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国立感染症研究所 感染症疫学センター
2020年10月31日現在
(掲載日:2021年4月25日)

バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant Enterococci: VRE)感染症は、感染症法が施行された1999年4月以降、四類感染症の全数把握対象疾患となり、2003年11月の改正以降、五類感染症全数把握対象疾患となった。届出上の定義は2013年3月に一度変更され(同年4月施行)、「バンコマイシン耐性遺伝子(vanAvanBvanC)を保有する腸球菌(VRE)による感染症である。」から、現行の「バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌(VRE)による感染症である。」となり、耐性遺伝子の検出による届出基準が削除された。届出対象はVREによる感染症を発症した患者であり、保菌者は対象外である(届出基準、届出票についてはhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-01.html参照)。なお、届出票の「症状」については届出時点の臨床診断名であり、VREが検出された検体との一致を求めてはいない。また、感染症法上のVRE判定基準値は病院でしばしば用いられる基準と異なることがある(文末参考)。

2020年10月31日現在、2019年第1週[2018年12月31日]~第52週[2019年12月29日]に診断されたVRE感染症は80例であった(図1)。性別は男性が40例(50%)、診断時年齢の中央値は79歳(四分位範囲72-85歳、範囲55~101歳)で、65歳以上が全体の88%を占めた(図2)。届出時の死亡例は6例(8%)であった。診断名は尿路感染症26例(33%)、菌血症20例(25%)、の順に多かった。分離検体は尿が38%と最も多く、次いで血液31%が多かった(表1)。菌種は、記載のあった77例のうちEnterococcus faecium 56例(70%)、Enterococcus casseliflavus 7例(9%)、Enterococcus faecalis 5例(6%)の順に多く報告されていた(表2)。VREの耐性遺伝子の検出については14例(18%)で記載があり、内訳はvanA遺伝子7例(50%)、vanB遺伝子3例(21%)、vanC遺伝子4例(29%)であった。21都道府県62医療機関から報告があり、大阪府(32例)や東京都(8例)が多かった。

VRE感染症の報告は2017年以降、年間約80例と概ね横ばいとなっている。2019年の報告は、2018年と比較し、性別の分布に大きな変化を認めなかったが、65歳以上の割合が80%から88%に増加した。菌分離検体の割合には著変を認めなかった。分離菌種は、Enterococcus faeciumの割合が84%から70%に低下した一方で、Enterococcus casseliflavusEnterococcus gallinarumの割合がそれぞれ3%、1%から9%、5%へ増加した。



図1.VRE感染症の年別報告数、2000年-2019年

 
 

図2.VRE感染症症例の性別年齢分布,2019年(n=80)

 

表1.VRE感染症症例の菌分離検体,2019年(n=80)

 

表2.VRE感染症症例の分離菌種,2019年(n=80)

 

参考 感染症法の届出基準及び米国Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)2012における微量液体希釈法によるVRE判定基準値

 
 

 


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