2013 年5 月 10 日
邦訳担当 感染症疫学センター
中国の国家衛生・計画生育委員会は世界保健機関(WHO)に対し、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの人感染事例を計131人報告し、台北CDCは1人を報告している。患者は男女の広範囲の年齢層で報告されているが、多くは中高年の男性である。32人が死亡し、その他の患者の大部分は重症者と考えられている。台北CDCから報告された患者1人(最近江蘇省への渡航歴あり)に加え、安徽省、福建省、河南省、湖南省、江蘇省、江西省、山東省、浙江省、北京市、上海市から患者が報告されている。
この文書は、以前のバージョン(4月26日更新版)よりも優先されますので注意してください。新しい情報が入り次第、更新情報が掲載されます。
原文:Frequently Asked Questions on human infection caused by the avian influenza A(H7N9) virus, China
(邦訳:感染研・感染症疫学センター)
インフルエンザA(H7亜型)ウイルスは、通常、鳥の間で循環しているインフルエンザウイルスのグループです。インフルエンザA(H7N9)ウイルスはH7亜型ウイルスのサブグループの一つです。複数のH7亜型ウイルス(H7N2、H7N3およびH7N7)の人への感染が時折発見されてきましたが、H7N9ウイルスの人への感染は中国からの最近のレポートがあるまで報告されていませんでした。
これまでのところ、この感染症を有するほとんどの患者は、重症肺炎を患っていました。症状には、発熱、咳、息切れが含まれます。しかし、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染が原因になるかもしれない疾患の全貌に関する情報は依然として限られています。
新しい症例は毎日報告、集計され、更新されています。症例に関する最新情報の詳細は、Diseases Outbreak News(http://www.who.int/csr/don/en/index.html)を参照することができます。
1996年から2012年まで、インフルエンザH7亜型ウイルス(H7N2、H7N3、およびH7N7)の人への感染は、カナダ、イタリア、メキシコ、オランダ、英国、米国で報告されてきました。これらの感染のほとんどは、家禽におけるアウトブレイクに関連して発生しました。オランダで発生した1例の死亡を除いて、感染は主に結膜炎や軽度の上気道症状でした。今回の事例発生まで、インフルエンザH7亜型ウイルスによる人への感染は中国で報告されていませんでした。
はい。すべての3つのウイルスはインフルエンザウイルスですが、互いに異なっています。H7N9とH5N1は、時には人々に感染する動物のインフルエンザウイルスであると考えられています。H1N1ウイルスは、人に通常感染するものと、動物に通常は感染するものに大別できます。
現時点で、人々がどのように感染するのかは知られていません。確定例のうち何人かは、動物あるいは動物が収容されていた環境との接触がありました。ウイルスは現在、患者が報告されている場所近くの生きた鳥を扱う市場で、ニワトリ、アヒル、及び飼育下で繁殖された(captive-bred)鳩で発見されています。動物から人への感染の可能性、同様に人から人への感染の可能性に対して調査が進められています。
•以下のような時には手を洗いましょう:
食事を用意する前、用意している間、その後。
食べる前。
トイレを使用した後。
動物の世話をしたり、動物の排泄物を処理した後。
手が汚れている時。
家人が病気になりお世話をする時。
手指衛生は、また、(汚染面への接触から)自分自身への感染伝播を予防します。これらは、医療機関においては、患者に対して、および医療従事者や他の人への感染伝播を防ぐことにつながります。
•手が肉眼的に汚れている場合には、石けんと流水で手を洗いましょう。手が肉眼的に汚れていない場合は、石鹸と水で手を洗う、または、アルコール製剤による手指のクリーナーを使用しましょう。
•咳やくしゃみをするときには、医療用マスク、ティッシュペーパー、(服の)袖、または曲げた肘で口と鼻を覆いましょう。その直後に、蓋を閉じることの出来る容器に使用されたティッシュペーパーを捨てましょう。気道分泌物との接触後には、手指衛生を行いましょう。
