ジカウイルス感染症とは

 ヤブカ(Aedes)属の蚊によって媒介されるジカウイルスによる感染症である。ジカウイルスはデングウイルスと同じフラビウイルス科に属し、症状はデング熱に類似するが、それより軽い。

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abroad b ico2016年8月10日更新
国立感染症研究所albopictus06

概要

  • albopictus062007 年のミクロネシア連邦ヤップ島での流行以降、2016年6月9日時点で、ジカウイルス病は、中南米やカリブ海領域で流行が持続し、アジアや南太平洋地域へ の地理的拡大も見せている。日本でも10例のジカウイルス病の症例が確認されており、いずれも流行地への渡航歴がある輸入症例である。
  • 流行地における研究のレビューにより、妊婦のジカウイルス感染が母子感染による小頭症等の先天異常の原因になると結論付けられた。また、疫学研究によりジカウイルス感染とギラン・バレー症候群との関連も明らかにされた。
  • 日本では、ジカウイルス感染症は、感染症法上の4類感染症と検疫感染症に追加されている。また、「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」(第3版)が公表され、診療体制の整備が進められている。
  • 妊婦及び妊娠の可能性がある人の流行地への渡航は控えるとともに、流行地への渡航者に対しては、ジカウイルス感染症の情報提供及び防蚊対策の徹底を、より一層周知することが重要である。
    性行為感染及び母子感染のリスクを考慮し、
    1. 流行地に滞在中は、症状の有無に関わらず、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること
    2. 流行地から入国(帰国を含む)した男女は、ジカウイルス病の発症の有無に関わらず、最低8週間(パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中)は性行為を行う場合にはコンドームを使用するか性行為を控えること

      が推奨される。

  • 米 国本土(フロリダ州マイアミ・デイド郡及びブロワード郡)で、初めて蚊媒介経路が疑われる症例が報告された。米国CDCは、マイアミ・デイド郡の一部の地区の住人と旅行者に対して予防措置に関する勧告を発表した。現在、米国CDCとフロリダ保健局による疫学調査が進められている。

平成28年7月14日
国立感染症研究所

ジカウイルス感染症のリスクアセスメント 第7版 2016年3月11日に蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第2版)の発刊後、ジカウイルス感染症に関する知見が多数集積されている。このため、本診療ガイドライン(第3版)は、ジカウイルス感染症に関する知見のアップデートと診断基準の改訂を主たる目的として作成された。

主な改訂ポイントは、以下のとおりである。

  1. ジカウイルス感染症に関する新たな知見として、ジカウイルス病の臨床像のほか、ジカウイルスと小頭症等の先天異常との因果関係等に関する情報が追加された。

  2. ジカウイルス病の診断基準、ジカウイルス感染症の検査対象となりうる妊婦の要件に、性行為歴が新たに追加された。

  3. ジカウイルス感染症の検査対象となる妊婦については、ジカウイルス感染症協力医療機関などの専門医療機関に紹介し、母子感染症を専門とし、適切なマネジメントが可能な医療機関における評価を経て、必要なジカウイルス検査を国立感染症研究所で実施することとした。

  4. デング熱診断のための検査キットとして、新たに「デングウイルス抗原及び抗体 同時測定定性〈デングウイルスIgM抗体・NS1抗原〉」(イムノクロマト法)が保険収載された。

蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第3版)PDF版のダウンロード

改訂履歴

  • 平成27年9月7日 地方衛生研究所は抗体検査を実施しないことに伴う変更

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平成28年12月14日
国立感染症研究所

ジカウイルス感染症のリスクアセスメント 第7版

2016年7月14日に(第3版)の発刊後、ジカウイルス感染症に関する知見が集積されている。2016年9月6日のWHOの性行為による感染予防に関する暫定ガイダンスと現時点でのエビデンスを考慮し、本診療ガイドライン(第4版)を改訂した。

主な改訂ポイントは以下のとおりである。

l  流行地から帰国した男女は、感染の有無に関わらず、最低6か月間は性行為の際に適切にコンドームを使用するか性行為を控えること

l  流行地から帰国した妊娠を計画しているカップル或いは、女性は、最低6か月間は妊娠の計画を延期すること

l  p26の「ジカウイルス感染症の検査の対象となる妊婦」について

l  p30の新生児の評価について

さらに、WHOが2016年11月18日の第5回緊急委員会において、ジカウイルス感染症とその合併症はもはや「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)」には該当しないとしたことについても記述した。

蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第4版)PDF版のダウンロード

 

2016/12/20  上記PDFについて、以下の3点を修正しました。

(1) p.4 

          ×ヒトスジシマカは2015年時点で、~ 

        ⇒ヒトスジシマカは2016年時点で、~

(2) p.33

          ×2016年10月現在、~不安定となっている可能性場合があるので注意を要する。

       ⇒2016年10月現在、~不安定となっている場合があるので注意を要する。

(3) p.41 「デング熱発生届出」

 ×血清での非構造蛋白(NS1)の検出

⇒○血液(血清又は全血)での非構造蛋白(NS1)の検出

ジカウイルス感染症関連情報 ポータルサイトkumamoto eq

 

このページでは、ジカウイルス感染症関連の記事をまとめています。

 

生労働省検疫所 FORTH(フォース)ホームページより、ジカウイルス感染症関連の記事をピックアップしています。

 

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蚊媒介ウイルス感染症:ジカウイルス感染症・チクングニア熱・デング熱、2011年~2016年6月

(IASR Vol. 37 p. 119-121: 2016年7月号)

蚊媒介ウイルス感染症は感染症法に基づく感染症発生動向調査の4類感染症に指定されている(表1)。本稿で扱うジカウイルス感染症・チクングニア熱・デング熱は急性熱性感染症で, 主な症状は発熱, 発疹, 関節痛等であるが, 症状のみでの鑑別は難しく, また無症候感染例も多い(届出基準:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html)。これら3疾患の大部分は国外感染例(輸入症例)であるが, 2014年に約70年ぶりにデング熱の国内流行が発生した(IASR 36: 33-35, 2015)。

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タイ・サムイ島から帰国後にジカ熱と診断された日本人旅行者の1例

(IASR Vol. 35 p. 243-244: 2014年10月号)

タイ国のサムイ島に渡航した後、ジカ熱(Zika fever)と診断された輸入症例を報告する。なお、今回の症例は本邦3例目のジカ熱症例であり、東南アジアからの初輸入症例である。

 

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フランス領ポリネシア・ボラボラ島帰国後にZika feverと診断された日本人旅行者の2例

(IASR Vol. 35 p. 45-46: 2014年2月号)

 

フランス領ポリネシアのボラボラ島に渡航した後、Zika熱(Zika fever)と診断された輸入症例2例を報告する。今回の2症例は本邦で初めてZika feverと診断された症例である。

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中南米における流行から初めてとなる,国内におけるジカウイルス感染症の発生例

(IASR Vol. 37 p.237-238: 2016年11月号)

ジカウイルス感染症は発熱や発疹などを引き起こす蚊媒介感染症である。わが国において,4類感染症として位置づけて以来初めてとなるジカウイルス感染症患者の発生例を経験したため報告する。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan