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国立感染症研究所 感染症疫学センター
2019年12月27日現在
(掲載日:2020年8月5日)

バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant Enterococci: VRE)感染症は、感染症法が施行された1999年4月以降、四類感染症の全数把握対象疾患となり、2003年11月の改正以降、五類感染症全数把握対象疾患となった。届出上の定義は2013年3月に一度変更され(同年4月施行)、「バンコマイシン耐性遺伝子(vanA、vanB、vanC)を保有する腸球菌(VRE)による感染症である。」から、現行の「バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌(VRE)による感染症である。」となり、耐性遺伝子の検出による届出基準が削除された。届出対象はVREによる感染症を発症した患者であり、保菌者は対象外である(届出基準、届出票についてはhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-01.html参照)。なお、届出票の「症状」については届出時点の臨床診断名であり、VREが検出された検体との一致を求めてはいない。また、感染症法上のVRE判定基準値は病院でしばしば用いられる基準と異なることがある(文末参考)。

2019年12月27日現在、2018年第1週[2018年1月1日]~第52週[2018年12月30日]に診断されたVRE感染症は80例であり(図1)、届出時の死亡例は3例(4%)であった。性別は男性が41例(51%)、診断時年齢の中央値は76歳(四分位範囲67-84歳、範囲38~99歳)で、65歳以上が全体の80%を占めた(図2)。診断名は尿路感染症28例(35%)、菌血症18例(23%)、の順に多かった。分離検体は尿が38%と最も多く、次いで血液28%が多かった(表1)。菌種は、記載のあった78例のうちEnterococcus faecium 67例(84%)、Enterococcus faecalis 5例(6%)、Enterococcus casseliflavus 2例(3%)の順に多く報告されていた(表2)。VREの耐性遺伝子の検出については27例(34%)で記載があり、内訳はvanA遺伝子 13例(48%)、vanB遺伝子 14例(52%)であった。19都道府県59医療機関から報告があり、大阪府(24例)や東京都(7例)が多かった。

VRE感染症の報告は2017年以降、年間約80例と2013年-2016年に比べてやや増加していた。2018年の報告は、性別と年齢の分布に変化を認めなかったが、検体はこれまで25%前後であった尿検体が38%と増え、血液検体より多く報告されていた。分離菌種は、E. faeciumが8割前後報告されていた2017年と同様の傾向が続いていた。



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