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国内におけるCandida aurisの施設内アウトブレイク対応の備え

(IASR Vol. 45 p22-23: 2024年2月号)
 

Candida aurisC. auris)は血流感染症等の侵襲性感染症を起こすこと, 抗真菌薬への耐性が多く認められ, 感染症を起こすと治療が困難であり致命率が高いこと, 施設内感染の発生やその感染制御が困難であること, から国際的に問題となっている真菌である1,2)。近年諸外国において急速な感染例の拡大がみられており, 医療機関のみならず人工呼吸器に対応する介護施設等においてもアウトブレイク事例が複数報告されている3)。本稿では, 今後発生が懸念される施設内アウトブレイクに備えた国内の体制と対応について紹介する。

 

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真菌および真菌症の検査法

(IASR Vol. 45 p23-24: 2024年2月号)
 

真菌症の確定診断は難しく, 臨床現場においては真菌症疑いにとどまってしまうことも少なくない。真菌症の診断基準の1つとして頻用される『改訂European Organization for Research and Treatment of Cancer and the Mycoses Study Group(EORTC/MSG)』criteriaでは, 確定診断に必要な検査項目として, 罹患臓器(臨床検体)から真菌が分離されること, および病理組織学的に特徴的な真菌の所見を確認すること, の2点がまず挙げられている1)。また, 真菌種によっては血清学的診断(クリプトコックス属のグルクロノキシロマンナン抗原検査: 後述)が確定診断の根拠として用いられることや, 病理組織学的に真菌が確認された場合に, パラフィンブロックから作製された切片の遺伝子検査を行うことで菌種同定・確定診断となることも併せて規定されている。これらの確定診断の根拠を基に考えると, 真菌症診断において重要な項目として, A)適切な検体を(罹患臓器から確実に), B)適切な時期に(可能な限り抗真菌薬投与前に), C)無菌的に(環境真菌の混入を最大限防ぐ形で)採取し検査に供すること, の3点が考えられる。真菌症診断に必要な検査のうち, 分離真菌の同定検査や血清学的診断の一部は検査会社などで対応可能なものもあるが, すべての検査にはまだ対応できていないのが現状である。

 

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真菌の薬剤感受性試験

(IASR Vol.45 p24-25: 2024年2月号)
 
はじめに

真菌の薬剤感受性試験は, 真菌症治療において抗真菌薬の選択や投与量を決定するうえで重要な検査の1つである。また近年, 多剤耐性のCandida aurisやアゾール耐性のAspergillus fumigatusなど, 各種抗真菌薬に対して耐性を示す真菌の増加にともない, 薬剤感受性試験の必要性が高まっている。現在, 国内では, 微量液体希釈法およびディスク拡散法, E-testが体外診断薬として認可を受けている。これらの試験法のうち, 国際的に推奨されている微量液体希釈法で試験が実施されることが多い。これまでに真菌の薬剤感受性試験の標準試験法は, 米国のClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)が主導し, 制定されてきた。CLSIに追随しヨーロッパのThe European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing(EUCAST)や日本医真菌学会などが独自の標準試験法を発表している。本稿ではグローバルスタンダードとして, わが国を含めて広く受け入れられているCLSIの標準試験法を中心に解説する。

 

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アスペルギルス症: 薬剤耐性問題の現状と対策

(IASR Vol. 45 p25-26: 2024年2月号)
 

アスペルギルス症は, 環境中に広く存在するAspergillus属の糸状菌が原因となる深在性真菌症の1つである。胞子や分生子の形で空気中に浮遊し, ヒトがこれらを吸入することによって感染が生じる。特に, 侵襲性肺アスペルギルス症は, 免疫不全患者(好中球減少症の患者や造血幹細胞移植を受けた患者など)において発症しやすい。予後は非常に重篤で, 現在利用可能な最も効果的な治療薬を用いても, 依然として高い致命率を有している1)。経口抗真菌薬として国内承認されているのは, アゾール系抗真菌薬であるイトラコナゾール, ボリコナゾール, ポサコナゾール, イサブコナゾールのみである。長期投与が必要な外来治療において重要な役割を果たしており, 耐性化の進行は治療の困難化を招く可能性がある。

 

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国内の抗真菌薬耐性白癬菌について

(IASR Vol. 45 p26-27: 2024年2月号)
 
はじめに

白癬は日常診療でよく遭遇する皮膚疾患であり, 足白癬の国内の有病率は21.6%(患者数は約2,500万人), 爪白癬は10.0%(約1,000万人)と推計されている。Trichophyton rubrumに代表される白癬菌(皮膚糸状菌)が白癬の原因真菌である。治療は抗真菌薬の外用または内服により行われ, アリルアミン系のテルビナフィン(TRBF)やアゾール系抗真菌薬などが使用される。

 

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新規抗真菌薬イサブコナゾールと期待される開発中の抗真菌薬

(IASR Vol. 45 p27-29: 2024年2月号)
 
はじめに

深在性真菌症に対してわが国で使用できる抗真菌薬は作用機序別に4種10薬剤程度にすぎない。多彩な機序の抗菌薬に比較して, その選択肢は限られる。本稿では, 最も新しい抗真菌薬のイサブコナゾール(2023年上市)および, 国内外で開発中の注目される新規抗真菌薬について概説する。

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