国立感染症研究所

bac 2024 01
The importance of meropenem resistance, rather than imipenem resistance, in defining carbapenem‑resistant Enterobacterales for public health surveillance: an analysis of national population‑based surveillance.

Chiaki Ikenoue, Mari Matsui, Yuba Inamine, Daisuke Yoneoka, Motoyuki Sugai, Satowa Suzuki and the Antimicrobial-Resistant Bacteria Research Group of Public Health Institutes

BMC Infectious Diseases (2024) 24:209

感染症発生動向調査におけるカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症の届出基準の妥当性を検証するため、届出情報および分離株を解析した。

届出315例のうち、146株(46.3%)が「メロペネム基準」:メロペネムMIC≥2 mg/Lを満たし、169株(53.7%)は「イミペネム基準」:イミペネムMIC≥2 mg/LかつセフメタゾールMIC≥64 mg/L のみを満たしていた。
「イミペネム基準」のみを満たす株はすべてカルバペネマーゼ遺伝子陰性、多剤耐性率1.2%で、「メロペネム基準」を満たす株は67.8%がカルバペネマーゼ遺伝子陽性、多剤耐性率65.8%であった。

以上の結果から公衆衛生学的に問題となるカルバペネマーゼ産生株による感染症の届出に重点を置く場合は届出基準は「メロペネム基準」単独とするのが妥当と考えられた。

本研究は日本医療研究開発機構(AMED) 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 薬剤耐性菌のサーベイランス強化および薬剤耐性菌の総合的な対策に資する研究(研究代表者 菅井基行)により実施された。

Generation of JC Polyoma Pseudovirus for High‐Throughput Measurement of Neutralizing Antibodies

Mami Matsuda, Tian‐Cheng Li, Akira Nakanishi, Kazuo Nakamichi, Makoto Saito, Tadaki Suzuki, Tomokazu Matsuura, Masamichi Muramatsu, Tetsuro Suzuki, Yoshiharu Miura, and Ryosuke Suzuki

Diagnostics 2024, 14(3), 311;

進行性多巣性白質脳症(PML)は,主に細胞性免疫の低下に伴ってJCポリオーマウイルス(JCPyV)が脳のオリゴデンドロサイトで増殖,脱髄を引き起こす予後不良の中枢神経疾患である.近年ナタリズマブ等の多発性硬化症(MS)の治療薬に関連したPMLが問題となっている.JCPyV抗体価はナタリズマブ関連PMLの発症リスクの指標として用いられるが,抗体価測定は同薬剤が使用,または使用が検討されている患者の国外での測定のみが可能である.本研究ではJCPyV様中空粒子を用いたELISAおよび1回感染型JCPyVを用いた中和試験系を構築し,MS等の神経疾患患者の血清中の抗JCPyV抗体レベルを測定し,その有用性を示した.

本研究は,感染研ウイルス第二部,第一部,病理部,慈恵医大,駒込病院,浜松医科大との共同研究で,厚労省,文科省,AMEDの研究支援を受け実施した.

Structural basis of hepatitis B virus receptor binding

Asami J#, Park JH#, Nomura Y#, Kobayashi C#, Mifune J, Ishimoto N, Uemura T, Liu K, Sato Y, Zhang Z, Muramatsu M, Wakita T, Drew D, Iwata S, Shimizu T, Watashi K*, Park SY*, Nomura N*, Ohto U*

Nature Structural & Molecular Biology (2024)
doi: https://doi.org/ 10.1038/s41594-023-01191-5

B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓にのみ感染するという特徴は、胆汁酸取り込み輸送体NTCP/SLC10A1を受容体に利用するためであるが、その高い親和性と特異性が何に起因するかは明らかでなかった。本研究ではHBV表面抗原の受容体結合領域preS1ペプチドとNTCPの結合立体構造をクライオ電子顕微鏡解析により解明した。preS1は外向き型9回膜貫通NTCPタンパク質とのみ複合体を形成していた。preS1は極めて複雑に折り畳まれてNTCPと結合し、そのN末端側の多重ループ構造で胆汁酸トンネル内部と、よりC末端領域でNTCPの細胞外表面と這うように接触していた。特にpreS1のN末端領域、NTCPの胆汁酸トンネルを構成する第8膜貫通ヘリックスが複合体形成に重要であることが示された。これまで長らく謎とされていたHBVと肝臓表面受容体が接触する瞬間の機能構造が初めて明らかとなり、これはHBVが感染宿主を選択する仕組みや細胞侵入機構の解明、新たな抗ウイルス薬の開発に有用な知見となる。

Infectious virus shedding duration reflects secretory IgA antibody response latency after SARS-CoV-2 infection

