国立感染症研究所

複数国で報告されているエムポックスについて
(第7報)

2024年3月21日時点

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない症例が報告され、2022年1月1日以降、2024年1月31日までに世界で93,000例以上の症例と179例の死亡例が報告された。欧米を中心とした流行はピークを越えたが、世界的に報告は継続している。2023年3月以降は東アジア、東南アジアからの報告が増加し、2023年8月をピークに減少しているものの、報告は継続している。
  • コンゴ民主共和国では今回の流行以前よりエムポックスが流行しており、2023年に過去最大の感染者数が報告されている。 同国では以前から、今回の世界的流行で検出されているクレードIIbのエムポックスウイルスではなく、クレードIのエムポックスウイルスが検出されている。
  • エムポックスは小児、女性の感染例の報告もあり、誰でも感染するリスクのある疾患ではあるが、2022年5月以降常在国外で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; men who have sex with men)が多く含まれていることが各国から報告されている。また、エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。
  • エムポックスは、感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播することが知られてきた。今回の流行における一連の報告では、感染者に見られた病変の部位などから、性的接触に伴う伝播が中心となっている可能性が指摘されている。
  • 2024年2月25日現在、日本国内においては240例が報告されている。 当初は本人の海外渡航歴、あるいは海外渡航歴のある者との接触が確認されていたが、2022年38週以降は海外渡航との関連がない症例が主体である。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者は、発疹の出現や体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢エムポックスの患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
  • エムポックスは誰にでも感染するリスクのある感染症である。特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながる。さらに、受診行動を妨げ、感染拡大の抑制を遅らせる原因となる可能性がある。客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

第6報からの変更点

  • 国内外での発生状況の更新

  • クレードIエムポックスウイルスに関する記載の追加

  • 治療薬、ワクチン、臨床症状に関する知見の更新

 

目次

  • 従来のエムポックスについて

  • 国外の状況

  • 国内の状況

  • 国内における対策

  • ワクチンについて

  • 治療薬について

  • 動物におけるエムポックス

 

コンゴ民主共和国におけるクレードI によるエムポックスの流行について

2023年12月22日時点

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降に報告されている世界的なエムポックスの流行ではクレードIIbの エムポックスウイルス(以下、MPXVという) が原因であると報告されているが、コンゴ民主共和国では以前よりMPXV クレード Iによるエムポックスの流行が知られており、2023年は過去最大の感染者数が報告されている。また、同国内で発生した性的接触によるクレードIの流行が報告された。
  • コンゴ民主共和国以外ではMPXV クレード Iの感染事例の報告はない。また、日本国内でも12月13日現在228例のエムポックス症例が探知されているが、MPXV クレード Iの感染症例は探知されていない。
  • 日本国内で使用されているエムポックスのPCR検査は、MPXV クレード Iの検知が可能であり、現在研究が行われている治療薬、ワクチンについても有効性が示唆されている。ただし、特にヒトにおけるエムポックスに関する知見は主に2022年以降のMPXV クレード IIbの世界的流行において蓄積されたものであり、引き続き知見の蓄積が必要である。
  • MPXV クレード Iが世界的に拡大している可能性は低いと考えられ、現時点では、国内に輸入される可能性は低く、引き続き男性間で性交渉を行う者(MSM:Men who have sex with men)の集団以外での感染リスクは低いと考えられる。一方で、MPXV クレード IはMPXV クレード IIよりも重症化するリスクが高い可能性が指摘されており、診断、治療体制の整備や疫学調査といったエムポックス対策の継続が必要である。

 

複数国で報告されているエムポックスについて
(第6報)

2023年11月8日時点

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない症例が報告されており、2022年7月23日に世界保健機関(WHO)事務局長は今回のエムポックスの流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言した。各国における対策により世界的な報告数が減少したことから、2023年5月11日に今回の流行がPHEICに該当しない状態になった旨が宣言された。
  • 2022年1月1日以降、2023年9月30日までに世界で90,000例以上の症例と157例の死亡例が報告された。欧米を中心とした流行はピークを越えたが、世界的に報告は継続しており、特に2023年3月以降東アジア、東南アジアからの報告が増加している。
  • エムポックスは小児、女性の感染例の報告もあり、誰でも感染するリスクのある疾患ではあるが、2022年5月以降常在国外で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; men who have sex with men)が多く含まれていることが各国から報告されている。また、エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。
  • エムポックスは、感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播することが知られてきた。今回の流行における一連の報告では、感染者に見られた病変の部位などから、性的接触に伴う伝播が中心となっている可能性が指摘されている。
  • 2023年10月2日現在、日本国内においては208例が報告されている。 当初は本人の海外渡航歴、あるいは海外渡航歴のある者との接触が確認されていたが、2022年38週以降は海外渡航との関連がない症例が主体である。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者は、発疹の出現や体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢エムポックスの患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
  • エムポックスは誰にでも感染するリスクのある感染症である。特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながる。さらに、受診行動を妨げ、感染拡大の抑制を遅らせる原因となる可能性がある。客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

