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複数国で報告されているエムポックスについて
(第3報)

2022年9月13日時点
2023年5月26日一部改訂

国立感染症研究所

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概要

 

エムポックスについて

 

国外の状況

 

動物におけるエムポックス

 

ワクチンについて

 

治療薬について

いくつかの抗ウイルス薬について、in vitroおよび動物実験での活性が証明されており、エムポックスの治療に利用できる可能性があるが、エムポックスに対する薬事承認を得ているのはEUにおけるテコビリマット(Tecovirimat, ST-246/TPOXX)のみである。
テコビリマットは、米国SIGA Technologies 社が開発した抗ウイルス薬であり、2018年に米国で経口の抗天然痘薬として承認され、2022年5月に同適応の静注薬として承認された(US FDA , 2018 , SIGA, 2022)。また、EUでは天然痘、ワクチニア症、エムポックス、牛痘に適応がある経口薬として承認された(European Medicines Agency, 2022)。いずれも臨床試験で効果を評価することは困難であることから、非ヒト哺乳類(サル)を含む複数の動物での致死的チャレンジ試験のデータにより有効性が評価されている。エムポックスに対する効果については、サルにおけるエムポックスの致死的チャレンジ試験でも有効性が確認されている(US FDA, 2018, Grosenbach DW, 2018)。英国から報告されたヒトでのエムポックスの治療例1例では、他の抗ウイルス薬であるブリンシドフォヴィル(brincidofovir)で治療された3例と比較して、症状及び上気道ウイルス排出期間が短く、退院までに有害事象は確認されなかった(Adler H, 2022)。また、米国から報告されたヒトでのエムポックスの治療例3例の報告では、いずれの症例も重症化せず経過し、重篤な有害事象は確認されなかった(Matias WR, 2022)。ヒトにおける安全性は359人で評価された報告があり、最も多い副作用は頭痛(10人に1人程度)と吐き気(最大10人に1人程度)で後遺症なく回復している(European Medicines Agency, 2022, Grosenbach DW, 2018)。
また、ヒトでの第2世代天然痘ワクチン接種後の重篤な副反応例に対しての治療目的の使用例があるが(Vora S, 2008, CDC, 2009, Lederman ER, 2012, Whitehouse ER, 2019, Lindholm DA, 2019)重篤な副作用は見られていない。

 

国内の状況

 

国内における対策

表.接触状況による感染リスクのレベル

エムポックス患者等との接触の状況

創傷などを含む粘膜との接触

寝食を共にする家族や同居人

正常な皮膚のみとの接触

1m以内の接触歴3)

1mを超える接触歴

適切なPPEの着用や感染予防策

なし

1)

2)

1)

あり

  1)エムポックス常在国でのげっ歯類との接触を含む
  2)寝具やタオルの共有や、清掃・選択の際の、各定例の体液が付着した寝具・洋服等との接触を含む
  3)接触時間や会話の有無等周辺の環境や接触の状況等個々の状況から感染性を総合的に判断すること

また、国内においてエムポックス疑い例に対して迅速に確定診断のための検査を実施できる体制の整備が進められている。病原体検査のために必要な検体採取、保存方法については、事務連絡(厚生労働省, 2022a)に示されている。

 

 

注意事項

 

参考文献

 

関連項目

 

更新履歴

2023年5月26日 政令改正に伴い、「サル痘」から「エムポックス」に名称変更
第3報 2022/9/13時点
第2報 2022/7/12時点 注)第1報からタイトル変更
 「複数国で報告されているエムポックスについて」
第1報 2022/5/24時点
 「アフリカ大陸以外の複数国で報告されているエムポックスについて」

 

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