インフルエンザウイルスはよく調理された食品からは伝染しません。なぜならば、インフルエンザウイルスは通常の過熱調理温度では(食品の全ての部分で70℃に達する、ぐつぐつ煮る、ピンク色の部位がない)で不活化するので、家禽や狩猟鳥を含み、適切に準備され、調理された肉を食することは安全です。
病気の動物や病死した動物を食べてはいけません。
アウトブレイクが発生している地域では、適切に調理が行われ、食事の準備が適切に行われていれば、肉製品は安全に消費することができます。生の肉や、未調理の血液を用いた料理の摂食は、高いリスクとなりますのでお勧め出来ません。
いくつかの証拠が生きた家禽を扱う市場が感染源であることを示していますが、生きた家禽が主な、または唯一の感染源であることが確認出来ているわけではありません。他の動物や環境が感染源であることを除外する十分な証拠があるわけではありません。
ノイラミニダーゼ阻害剤として知られている抗インフルエンザウイルス薬は、インフルエンザを発症して早期に投与されるとき、季節インフルエンザウイルス及びインフルエンザA(H5N1)ウイルス感染に対して有効であることが分かっています。しかし現時点では、インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症を治療するためのこれらの薬物の使用に関する経験は非常に少ない上に、インフルエンザウイルスは、これらの薬剤へ耐性を持つことがあります。
医療従事者が感染症患者に接触することはよくあることです。そのためWHOは、適切な感染防護策・感染管理が一貫して医療現場において用いられ、医療従事者の健康状態を注意深く監視することを勧めます。インフルエンザA(H7N9)感染における疑い例や確定例の診療・看護を行う医療従事者は、標準予防策の実施と同時に、追加の予防措置を用いるべきです(以下を参照してください:http://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/WHO_CDS_EPR_2007_6/en/index.html)。
地域および国の保健当局は、次のような対策を行っています:
・新たな症例の早期発見と検査確定を確実にするために、原因不明の肺炎症例のための強化サーベイランス。
・疑い症例と既知症例との接触者の評価を含めた疫学調査。
・感染源を決定するために、家畜衛生当局との緊密な連携。
人に感染する能力を有するいかなる動物のインフルエンザウイルスは、パンデミックを引き起こす理論上のリスクを有しています。しかし、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスが、実際にパンデミックを引き起こしうるかどうかについては不明です。人への感染がしばしば検出されている動物の他のインフルエンザウイルスが、パンデミックを常に引き起こしているわけではありません。
中国で特定された症例数は非常に少ないです。WHOは、中国への訪問者にも、中国を離れる人々に対しても、旅行措置の適用を助言するものではありません。
いかなる中国製品と現在の症例を結び付ける証拠はありません。WHOは、この時点で貿易に関するいかなる制限が行われることに対しても反対します。
いいえ。彼は台湾へ渡航して三日後に発症しました。
その患者は、他の乗客には感染を起こしてはいないようです。他の確定例における1000人以上の接触者で検査をしたところ、このウイルスが、コミュニティにおいて人から人へのウイルス伝播を示すどのような証拠も認識されてはいません。
WHOは、今回の状況に関して、いかなる旅行制限も推奨していません。WHOは、利用可能な更新情報を随時提供していきます。
このウイルスの出現以来、WHOは加盟国へ情報を提供するために、国際保健規則(IHR)の下で働いています。WHOはまた、リスクアセスメント、更新情報の提供、暫定的なサーベイランスの推奨事項、症例の検査室診断、感染制御、および臨床管理を含めて、世界規模の保健に関する対応を調整するために国際的なパートナーと協力しています。
WHOは加盟国及び国際的な保健に関するパートナーと協同を継続し、更新情報を共有し続けます。
〜臨床像・検査診断・治療・予防投薬〜(2013年4月25日現在)
国立感染症研究所感染症疫学センター
2013年3月31日に中国から鳥インフルエンザA(H7N9)の人への感染例が初めて報告されて以降、中国国内では患者の報告が継続している1, 2)。また、4月24日には、中国江蘇省帰りの患者が台湾において発症、確定例として報告されている3)。4月24日現在、日本国内での鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染者は確認されていないが、今後国内での発生に対する対応を準備する必要がある。
