エムポックスとは

令和5年5月26日改訂国立感染症研究所 エムポックスは、モンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス、以後エムポックスウイルスと表記)感染による急性発疹性疾患である。感染症法では4類感染症に位置付けられている。主にアフリカ中央部から西部にかけて発生しており、自然宿主はアフリカに生息するげっ歯類が疑われているが、現時点では不明である。稀に流行地外でも、流行地からの渡航者等に発生した事例がある。症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2−4週間で自然に回復するが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もある。

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2024年10月4日

国立感染症研究所

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目次

1.病原体・感染経路などについて  3

Q1_1. 「エムポックス」とは何ですか?  3

Q1_2. エムポックスウイルスとは何ですか?  3

Q1_3. エムポックスはどこの地域で発生していますか?  4

Q1_4. 今回(2024年)の流行は、以前(2022年に)話題になった流行の続きですか?  4

Q1_5. なぜこの感染症は「サル痘」と呼ばれていたのですか?  4

Q1_6. 動物からヒトに感染しますか?  5

Q1_7. ヒトからヒトへはどのように感染しますか?  5

Q1_8. 子どもも感染しますか?  5

2.症状について  6

Q2_1. どのような症状がありますか?  6

Q2_2. 感染した場合、死亡する可能性はありますか?  7

Q2_3. エムポックスを疑う症状があらわれたときは、どうしたらよいですか?  7

3.国内外の状況について  8

Q3_1. 「渡航者の感染であるかどうか」がよく報道されるのはなぜですか?  8

Q3_2. 日本国内の状況は、どうなっていますか?  8

Q3_3. 国立感染症研究所はどのような取り組みを行っていますか?  8

4.予防について  9

Q4_1. 何に気を付けたら良いですか?  9

Q4_2. 同居する家族がエムポックスに感染してしまったら、家庭内で感染を広げないために、何に気を付けたら良いですか?  10

Q4_3. エムポックスにワクチンはありますか?  10

 

Q4_4. 天然痘ワクチンを打った世代であれば、エムポックスの感染は心配要りませんか?  10

Q4_5. 動物を飼育していますが、何か注意することはありますか?  11

Q4_6. 動物園や動物とのふれあいは避けなければいけませんか?  11

5.治療、検査、調査などについて  12

Q5_1. 治療方法はありますか?  12

Q5_2. 医療機関を受診して、エムポックスの感染が疑われる場合、どんな検査を受けることになりますか?  12

Q5_3. エムポックスの疑いで医療機関を受診した場合や、入院した場合、費用が掛かりますか?

Q5_4. エムポックスのグループ(クレード)の違いで、検査や治療の仕方は変わりますか?

 

アフリカ大陸におけるクレードI によるエムポックスの流行について(第2報)

2024年8月23日時点

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、エムポックスが世界的に流行し、2022年7月、WHOは国際的な公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern; PHEIC)を宣言した。この流行を起こしたエムポックスウイルス(以下、MPXVという)はクレードIIbが主体であったが、その後感染者は減少し、2023年5月に緊急事態に該当しないとされた。
  • コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo; DRC)では以前よりMPXV クレード Iによるエムポックスの流行が継続しており、2023年に過去最大の感染者数・死亡者数が報告された。クレードIaとクレードIbという2つのサブクレードが流行し、これらの疫学的様相は異なっている。DRC国内では男女間及び同性間での性的接触、家庭内感染により感染が拡大していると報告されている。
  • 2024年7月にDRCに隣接するウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、近隣のケニアでMPXV クレード Ibの感染事例が初めて報告された。スウェーデンでも、アフリカ外で2023年以降では初めてMPXVクレードIのDRCからの輸入症例と考えられる事例が検出され、アジアにおいても同様の事例がタイで検出されるなど、DRC国内と周辺国における感染拡大が懸念される状況にある。
  • MPXV クレード Iの感染がDRCおよびその周辺国でひろがっていることから、アフリカ地域での感染拡大のリスクは高いと考えられ、発生国への渡航者で散発的に感染者が発生する可能性がある。一方で、アフリカ地域を超えて世界的に拡大する可能性は引き続き低いと考えられ、現時点で日本国内に輸入される可能性は低いと考えられる。流行国への渡航者は、性別や性的指向に関わらず、現地でのリスク行動を避けることが求められる。また、MPXV クレード IはMPXV クレード II よりも重症化するリスクが高い可能性が指摘されており、診断、治療体制の整備や疫学調査といったエムポックス対策の継続が必要である。

 

複数国で報告されているエムポックスについて
(第7報)

