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バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症

(IASR Vol. 42 p155-156: 2021年8月号)

 

 腸球菌属はグラム陽性球菌であり, 腸管や環境に常在し, 健常人の便培養から分離され, 尿検体に混入することもある。ヒト感染症に関与する菌種としてはEnterococcus faecalis, E. faecium, E. gallinarum, E. casseliflavusなどが挙げられ, 臨床検体から分離される腸球菌の約7割がE. faecalisである。腸球菌は日和見病原体であり, 高齢者, 糖尿病, 悪性腫瘍, 心疾患, 手術後患者などの感染防御能の低下した易感染宿主に菌血症, 心内膜炎, 尿路感染症, 腹腔・骨盤内感染症などの感染症を引き起こす。中でも菌血症, 心内膜炎は重症感染症であり, E. faeciumによる菌血症は致命率が高い。セフェム系薬やカルバペネム系薬, アミノグリコシド系薬に自然耐性を示す腸球菌による感染症において, バンコマイシンは極めて重要な抗菌薬とされている。

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