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国立感染症研究所 感染症疫学センター
2017年11月14日現在
(掲載日:2018年1月23日)

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症は,感染症法が施行された1999年4月以降,五類の全数把握対象疾患となった。届出上の定義は2013年3月に一度変更され(同年4月施行)、「バンコマイシン耐性遺伝子(vanA,vanB,vanC)を保有する腸球菌(VRE)による感染症である。」から、現行の「バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌(VRE)による感染症である。」となった。届出対象はVREによる感染症を発症した患者であり、保菌者は対象外である(届出基準、届出票についてはhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-01.html参照)。

 

なお、届出票の「症状」については届出時点の臨床診断名であり、VREが検出された検体との一致を求めてはいない。

2007年第1週(2007年1月1日)~2016年第52週(2017年1月1日)の10年間に、800例のVRE感染症症例が報告された(2017年11月14日現在)。1年間の報告数は2010年の120例をピークに減少し,2013年以降は年間60例前後の報告数で推移している(図1)。

vre180123 fig1

2007年から2016年までの10年間に届け出られた800例のうち届出時の死亡例は48例(6.0%)であった。

性別は男性が417例(52.1%),診断時年齢の中央値は76歳(範囲0~102歳)で,65歳以上が全体の79.4%を占めた(図2)。

vre180123 fig2

診断名(症状,発症した感染症含む)は,発熱 63.9%,菌血症・敗血症 25.5%,尿路感染症 18.8%の順に多かった。

分離検体は,記載のあった783例のうち,血液が37.2%と最も多く,次いで尿24.6%,胆汁12.5%の順に多く報告されていた(表1)。

vre180123 tbl1

菌種は,記載のあった672例のうち Enterococcus faecium 308例(45.8%),Enterococcus casseliflavus 174例(25.9%),Enterococcus gallinarum 113例(16.8%),Enterococcus faecalis 76例(11.3%)の順に多く報告されていた。菌種内訳の年次推移を図3に示す。

vre180123 fig3

VREは2007年から2016年までの10年間に42都道府県から報告されており,神奈川県 138例(17.3%),東京都 98例(12.3%),大阪府 73例(9.1%)の順に報告が多かった。

VREの耐性遺伝子の検出については493例で記載があった。そのうち,vanA遺伝子 68例(13.8%),vanB遺伝子 150例(30.4%),vanC遺伝子 278例(56.4%)の報告があった。

 

 


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