共通の感染源および感染伝播に関するエビデンスは4月21日現在不明である。これまで同一家族内における複数の患者報告の情報も散見されるが、確定患者の接触調査からはヒトからヒトへの感染は確認されていない。人から人への伝播があったとしても非常に限定されていると考えられる4)。
鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染の人における臨床像、可能な検査診断、治療、予防については情報が少ない中で、本稿は、人に対して比較的病原性の高いインフルエンザである可能性を前提に、臨床および公衆衛生の現場で診療や対策に従事する関係者に既知の情報を整理して提供することを目的としてまとめたものであり、新しい知見が得られ次第、適宜更新されることを前提としている。
2013年4月24日
邦文要約:国立感染症研究所感染症疫学センター
2013年4月24日の夕方、中央疾病対策センター(CECC)は、発症前に中国江蘇省蘇州で働いていた台湾市民の53歳男性を、台湾初のH7N9鳥インフルエンザの輸入症例と確定した。患者は台湾に戻った3日後に発症した。鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染は2013年4月24日に確定診断された。患者は現在重篤な状態にあり、陰圧隔離室で治療を受けている。
この文書は、以前のバージョン(4月6日更新版)よりも優先されますので注意してください。新しい情報が入り次第、更新情報が掲載されます。
原文:Frequently Asked Questions on human infection caused by the avian influenza A(H7N9) virus, China
(邦訳:感染研・感染症疫学センター)
インフルエンザA(H7亜型)ウイルスは、通常、鳥の間で循環しているインフルエンザウイルスのグループです。インフルエンザA(H7N9)ウイルスはH7亜型ウイルスのサブグループの一つです。複数のH7亜型ウイルス(H7N2、H7N3およびH7N7)の人への感染が時折発見されてきましたが、H7N9ウイルスの人への感染は中国からの最近のレポートがあるまで報告されていませんでした。
これまでのところ、この感染症を有するほとんどの患者は、重症肺炎を患っていました。症状には、発熱、咳、息切れが含まれます。しかし、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染が原因になるかもしれない疾患の全貌に関する情報は依然として限られています。
新しい症例は毎日報告、集計され、更新されています。症例に関する最新情報の詳細は、Diseases Outbreak News(http://www.who.int/csr/don/en/index.html)を参照することができます。
これまでの人の感染患者における曝露源が分かっていないので、まだこの質問へ答えることは出来ません。しかし、分離されたウイルスの遺伝子解析の結果からは、ウイルスは鳥類の中で進化してきたものの、このウイルスは、他の鳥類のウイルスに比べてより容易に哺乳動物に感染する可能性を示唆しています。
1996年から2012年まで、インフルエンザH7亜型ウイルス(H7N2、H7N3、およびH7N7)の人への感染は、カナダ、イタリア、メキシコ、オランダ、英国、米国で報告されてきました。これらの感染のほとんどは、家禽におけるアウトブレイクに関連して発生しました。オランダで発生した1例の死亡を除いて、感染は主に結膜炎や軽度の上気道症状でした。今回の事例発生まで、インフルエンザH7亜型ウイルスによる人への感染は中国で報告されていませんでした。
はい。すべての3つのウイルスはインフルエンザウイルスですが、互いに異なっています。H7N9とH5N1は、時には人々に感染する動物のインフルエンザウイルスであると考えられています。H1N1ウイルスは、人に通常感染するものと、動物に通常は感染するものに大別できます。
