国立感染症研究所

IASR-logo

ぷれいす東京の活動について

(IASR Vol. 37 p.174-176: 2016年9月号)

1994年, 横浜で日本初の国際エイズ会議が開催され, その年にぷれいす東京は誕生した。私たちはCBO(Community Based Organization)として, HIV/エイズとともに生きる人たちがありのままに生きられる環境(コミュニティ)を創り出すことをめざして, 「直接支援」, 「啓発・予防」, 「研究・研修」の3つの柱を軸に活動している()。

設立当初, 多くのHIV陽性者は, 差別や偏見を恐れて, ひっそりと息をひそめて生きていた。拠点病院の近くでシェルターを運営していたが, 1996~1997年頃までのHAART治療のない時代は, そばに転居する人たちが大勢いた。ターミナル期に関わることも多くあり, 死を意識しながら, 病気と向き合う人たちを支援する時代だった。

HAART登場以降, 治療の進歩に伴い, ぷれいす東京の活動も大きく変化してきた。一番の変化は, 予防啓発から直接支援まで, 多くのHIV陽性者がサービス提供側として参加し, 大きな力になっていることだ。かつては40人だった登録ボランティアは, 現在200人を超えている。

2002年にぷれいす東京のゲイグループが「LIVING TOGETHER」という冊子をエイズ予防財団の助成で制作したことが, 当事者参加型の啓発プログラムの始まりになった。これは, HIV陽性者やその周囲の人たちが感じているリアリティが, 周囲の人たちには全く伝わっていないというギャップを埋めるために, サービス利用者であるHIV陽性者, そのパートナー, 母親たちに手記を書いてもらい, それを編集したものだった。

さらに, 2005年からは, コミュニティセンターaktaとぷれいす東京が, LIVING TOGETHER計画というプロジェクトを立ち上げ, 「HIVをもっている人も, そうじゃない人も, 僕らはすでに一緒に生きている」 というキャンペーンを開始した。HIV陽性者等の手記を朗読するスタイルは, クラブイベント, 写真展, 研修会やワークショップ, 学校の授業などでも活用され, 大きな広がりをみせた。手記を通じて, HIV陽性者の生活や心情に触れることは, HIV陽性者が身近な存在だと気づくきっかけとなり, 予防や検査などの行動にも影響を与える可能性がある。

2015年度の活動実績1)は, HIV感染不安の電話相談(2,752件), HIV陽性者・パートナー・家族・専門家などを対象とした電話や対面の相談(2,807件), HIV陽性者, パートナー, 家族同士が安全に出会える場・ネストプログラム(のべ1,166人)のほか, 啓発・予防, 研究・研修, 講師派遣などである。2015年度のHIV陽性者等への相談内容は, 生活に関する相談, 心理や精神に関する相談, 制度に関する相談が多く寄せられていた。
 ・心理や精神に関する相談(939件)
 ・生活に関する相談(823件)
 ・対人関係に関する相談(464件)
 ・制度に関する相談(301件)
 ・病気や病態の変化や服薬に関する相談(289件)
 ・医療体制や受診に関する相談(204件)

2016年6月からは, HIV陽性者や周囲の人を対象とした電話相談に, HIV陽性の相談員が加わった。同様にHIV陽性者, パートナー, 家族向けのピア・プログラム(ネストプログラム)にも, 多くのHIV陽性者, 周囲の人たちが, ボランティアとして参加するようになっている。

ぷれいす東京の研究グループでは, 大学の研究者と共同で全国調査をこれまでに3回実施してきた。調査手法に違いはあるものの, 2003年2)と2013年3)のデータの比較ではのような変化があった。

データを比較すると, 治療技術の向上により, 服薬や通院の負担は大きく軽減され, 制限なく働ける意識も上昇しているが, 就労率やカミングアウトの割合は低下しており, 治療環境の向上と社会の中での病気の伝えにくさのアンバランスな状況があぶり出された結果となり, 相談の受け手としての実感にも通じるものがあった。 

2016年, ぷれいす東京のWebサイトは, 毎月1~2万件を超えるアクセスがある。今後は, Web上の陽性者向け, 周囲の人向け, 不安者向けなどのQ&Aを充実させ, 市民一人一人が自分の問題としてHIVと向き合うことを支援していきたい。Webサイトを一度ぜひご覧ください(http://www.ptokyo.org/)。

さらに, 市民との対話のための場づくりとして「ぷれいすトーク」を2015年度より開催している。その中では, シングルマザーの子育てと性教育, 親しい人をエイズで亡くした人の語る場, トランスジェンダーとHIV/エイズ, 医療や福祉系の学生で, HIV陽性者に関わりたい人など, 様々なニーズがあった。今後も, 市民との交流の場を設けて, 性の健康やHIV/エイズについて, 話せる場を続けていきたいと考えている。

 

参考文献
  1. ぷれいす東京2015年度活動報告書
  2. 平成15~16年度厚生労働科学研究費補助金「HIV感染症の医療体制の整備に関する研究」(主任研究者:木村 哲, 研究分担者:小西加保留, 研究協力者:若林チヒロ, 生島 嗣)
  3. 平成24~26年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業「地域においてHIV陽性者等のメンタルヘルスを支援する研究」(研究代表者:樽井正義, 研究分担者:若林チヒロ)
  4. 2009年から, 厚生労働省の委託事業として, HIV陽性者とそのパートナー, 家族のための専用の相談電話「ポジティブライン」0120-02-8341(月~土:13:00~19:00)と「対面相談サービス」を提供している。

特定非営利活動法人 
ぷれいす東京 代表 生島 嗣

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version