第5報からの変更点

  • 国内外での発生状況の更新

  • 治療薬、ワクチンに関する知見の更新

  • 国内における対策の更新

 

目次

  • 従来のエムポックスについて

  • 国外の状況

  • 国内の状況

  • 国内における対策

  • ワクチンについて

  • 治療薬について

  • 動物におけるエムポックス

 

 

IASR-logo

エムポックス 2023年現在

(IASR Vol. 44 p83-84: 2023年6月号)
 

エムポックス(下記脚注参照)は, オルソポックスウイルス属に属するモンキーポックスウイルス(別名エムポックスウイルス: MPXV)の感染によって起こる感染症で, 感染症法上の4類感染症に指定されている。MPXVは主に感染動物や, 感染患者の血液・体液・皮膚病変との接触により伝播することが知られてきた。MPXVの自然宿主は現在も明らかになっていないが, アフリカの熱帯雨林に生息するげっ歯類が自然宿主であり, サルなどの哺乳類は偶発的に発生する宿主である可能性が高い。流行はアフリカ地域でみられてきたが, アフリカ地域以外の輸入感染事例としてヒト集団におけるアウトブレイクが発生したのは2003年の米国での事例が初めてである。この事例では, ガーナから輸入されたげっ歯類に感染していたMPXVがプレーリードッグに伝播し, そのプレーリードッグとの接触が原因とされ, ヒトからヒトへの伝播は確認されていない。他にもナイジェリア国内で動物から感染したと思われる複数の感染者が, イスラエル, 英国, シンガポール, 米国を訪問し, そこで輸入症例として確認された事例がある。これらの事例でもヒトからヒトへの伝播は院内感染1例, 家族間感染2例にとどまっていた(本号3ページ)。

複数国で報告されているエムポックスについて
(第5報)

2023年5月10日時点
2023年5月26日一部改訂

国立感染症研究所

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概要

  • 2022年5月以降、欧米を中心に、これまでエムポックスの流行が報告されてきたアフリカ大陸の国々(以下、常在国)への渡航歴のない症例が報告されており、7月23日に世界保健機関(WHO)事務局長は今回のエムポックスの流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言した。2022年1月1日以降、2023年5月2日までに世界で87,300例以上の症例が報告されている。
  • エムポックスは小児、女性の感染例の報告もあり、誰でも感染するリスクのある疾患ではあるが、2022年5月以降常在国外で報告されている症例の多くは男性であり、男性間で性交渉を行う者(MSM; men who have sex with men)が多く含まれていることが各国から報告されている。
  • エムポックスは、感染者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、感染者が使用した寝具等の媒介物(fomite)により伝播することが知られてきた。今回の流行における一連の報告では、感染者に見られた病変の部位などから、性的接触に伴う伝播が中心となっている可能性が指摘されている。
  • エムポックスは多くは自然軽快するが、小児や妊婦、免疫不全者で重症となる場合がある。2022年1月1日以降、2023年5月2日までに、全世界で死亡例が130例報告されている。
  • 2023年5月2日現在、日本国内においては129例が探知されている。 当初は海外渡航歴や海外渡航歴のある者との接触が確認されていたが、2022年38週以降は海外渡航歴がない症例が主体である。
  • WHOは2022年11月28日に、“monkeypox”としていた疾患の名称について、1年間の移行期間を経たうえで“mpox”へ変更することを決定した。2023年2月17日の厚生科学審議会感染症部会において、名称を「エムポックス」とする方針が了承され、政令改正を経て「エムポックス」に変更された(2023年5月26日公布)。これに伴い、本文書においても2023年5月26日に「エムポックス」と表記の変更を行った。
  • エムポックスに類似する発疹等の症状がある場合は速やかに医療機関に相談することが望ましい。特に次のような者は、発疹の出現や体調に注意を払うことが望ましい。
     ➢エムポックスの患者または疑い例の者との接触のあった者
     ➢複数または不特定多数との性的接触があった者
    なお、常在国外で報告されている症例については、皮疹の特徴や症状の経過に、これまでに知られているエムポックスの症状の特徴とは異なる所見があることが報告されており、注意が必要である。
  • エムポックスは誰にでも感染するリスクのある感染症である。特定の集団や感染者、感染の疑いのある者等に対する差別や偏見は、人権の侵害につながる。さらに、受診行動を妨げ、感染拡大の抑制を遅らせる原因となる可能性がある。客観的な情報に基づき、先入観を排した判断と行動がなされるべきである。

 

第4報からの変更点

  • 「サル痘」から「エムポックス」への表記の変更
  • 国内外での発生状況の更新

  • 治療薬、ワクチンに関する知見の更新

 

目次

  • 従来のエムポックスについて
  • 国外の状況
  • 国内の状況
  • 国内における対策
  • ワクチンについて
  • 治療薬について
  • 動物におけるエムポックス

 

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