現時点で、人々がどのように感染するのかは知られていません。確定例のうち何人かは、動物あるいは動物が収容されていた環境との接触がありました。ウイルスは現在、患者が報告されている場所近くの生きた鳥を扱う市場で、ニワトリ、アヒル、及び飼育下で繁殖された(captive-bred)鳩で発見されています。人から人への伝播の可能性が、そのままで感染の動物源の可能性が、検討されています。動物から人への感染の可能性、同様に人から人への感染の可能性に対して調査が進められています。
感染源と感染経路の両方が不確定ではありますが、感染全般を防ぐために基本的な衛生慣行に従うことが賢明です。その中には手指衛生や咳エチケット(原文では「呼吸器の衛生」)と食品安全対策が含まれます。
•以下のような時には手を洗いましょう:
食事を用意する前、用意している間、その後。
食べる前。
トイレを使用した後。
動物の世話をしたり、動物の排泄物を処理した後。
手が汚れている時。
家人が病気になりお世話をする時。
手指衛生は、また、(汚染面への接触から)自分自身への感染伝播を予防します。これらは、医療機関においては、患者に対して、および医療従事者や他の人への感染伝播を防ぐことにつながります。
•手が肉眼的に汚れている場合には、石けんと流水で手を洗いましょう。手が肉眼的に汚れていない場合は、石鹸と水で手を洗う、または、アルコール製剤による手指のクリーナーを使用しましょう。
•咳やくしゃみをするときには、医療用マスク、ティッシュペーパー、(服の)袖、または曲げた肘で口と鼻を覆いましょう。その直後に、蓋を閉じることの出来る容器に使用されたティッシュペーパーを捨てましょう。気道分泌物との接触後には、手指衛生を行いましょう。
インフルエンザウイルスはよく調理された食品からは伝染しません。なぜならば、インフルエンザウイルスは通常の過熱調理温度では(食品の全ての部分で70℃に達する、ぐつぐつ煮る、ピンク色の部位がない)で不活化するので、家禽や狩猟鳥を含み、適切に準備され、調理された肉を食することは安全です。
病気の動物や病死した動物を食べてはいけません。
アウトブレイクが発生している地域では、適切に調理が行われ、食事の準備が適切に行われていれば、肉製品は安全に消費することができます。生の肉や、未調理の血液を用いた料理の摂食は、高いリスクとなりますのでお勧め出来ません。
生きた動物のいる市場を訪問するときは、それらの生きた動物や、動物が接触する(物の)表面との直接的な接触を避けてください。もし農場に住んでいて、豚や鶏を食用に飼育している場合は、子どもを病気や死んだ動物に近づけないようにしてください。種類の違う動物は出来るだけ引き離してください。病気や死んだ動物がいたら、至急、地域当局に報告してください。病気や死んだ動物は屠殺して食用にしてはいけません。
いくつかの証拠が生きた家禽を扱う市場が感染源であることを示していますが、生きた家禽が主な、または唯一の感染源であることが確認出来ているわけではありません。他の動物や環境が感染源であることを除外する十分な証拠があるわけではありません。
生きた動物を扱う市場は、徹底した清掃を目的として、定期的に短い期間閉鎖されるべきであり、その清掃の間、すべての鳥は一時的に移動されなければなりません。生きた動物を扱う市場に持ち込まれる鳥の新たなバッチについては、定期的なサンプリングと検査を行うことで、感染した鳥を除去するための早期検出を確保する助けとすることができます。
生きた動物を扱う市場の定期的なメンテナンスはまた、経済的混乱や消費者が(感染源である)鳥への接触を最小化し、そして鳥の制御されない流通や販売網に転用されないことを確実にするものです。
ウイルス伝播のリスクは、実質的に良好な市場の慣行を適用することによって低減することができます。
以下を参照してください(http://www.who.int/foodsafety/fs_management/live_markets/en/index.html)
インフルエンザA(H7N9)感染予防のためのワクチンは現在ありません。しかし、ウイルスはすでに最初の患者から分離され、特徴が分かってきています。ワクチン開発の最初のステップは、ワクチンに用いることができる候補となるウイルス株の選択です。WHOは、パートナーと協力して、最良の候補ウイルスを識別するために利用可能なインフルエンザA(H7N9)ウイルスの特徴を明らかにしていきます。そうして、ワクチンが必要となった場合に、これらの候補ワクチンウイルスは、ワクチンの製造に用いることができます。
