Kohei Kondo, Mitsuoki Kawano, Motoyuki Sugai
mSphere
doi: 10.1128/mSphere.00452-21
薬剤耐性遺伝子や病原性遺伝子がプラスミドによって水平伝播することはよく知られているが、プロファージがそのような機能を担うかについての包括的な研究はほとんど存在しなかった。
我々は、病院内の薬剤耐性菌として問題となる7種の細菌のゲノム配列をNCBIから収集し、プロファージ様エレメント配列領域とその周辺に存在する薬剤耐性遺伝子および病原性遺伝子の分布を調べたところ、アミノグリコシドとβ-ラクタムの耐性遺伝子が比較的多く検出された。さらに、グラム陰性菌においてプロファージとインテグロンの隣接した配列が薬剤耐性遺伝子を共有する構造を見出した。
本論文は、米国微生物学会の2023年 Top-Cited Authorに選出された。
本研究は,独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症研究プログラム」(助成番号:20fk0108132j0001 and 21fk0108604j0001)の支援を受けて実施された。
Keigo Abe, Nobuo Koizumi, Shuichi Nakamura
Nature Communications 14: 7703, 2023.
病原微生物の細胞上や組織内での動態を解析するためには,微生物に蛍光マーカーを付けて細胞と区別する手法が一般的ですが,蛍光物質による生理機能阻害の可能性があり,使える微生物種は限られます.本研究では,腎臓細胞上の細菌(レプトスピラ)の動きを,蛍光標識を使うことなく,機械学習で自動追跡する手法を開発しました(図Ⅰ)(https://youtu.be/HnGkaJcm_AU).これにより,保菌動物であるラットの腎臓細胞に感染したレプトスピラの多くは細胞への付着性が高い一方でクロウリング運動性が低く,重症化しやすい犬の腎臓細胞に感染したレプトスピラは付着性が低い一方でクロウリング運動性が高い傾向にあり,レプトスピラの付着性とクロウリング運動性が逆相関の関係にあることがわかりました.
本研究は東北大学と感染研の共同で,科研費(JP19K07571, JP21H02727, JP22K07062)およびAIEの助成により行われました.
ISO/IEC 17025認定とは、ISO/IEC 17025「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」の国際規格に基づいて認定機関が審査を行い、試験所が当該基準を満たす能力を有することを認定するものです。
当所は、医薬品医療機器法施行規則で生物学的製剤の唯一の国家検定機関として指定されており、我が国の生物学的製剤(ワクチン、血液製剤など)の品質管理を一手に担っています。妥当な試験結果を生み出す能力があることを第三者が認定するISO/IEC17025の取得は、日本の生物学的製剤の品質を保証するために非常に重要と考えられます。国際的にも、生物学的製剤の品質管理を行う機関はISO/IEC17025認定を取得することが強く推奨されています。
今般、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)にISO/IEC17025認定審査を依頼し、2段階の審査を経て2023年9月19日に認定を取得しました。生物学的製剤の国家検定業務を遂行するに当たり、今後も国際基準を満たす信頼性の高い技術力及び品質マネジメントシステムを維持し、国民の皆様に安全で有効なワクチンや血液製剤を供給していく所存です。
Kouichi Kitamura, Minami Kikuchi Ueno, Hiromu Yoshida
Microbiology Spectrum, e00456-23, 2023
感染者のくしゃみ等で排出されテーブルなど物体表面に付着した新型コロナウイルスは、感染性が失われたあともウイルスRNAとして長期に残ることが報告されています。本研究では、物体表面上のウイルスRNAをポータブル機器のみで検出する手法の検討を行いました。その結果、疑似ウイルス拭き取り検体溶液をモバイル型リアルタイムPCR機でそのまま検査する直接検出法と、ポータブル実験機器によりRNA抽出を行う高感度検出法を開発しました(下図)。これらのオンサイトPCR検査技術は、検査ラボへのアクセスが困難な施設などでのリスク評価および早期感染対策への活用が期待できます。
本研究は、厚労省科研費、AMEDの研究支援を受け実施しました。
Noriko Kitamura, Kanako Otani, Ryo Kinoshita, Fangyu Yan, Yu Takizawa, Kohei Fukushima, Daisuke Yoneoka, Motoi Suzuki, Taro Kamigaki
Lancet Regional Health – Western Pacific
DOI: 10.1016/j.lanwpc.2023.100911
SARS-CoV-2のオミクロン変異株は、免疫逃避能を持つことが知られる。ワクチン及び既感染から得られる免疫の理解は、効果的な感染制御戦略につながる。2022年9月25日までにHER-SYSに登録された全症例を対象にBA.5再感染に対する先行感染の予防効果を症例人口対照研究を用いて推定した。再感染予防効果は、武漢株で46%、アルファ株で35%、デルタ株で41%、BA.1/BA.2亜型で74%であった。さらに、年齢、性別、先行感染の変異株、および最終ワクチン接種からの期間で調整したコックス比例ハザードモデルにより推定されたワクチン接種の再感染予防効果は、1回接種と比較して、2回、3回、4回接種でそれぞれ7%、33%、66%であった。本研究により、過去に感染した集団における将来の再感染予防には、効果が持続する期間内でのワクチン追加接種が推奨されうることが示唆された。
Keisuke Tonouchi, Yu Adachi, Tateki Suzuki, Daisuke Kuroda, Ayae Nishiyama, Kohei Yumoto, Haruko Takeyama, Tadaki Suzuki, Takao Hashiguchi, Yoshimasa Takahashi
PLoS Pathogens, 2023 Aug; 19(8): e1011554. | doi; 10.1371/journal.ppat.1011554
インフルエンザウイルスの抗原変異に対応可能な交差防御抗体に注目が集まり、その誘導を目的とした新規ワクチンの開発が世界的に進められています。しかし、A型インフルエンザには遺伝子系統的に大きく異なる2つのグループの株が存在しており、両グループに有効な交差防御抗体を誘導できるワクチンの実現には至っておりません。
当センターでは、先行研究により複数のヒト交差抗体の単離に成功しており、本研究では2つのグループを跨いだ交差防御能を示す優れた抗体が存在することを見出しました。抗体-抗原複合体の結合様式について構造解析を行った結果、ウイルス感染時に生じる特殊なヘマグルチニン抗原部位を標的とした抗体であることを明らかにしました。
本研究で見出した新しい抗体と抗原部位に関する情報は、今後、抗原変異に対応可能な新しいワクチンの開発に活用されます。