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Eliminate Yellow fever Epidemics(EYE):黄熱流行の排除に向けた国際戦略, 2017~2026年

(IASR Vol. 38 p.149-150: 2017年7月号)

黄熱は, Aedes属とその他の蚊により媒介されるヒトとヒト以外の霊長類で引き起こされる急性ウイルス性疾患である。現在, アフリカと中南米で流行しているが, アジアでの流行は起こっていない。黄熱には森林型, 中間型, 都市型の3つの伝播サイクルがあり, 都市型サイクルは主にネッタイシマカによる大規模なヒトでの流行や国際的な伝播を引き起こす可能性がある。黄熱は予防接種で予防可能な疾患であり, 1回の予防接種で, 生涯にわたる免疫が維持されるため, 予防接種は疾病管理の戦略の中心である。

 Mass vaccination campaigns(MVCs)や2006年から世界保健機関(WHO)と国際連合児童基金(UNICEF)がすすめたYellow Fever Initiativeにより流行国における黄熱アウトブレイクは減少したが, 2016年にアンゴラ共和国(アンゴラ), コンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congo: DRC)の都市部で, 大規模なアウトブレイクが発生した。これまではアンゴラとDRCは黄熱の高リスク国に位置づけられておらず, 予防的なMVCsが実施されていなかった。このアウトブレイク対応のため, 3,000万人分以上の緊急予防接種が必要となり, ワクチン不足から分割量での予防接種がキンシャサで実施された。都市化, 流行地への人の移動の増加や気候変動によるネッタイシマカの生息地域の拡大など, この先黄熱流行の可能性が増すため, WHOは今後10年間(2017~2026年)の長期的な戦略を打ち出した。これは, ”EYE”(Eliminate Yellow fever Epidemics:黄熱流行の排除戦略)と呼ばれ, 2016年10月にWHO Strategic Advisory Group of Experts on Immunization (SAGE) で承認された。

EYE戦略では, 2026年までに全世界で黄熱流行を排除すること(散発例は容認)を目指しており, 戦略目標として, リスクのある人々の感染防護, 国際的な黄熱伝播の防止, アウトブレイクの迅速な封じ込めの3つが掲げられている。この戦略はアフリカと中南米内の蔓延地域以外も視野に入れた, 予防接種以外の対策も含む包括的なものであり, サーベイランスおよび検査室診断キャパシティ強化, 国際保健規則の適応, 民間機関との協力を強調している。また, アフリカと中南米各国のリスク分類が行われ, リスクごとに取り組むべき目標や戦略が設定された。EYE戦略は, 2017~2020年の4年間の作業計画の後に, 見直しが予定されている。

 

〔WHO, WER 92(16): 193-204, 2017〕
(抄訳担当:感染研感染症疫学センターFETP・錦 信吾)

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