ノイラミニダーゼ阻害剤として知られている抗インフルエンザウイルス薬は、インフルエンザを発症して早期に投与されるとき、季節インフルエンザウイルス及びインフルエンザA(H5N1)ウイルス感染に対して有効であることが分かっています。しかし現時点では、インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症を治療するためのこれらの薬物の使用に関する経験は非常に少ない上に、インフルエンザウイルスは、これらの薬剤へ耐性を持つことがあります。
これらの感染が、社会における感染伝播に対して重大なリスクがあるかどうかを判断するためには、情報は十分ではありません。その可能性については、今行われている疫学調査の対象となっています。
医療従事者が感染症患者に接触することはよくあることです。そのためWHOは、適切な感染防護策・感染管理が一貫して医療現場において用いられ、医療従事者の健康状態を注意深く監視することを勧めます。インフルエンザA(H7N9)感染における疑い例や確定例の診療・看護を行う医療従事者は、標準予防策の実施と同時に、追加の予防措置を用いるべきです(以下を参照してください:http://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/WHO_CDS_EPR_2007_6/en/index.html)。
地域および国の保健当局は、次のような対策を行っています:
・新たな症例の早期発見と検査確定を確実にするために、原因不明の肺炎症例のための強化サーベイランス。
・疑い症例と既知症例との接触者の評価を含めた疫学調査。
・感染源を決定するために、家畜衛生当局との緊密な連携。
人に感染する能力を有するいかなる動物のインフルエンザウイルスは、パンデミックを引き起こす理論上のリスクを有しています。しかし、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスが、実際にパンデミックを引き起こしうるかどうかについては不明です。人への感染がしばしば検出されている動物の他のインフルエンザウイルスが、パンデミックを常に引き起こしているわけではありません。
中国で特定された症例数は非常に少ないです。WHOは、中国への訪問者にも、中国を離れる人々に対しても、旅行措置の適用を助言するものではありません。
いかなる中国製品と現在の症例を結び付ける証拠はありません。WHOは、この時点で貿易に関するいかなる制限が行われることに対しても反対します。
いいえ。彼は台湾へ渡航して三日後に発症しました。
その患者は、他の乗客には感染を起こしてはいないようです。他の確定例における1000人以上の接触者で検査をしたところ、このウイルスが、コミュニティにおいて人から人へのウイルス伝播を示すどのような証拠も認識されてはいません。
WHOは、今回の状況に関して、いかなる旅行制限も推奨していません。WHOは、利用可能な更新情報を随時提供していきます。
このウイルスの出現以来、WHOは加盟国へ情報を提供するために、国際保健規則(IHR)の下で働いています。WHOはまた、リスクアセスメント、更新情報の提供、暫定的なサーベイランスの推奨事項、症例の検査室診断、感染制御、および臨床管理を含めて、世界規模の保健に関する対応を調整するために国際的なパートナーと協力しています。
WHOは加盟国及び国際的な保健に関するパートナーと協同を継続し、更新情報を共有し続けます。
T Kageyama, S Fujisaki, E Takashita, H Xu, S Yamada, Y Uchida, G Neumann, T Saito, Y Kawaoka, M Tashiro
Eurosurveillance, Volume 18, Issue 15, 11 April 2013
Rapid communication
以下は、Eurosurveillanceで4月11日に発表された、当所インフルエンザウイルス研究センターによる鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス遺伝子の解析結果の報告「2013年2月から4月にかけて中国の患者から分離された新種の鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの遺伝子解析」の、感染症疫学センターによる邦文要約である。