2024年3月21日時点

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない症例が報告され、2022年1月1日以降、2024年1月31日までに世界で93,000例以上の症例と179例の死亡例が報告された。欧米を中心とした流行はピークを越えたが、世界的に報告は継続している。2023年3月以降は東アジア、東南アジアからの報告が増加し、2023年8月をピークに減少しているものの、報告は継続している。
  • コンゴ民主共和国では今回の流行以前よりエムポックスが流行しており、2023年に過去最大の感染者数が報告されている。 同国では以前から、今回の世界的流行で検出されているクレードIIbのエムポックスウイルスではなく、クレードIのエムポックスウイルスが検出されている。
  • エムポックスは小児、女性の感染例の報告もあり、誰でも感染するリスクのある疾患ではあるが、2022年5月以降常在国外で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; men who have sex with men)が多く含まれていることが各国から報告されている。また、エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。
  • エムポックスは、感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播することが知られてきた。今回の流行における一連の報告では、感染者に見られた病変の部位などから、性的接触に伴う伝播が中心となっている可能性が指摘されている。
  • 2024年2月25日現在、日本国内においては240例が報告されている。 当初は本人の海外渡航歴、あるいは海外渡航歴のある者との接触が確認されていたが、2022年38週以降は海外渡航との関連がない症例が主体である。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者は、発疹の出現や体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢エムポックスの患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
  • エムポックスは誰にでも感染するリスクのある感染症である。特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながる。さらに、受診行動を妨げ、感染拡大の抑制を遅らせる原因となる可能性がある。客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

第6報からの変更点

  • 国内外での発生状況の更新

  • クレードIエムポックスウイルスに関する記載の追加

  • 治療薬、ワクチン、臨床症状に関する知見の更新

 

目次

  • 従来のエムポックスについて

  • 国外の状況

  • 国内の状況

  • 国内における対策

  • ワクチンについて

  • 治療薬について

  • 動物におけるエムポックス

 

コンゴ民主共和国におけるクレードI によるエムポックスの流行について

2023年12月22日時点

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降に報告されている世界的なエムポックスの流行ではクレードIIbの エムポックスウイルス(以下、MPXVという) が原因であると報告されているが、コンゴ民主共和国では以前よりMPXV クレード Iによるエムポックスの流行が知られており、2023年は過去最大の感染者数が報告されている。また、同国内で発生した性的接触によるクレードIの流行が報告された。
  • コンゴ民主共和国以外ではMPXV クレード Iの感染事例の報告はない。また、日本国内でも12月13日現在228例のエムポックス症例が探知されているが、MPXV クレード Iの感染症例は探知されていない。
  • 日本国内で使用されているエムポックスのPCR検査は、MPXV クレード Iの検知が可能であり、現在研究が行われている治療薬、ワクチンについても有効性が示唆されている。ただし、特にヒトにおけるエムポックスに関する知見は主に2022年以降のMPXV クレード IIbの世界的流行において蓄積されたものであり、引き続き知見の蓄積が必要である。
  • MPXV クレード Iが世界的に拡大している可能性は低いと考えられ、現時点では、国内に輸入される可能性は低く、引き続き男性間で性交渉を行う者(MSM:Men who have sex with men)の集団以外での感染リスクは低いと考えられる。一方で、MPXV クレード IはMPXV クレード IIよりも重症化するリスクが高い可能性が指摘されており、診断、治療体制の整備や疫学調査といったエムポックス対策の継続が必要である。

 

複数国で報告されているエムポックスについて
(第6報)

2023年11月8日時点

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない症例が報告されており、2022年7月23日に世界保健機関(WHO)事務局長は今回のエムポックスの流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言した。各国における対策により世界的な報告数が減少したことから、2023年5月11日に今回の流行がPHEICに該当しない状態になった旨が宣言された。
  • 2022年1月1日以降、2023年9月30日までに世界で90,000例以上の症例と157例の死亡例が報告された。欧米を中心とした流行はピークを越えたが、世界的に報告は継続しており、特に2023年3月以降東アジア、東南アジアからの報告が増加している。
  • エムポックスは小児、女性の感染例の報告もあり、誰でも感染するリスクのある疾患ではあるが、2022年5月以降常在国外で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; men who have sex with men)が多く含まれていることが各国から報告されている。また、エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。
  • エムポックスは、感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播することが知られてきた。今回の流行における一連の報告では、感染者に見られた病変の部位などから、性的接触に伴う伝播が中心となっている可能性が指摘されている。
  • 2023年10月2日現在、日本国内においては208例が報告されている。 当初は本人の海外渡航歴、あるいは海外渡航歴のある者との接触が確認されていたが、2022年38週以降は海外渡航との関連がない症例が主体である。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者は、発疹の出現や体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢エムポックスの患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
  • エムポックスは誰にでも感染するリスクのある感染症である。特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながる。さらに、受診行動を妨げ、感染拡大の抑制を遅らせる原因となる可能性がある。客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

第5報からの変更点

  • 国内外での発生状況の更新

  • 治療薬、ワクチンに関する知見の更新

  • 国内における対策の更新

 

目次

  • 従来のエムポックスについて

  • 国外の状況

  • 国内の状況

  • 国内における対策

  • ワクチンについて

  • 治療薬について

  • 動物におけるエムポックス

 

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