Sho Miyamoto, Takara Nishiyama, Akira Ueno, Hyeongki Park, Takayuki Kanno, Naotoshi Nakamura, Seiya Ozono, Kazuyuki Aihara, Kenichiro Takahashi, Yuuki Tsuchihashi, Masahiro Ishikane, Takeshi Arashiro, Shinji Saito, Akira Ainai, Yuichiro Hirata, Shun Iida, Harutaka Katano, Minoru Tobiume, Kenzo Tokunaga, Tsuguto Fujimoto, Michiyo Suzuki, Maki Nagashima, Hidenori Nakagawa, Masashi Narita, Yasuyuki Kato, Hidetoshi Igari, Kaori Fujita, Tatsuo Kato, Kazutoshi Hiyama, Keisuke Shindou, Takuya Adachi, Kazuaki Fukushima, Fukumi Nakamura-Uchiyama, Ryota Hase, Yukihiro Yoshimura, Masaya Yamato, Yasuhiro Nozaki, Norio Ohmagari, Motoi Suzuki, Tomoya Saito, Shingo Iwami, Tadaki Suzuki.

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2023 Dec 22; 120 (52) e2314808120.

SARS-CoV-2オミクロン感染者の臨床検体の解析から、粘膜表面における分泌型IgA抗体の誘導が早い症例ほど感染性ウイルス排出期間が短くなる傾向を明らかにしました。加えて、分泌型IgA抗体は鼻粘膜検体において他の抗体(IgG抗体やIgA抗体)よりもウイルス量や感染性を強く抑制する傾向も見られました。なお、新型コロナウイルスへの感染歴やワクチン接種歴がある感染者ほど分泌型IgA抗体の誘導時間が短くなることも明らかになりました。本研究は、呼吸器ウイルス感染症において分泌型粘膜抗体が感染性ウイルス排出を抑制する可能性をヒトで示した世界で初めての報告となります。

本研究成果により、粘膜免疫を標的とした次世代のワクチン開発が加速され、将来、呼吸器系ウイルスによるヒト間伝播を予防し、パンデミックを制御するための新たな戦略を与えることが期待されます。

epi 2024 01
Antimicrobial use and combination of resistance phenotypes in bacteraemic Escherichia coli in primary care: a study based on Japanese national data in 2018

Yumiko HOSAKA, Yuichi MURAKI, Toshiki KAJIHARA, Sayoko KAWAKAMI, Aki HIRABAYASHI, Masahiro SHIMOJIMA, Hiroki OHGE, Motoyuki SUGAI, Koji YAHARA

Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 2023;, dkad379,

プライマリケア(診療所)における抗菌薬使用は薬剤耐性菌出現の寄与因子である。本研究は、2018年の全国の診療所データと厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)データ、診療報酬に基づく抗菌薬使用データを利用し、抗菌薬使用と血液から大腸菌が分離された患者の中で複数の抗菌薬に耐性を示す菌の割合を診療所と病院の外来診療で比較した。マクロライド系抗菌薬を除き、経口第三世代セファロスポリン系とフルオロキノロン系の抗菌薬使用は外来抗菌薬の中で最も多く、診療所は病院の少なくとも3倍以上であり、2剤に耐性の大腸菌の割合は、診療所が病院と比べて5.6%高かった事から、診療所の抗菌薬使用による薬剤耐性への影響が示唆された。

本研究は,厚労科研補助金(課題番号:22HA1002)の支援を受けて実施された。

genome 2024 01
Distribution of antimicrobial resistance and virulence genes within the prophage-associated regions in nosocomial pathogens

Kohei Kondo, Mitsuoki Kawano, Motoyuki Sugai

mSphere
doi: 10.1128/mSphere.00452-21

薬剤耐性遺伝子や病原性遺伝子がプラスミドによって水平伝播することはよく知られているが、プロファージがそのような機能を担うかについての包括的な研究はほとんど存在しなかった。

我々は、病院内の薬剤耐性菌として問題となる7種の細菌のゲノム配列をNCBIから収集し、プロファージ様エレメント配列領域とその周辺に存在する薬剤耐性遺伝子および病原性遺伝子の分布を調べたところ、アミノグリコシドとβ-ラクタムの耐性遺伝子が比較的多く検出された。さらに、グラム陰性菌においてプロファージとインテグロンの隣接した配列が薬剤耐性遺伝子を共有する構造を見出した。

本論文は、米国微生物学会の2023年 Top-Cited Authorに選出された。

本研究は,独立行政法人日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症研究プログラム」(助成番号:20fk0108132j0001 and 21fk0108604j0001)の支援を受けて実施された。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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