新種のインフルエンザA(H7N9)ウイルスは、中国で2013年4月10日の時点で、33人に感染し、9人が死亡した。ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ遺伝子はおそらくユーラシアの鳥インフルエンザウイルス由来、残りの遺伝子が鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスに密接に関連している。HAレセプターのヒト型受容体への結合性と、哺乳動物における効率的な複製をおそらく制御しているPB2 RNAポリメラーゼサブユニットにおけるいくつかの特徴的なアミノ酸変化(特にE627K)は、新型ウイルスがパンデミックになる可能性があることを強調するものである。
(邦訳:感染症疫学センター)
鳥 インフルエンザ(AI)とは、A型のインフルエンザウイルスによって引き起こされる鳥の病気であり、数種の家禽、例えば鶏、七面鳥、ウズラ、ホロホロ鳥、 アヒルなどだけでなく、ペットの鳥や野鳥にも感染しうるものです。鳥インフルエンザウイルスはまた、それほど頻繁ではありませんが、ラット、マウス、イタ チ、フェレット、ブタ、ネコ、トラ、イヌ、ならびに人を含む哺乳動物種から分離されてきました。鳥インフルエンザウイルスには多くのウイルス株があります が、家禽における疾患の重症度に応じて二つのカテゴリーに分類することができます。それらは、鳥においては、典型的にはほとんど、あるいは全く臨床症状を 引き起こさない低病原性鳥インフルエンザウイルス(LPAI)と、鳥においては重度の臨床症状や高い死亡率を引き起こす高病原性鳥インフルエンザウイルス (HPAI)です。低病原性および病原性を有する鳥インフルエンザの間の区別は、OIEの診断マニュアルで説明されているように、検査の結果に基づいてい ます。低病原性または高病原性(疾患の重症度)としての鳥インフルエンザウイルスのこの特徴付けは家禽の種に特有のものであり、人を含む鳥インフルエンザ ウイルスに感受性であり得る他の種には必ずしも特有ではありません。
2013 年 4 月 13 日 仮訳
邦訳担当 感染症疫学センター
2013 年4月13日時点で、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染が49例確認されていることが、中国の国家衛生・計画出産委員会によりWHO に報告された。これらの症例の年齢は4~87歳で15例は女性である。7人が死亡し、残りのほとんどの症例は重症である。49例中の6例は本日報告されて おり、更なる調査が行われている。 これらの症例は3つの省(安徽省、江蘇省、浙江省)、そして2つの自治体(北京市、上海市)から報告されており、全て中国の東部と北部である。
2013年4月4日の時点で、中国の公衆衛生当局は、中国の4つの異なる省から人における新たな鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症14例を報告している。 すべての患者は重篤な呼吸器疾患で入院し、6人が死亡した。これらは、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス感染症の最初の人への感染である(上海から6人、安徽省から1人、江蘇省から4人、浙江省から3人の報告)。うち、13例は27歳から87歳までの成人、1例は4歳の小児であり、全例が2013年2月19日から3月31日の間に発症した。症例間での人から人への感染伝達や、疫学的リンクは同定されていない。可能性がある感染源に関する情報が把握されているが、まだ確認されていない。調査後に妥当な情報と見なされた時にその情報は提供される。
原文:http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/update_20130405/en/index.html
(邦訳:IDSC)
過去数週間、WHOは、中国からインフルエンザA(H7N9)ウイルスの人感染の報告を受けた。インフルエンザA(H7N9)ウイルスは、通常、鳥の間で循環するH7亜型ウイルスの大きなグループのうちの一つのサブグループである。
インフルエンザ H7亜型ウイルスの他のサブグループ(H7N2、H7N3、およびH7N7)による人への感染は、以前、オランダ、イタリア、カナダ、アメリカ合衆国、メキシコ、英国で報告されている。これらの感染症のほとんどは、家禽の発生に関連して発生した。感染は、オランダで発生した1人の死亡を除いて、主に結膜炎や軽度の上気道症状として生じた。
中国からの最近の報告は、インフルエンザA(H7N9)ウイルスの人感染の最初の例である。