Identification and epidemiological study of an uncultured flavivirus from ticks using viral metagenomics and pseudoinfectious viral particles

Kobayashi D, Inoue Y, Suzuki R, Matsuda M, Shimoda H, Faizah AN, Kaku Y, Ishijima K, Kuroda Y, Tatemoto K, Virhuez-Mendoza M, Harada M, Nishino A, Inumaru M, Yonemitsu K, Kuwata R, Takano A, Watanabe M, Higa Y, Sawabe K, Maeda K, Isawa H.

Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 121 (19) e2319400121

ウイルスを網羅的に検出する手法と感染性偽ウイルス粒子を用いた調査手法を組み合わせることによって、これまで詳しい研究が困難であった難培養性フラビウイルスの解析が可能となりました。
本研究では、今回発見された難培養性フラビウイルスであるサルヤマウイルスの遺伝子配列をもとに感染性偽ウイルス粒子を作製し、これを用いた血清疫学調査によって、本ウイルスが日本国内の広範囲で流行している可能性を示しました。
この方法を用いることによって、培養が難しい特性によって病原体としてこれまで認知されていなかったウイルスや、未知のウイルスの詳しい生態・疫学調査が可能になると思われます。

本研究はAMED・JST・厚労科研・科研費の支援を受けて山口大および岡山理科大との共同で実施されました。

Structural analyses of the GI.4 norovirus by cryo-electron microscopy and X-ray crystallography revealing binding sites for human monoclonal antibodies

Kimura-Someya T, Katsura K, Kato-Murayama M, Hosaka T, Uchikubo-Kamo T, Ihara K, Hanada K, Sato S, Murayama K, Kataoka M, Shirouzu M, Someya Y.

J. Virol., 98, 2024.

遺伝子型GI.4ノロウイルス特異的抗体CV-1A1とChiba株由来ウイルス様中空粒子(VLP)との複合体構造、GIの様々な遺伝子型に交叉反応する抗体CV-2F5とVP1タンパク質のPドメインとの複合体構造をそれぞれクライオ電子顕微鏡単粒子解析、X線結晶構造解析により決定した。CV-1A1はVLPを構成するVP1タンパク質のP2領域を、CV-2F5はP1領域を認識することが明らかになった。P2領域は遺伝子型間で変化に富むのに対し、P1領域は遺伝子型間で保存性が高く、これらの抗体の特異性が裏付けられた。CV-1A1はVLPのルイスb抗原結合を阻害し、抗体の一部領域がルイスb結合部位に入り込む構造解析結果と一致する。また、CV-2F5はVLPを破壊する特性が明らかになった。本研究の成果は構造情報に基づく創薬に貢献するものと期待している。

本研究はAMED(to TKS, TH, YS)およびAMED-BINDS(to MS)の支援により実施された。

Loxapine inhibits replication of hepatitis A virus in vitro and in vivo by targeting viral protein 2C

Mami Matsuda, Asuka Hirai-Yuki, Osamu Kotani, Michiyo Kataoka, Xin Zheng, Daisuke Yamane, Masaru Yokoyama, Koji Ishii, Masamichi Muramatsu, and Ryosuke Suzuki

PLOS PATHOGENS 2024, 20(3): e1012091.

A型肝炎ウイルス(HAV)感染によって発症するA型肝炎は、開発途上国のみならず先進国においても流行し死者も出ていますが、現在HAV感染の治療に使える抗ウイルス薬はありません。我々は統合失調症の治療薬としてFDAに承認されているロキサピンがHAV複製の阻害剤であることを発見しました。HAVに対するロキサピンの効果はドーパミンD2受容体(抗精神病活性の標的)を介さずに、HAV 2Cタンパク質に直接作用する事が示唆されました。ロキサピンの抗HAV効果は培養細胞のみならず感染マウスモデルでも認められました。この研究成果はA型肝炎治療薬開発において有用な知見となることが期待されます。本研究は感染研、東京都医学研との共同研究で、厚労省、文科省、AMEDの研究支援を受け実施しました。

Enterovirus A71 does not meet the uncoating receptor SCARB2 at the cell surface

Yorihiro Nishimura, Kei Sato, Yoshio Koyanagi, Takaji Wakita, Masamichi Muramatsu, Hiroyuki Shimizu, Jeffrey M. Bergelson, Minetaro Arita

PLOS Pathogens 2024 Feb 15;20(2):e1012022. doi: 10.1371/journal.ppat.1012022.

