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複数国で報告されている小児の急性肝炎について
(第5報)

2023年4月20日

国立感染症研究所

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状況の評価

 

 

国内症例の概要

厚生労働省(および国立感染症研究所)の調査における暫定症例定義は以下の通りである。(令和4年4月27日付厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡「欧州及び米国における小児の原因不明の急性肝炎の発生について(協力依頼)」、5月13日一部改訂)

2021年10月1日以降に診断された原因不明の肝炎を呈する入院例のうち、以下の①、②、③のいずれかを満たすもの:

 

①確定例 現時点ではなし
②可能性例  

アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)又はアラニントランスアミナ
ーゼ(ALT)が500 IU/Lを超える急性肝炎を呈した16歳以下の小児
のうちA型~E型肝炎ウイルスの関与が否定されている者

③疫学的
  関連例 
②の濃厚接触者である任意の年齢の急性肝炎を呈する者のうち、A型
~E型肝炎ウイルスの関与が否定されている者

 

上記の暫定症例定義を満たす可能性例が、国内で162例報告されている(表.)。

 

表. 暫定症例定義に該当する国内の入院症例の発生状況(2023年3月16日10時時点)

可能性例数

うちSARS-CoV-2

PCR検査陽性数

うちアデノウイルス

PCR検査陽性数

162

12

17

 

国内症例の詳細な疫学情報については「国内における小児の原因不明の急性肝炎について(第3報)」を参照。

 

 

国内の状況

 

国内症例の詳細な疫学情報については「国内における小児の原因不明の急性肝炎について(第3報)」を参照。 

 

なお、学会等の医師ネットワークや、小児肝移植を行う医療機関においても、小児の重症肝炎や移植例が増えているという報告は現在のところ確認されていない。

 

 

国外の状況(2023年4月20日時点)

 

用語解説

アデノウイルス:
アデノウイルス科マストアデノウイルス属に属するヒトアデノウイルス(Human mastadenovirus)は、エンベロープを持たない2本鎖DNAウイルスであり、 物理化学的に比較的安定している。現在A-Gの7種に分類され、100を超える型が存在している。アデノウイルスは、急性上気道炎などの呼吸器疾患や、流行性角結膜炎 (epidemic keratoconjunctivitis, EKC)などの眼疾患、咽頭炎や結膜炎を併発する咽頭結膜熱(pharyngoconjunctival fever, PCF)、感染性胃腸炎などの消化器疾患を起こす。また、出血性膀胱炎、尿道炎などの泌尿器疾患、さらに肝炎なども起こす。アデノウイルスの種によって流行状況や炎症反応が異なる(Nakamura et.al, 2018)。
詳細は特集記事(IASR 42(4), 2021【特集】アデノウイルス感染症2008~2020年)を参照。

 

アデノ随伴ウイルス:
パルボウイルス科ディペンドウイルス属に属するアデノウイルス随伴ウイルス(adenovirus associated virus: AAV)は、エンベロープを持たない1本鎖DNAウイルスであり、物理化学的に比較的安定している。これまでに13の血清型が知られている。アデノウイルス随伴ウイルスは、アデノウイルスの精製において混在していたことで発見され、アデノウイルスなど他のウイルスの共感染により再生産されると考えられてきたが、持続感染をして一定のストレス下において再生産能があることが判明している。ヒトにおいてAAVの抗体保有率は高いものの、ヒトの疾患とは結び付いていない (Berns & Giraud, 1996)。

 

   参考文献

 

謝辞

当該事例の調査報告、及び日頃より感染症発生動向調査にご参加、ご協力をいただいている全国の医療機関、保健所、自治体本庁、そして地方衛生研究所の関係各位に心より感謝申し上げます。

 

添付資料

 

関連項目

 

更新履歴

第5報 2023/4/20時点

第4報 2022/7/04時点

第3報 2022/5/27時点

第2報 2022/5/10時点 注)第1報からタイトル変更

「複数国で報告されている小児の急性肝炎について」

第1報 2022/4/25時点

「欧米での小児重症急性肝炎の発生について」  

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