国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2023年2月3日現在
(掲載日:2023年6月19日)

淋菌感染症Neisseria gonorrhoeaeを起因菌とする感染症で、男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎を主に起こす。淋菌感染症は、感染症法の5類定点把握対象疾患で、地方自治体が定めた性感染症定点医療機関から感染症発生動向調査に報告されている。性感染症定点医療機関数は2007年以降1000弱でほぼ横ばいである。性感染症定点医療機関では医師が「症状や所見から淋菌感染症を疑い、定められた検査方法により診断した」症例を月毎に集計し、淋菌感染症として報告している。定められた検査方法には、尿道及び性器から採取した材料、眼分泌物及び咽頭拭い液でのN. gonorrhoeaeの検出又はN. gonorrhoeaeの抗原か遺伝子の検出が含まれる。

感染症発生動向調査における淋菌感染症の定点当たり報告数は、2002-2003年をピークに減少し、2016年以降はほぼ横ばいであったが、2020年以降、男女とも増加してきていた(図1)。

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5歳毎の年齢階級別定点当たり報告数は、男性では2017年以降20代前半が最も多かった(図2)。また、多くの年齢階級で2011年以降横ばいから減少傾向であったが、2018年から20代で、2020年から25-34歳で増加を認め始め、2021年には全ての年齢階級で増加に転じた。

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女性の年齢階級別定点当たり報告数は2010年以降、20代前半が最も多かった(図3)。また、多くの年齢階級で横ばいから減少傾向であったが、2017年から20代前半で、2021年から全ての年齢階級で増加してきていた。

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国内では若年人口が減少してきていることから、若年者における淋菌感染症の罹患率は、より高齢の人達に比べ、更に増加してきている可能性があることに注意が必要である。

若年者で淋菌感染症が増加してきていることを深刻に捉え、コンドームの適切な使用を含む性教育の推進(特に若年者)、医療機関への淋菌感染症報告数増加の周知、医療機関において診断された患者への安全なセックスの啓発やパートナーの診断治療1の推進が重要である。

 

参考
  1. 日本性感染症学会「性感染症診断・治療ガイドライン2020」

 


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