。

青森県感染症発生動向調査における無菌性髄膜炎患者は、2014年第17週(4月21~27日)に1人(0.17人/定点)が報告されたのを最初に、第27週(6月30日~7月6日)の10人(1.67人/定点)をピークに減少し、第31週(7月21~27日)6人(1.0人/定点)の報告を最後に、第32週以降報告がない(第35週現在)。

管轄保健所でこれら無菌性髄膜炎患者(疑い含む)の調査を行ったところ、疫学的な関連性は認められなかった。

昨年、滋賀県2)や大分県3)など、近畿地方、九州地方など西日本を中心にE30が多く分離された。2014年5月の時点では、関東地方や東北地方で発生がみられない状況で、青森県内の一地域で患者が多く発生していたため、今後のE30の動向について注視したい。


参考文献
  1. 病原体検出マニュアル 無菌性髄膜炎
  2. 児玉弘美, 他, IASR 34: 309-310, 2013
  3. 加藤聖紀, 他, IASR 34: 308-309, 2013

青森県環境保健センター  筒井理華 古川紗耶香 木村政明 工藤真哉
西北地域県民局地域健康福祉部保健総室 笹 けい子 
国立感染症研究所ウイルス第二部 吉田 弘

 

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