これまで、エンテロウイルスA71(EV-A71)は細胞表面で受容体SCARB2に結合して細胞内に侵入するとされてきました。今回、国立感染症研究所ウイルス第二部と京都大学、ペンシルベニア大学、フィラデルフィア小児病院、神戸医療産業都市推進機構との共同研究により、細胞表面にSCARB2は無いことを明らかにしました。EV-A71は細胞表面に付着するための受容体(PSGL-1など)に結合して侵入し、後期エンドソームやリソソームでSCARB2に出会い、ゲノムを放出すると考えられます。今回の研究成果により、EV-A71が細胞に侵入する機構の全容解明が進むと期待されます。

本研究はJSPS科研費、AMED等の支援を受けました。

Generation of JC Polyoma Pseudovirus for High‐Throughput Measurement of Neutralizing Antibodies

Mami Matsuda, Tian‐Cheng Li, Akira Nakanishi, Kazuo Nakamichi, Makoto Saito, Tadaki Suzuki, Tomokazu Matsuura, Masamichi Muramatsu, Tetsuro Suzuki, Yoshiharu Miura, and Ryosuke Suzuki

Diagnostics 2024, 14(3), 311;

進行性多巣性白質脳症(PML)は,主に細胞性免疫の低下に伴ってJCポリオーマウイルス(JCPyV)が脳のオリゴデンドロサイトで増殖,脱髄を引き起こす予後不良の中枢神経疾患である.近年ナタリズマブ等の多発性硬化症(MS)の治療薬に関連したPMLが問題となっている.JCPyV抗体価はナタリズマブ関連PMLの発症リスクの指標として用いられるが,抗体価測定は同薬剤が使用,または使用が検討されている患者の国外での測定のみが可能である.本研究ではJCPyV様中空粒子を用いたELISAおよび1回感染型JCPyVを用いた中和試験系を構築し,MS等の神経疾患患者の血清中の抗JCPyV抗体レベルを測定し,その有用性を示した.

本研究は,感染研ウイルス第二部,第一部,病理部,慈恵医大,駒込病院,浜松医科大との共同研究で,厚労省,文科省,AMEDの研究支援を受け実施した.

Structural basis of hepatitis B virus receptor binding

Asami J#, Park JH#, Nomura Y#, Kobayashi C#, Mifune J, Ishimoto N, Uemura T, Liu K, Sato Y, Zhang Z, Muramatsu M, Wakita T, Drew D, Iwata S, Shimizu T, Watashi K*, Park SY*, Nomura N*, Ohto U*

Nature Structural & Molecular Biology (2024)
doi: https://doi.org/ 10.1038/s41594-023-01191-5

B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓にのみ感染するという特徴は、胆汁酸取り込み輸送体NTCP/SLC10A1を受容体に利用するためであるが、その高い親和性と特異性が何に起因するかは明らかでなかった。本研究ではHBV表面抗原の受容体結合領域preS1ペプチドとNTCPの結合立体構造をクライオ電子顕微鏡解析により解明した。preS1は外向き型9回膜貫通NTCPタンパク質とのみ複合体を形成していた。preS1は極めて複雑に折り畳まれてNTCPと結合し、そのN末端側の多重ループ構造で胆汁酸トンネル内部と、よりC末端領域でNTCPの細胞外表面と這うように接触していた。特にpreS1のN末端領域、NTCPの胆汁酸トンネルを構成する第8膜貫通ヘリックスが複合体形成に重要であることが示された。これまで長らく謎とされていたHBVと肝臓表面受容体が接触する瞬間の機能構造が初めて明らかとなり、これはHBVが感染宿主を選択する仕組みや細胞侵入機構の解明、新たな抗ウイルス薬の開発に有用な知見となる。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan