国立感染症研究所

ここでは、学術雑誌に掲載された感染研の研究者の論文や報道等のあった研究成果の要約を公開することで、感染研が行っている研究業務を紹介していきます。

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Significant role of host sialylated glycans in the infection and spread of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2

Saso W, Yamasaki M, Nakakita S, Fukushi S, Tsuchimoto K, Watanabe N, Nongluk S, Kanie O, Muramatsu M, Takahashi Y, Matano T, Takeda M, Suzuki Y, Watashi K

PLoS Pathog 18(6): e1010590 (2022)
doi: 10.1371/journal.ppat.1010590

約20年前に流行したSARSコロナウイルス(SARS-CoV)と比較して、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界での感染者は桁違いに多く、その強い伝播力のメカニズム解明が求められる。本研究では、SARS-CoV-2は宿主細胞のシアロ糖鎖を利用して効率的な感染と伝播を可能とすることを示した。SARS-CoV-2スパイクS1サブユニットはα2-6結合型シアロ糖鎖に直接結合し、これによって宿主受容体ACE2と効率よく相互作用した。一方でシアル酸のSARS-CoV感染への影響はほとんど見られなかった。α2-6結合型シアル酸含有化合物はSARS-CoV-2感染を特異的に強く阻害することが明らかとなった。本研究成果は、SARS-CoV-2の効率良い伝播を説明する新たな分子機構を提唱するものである。

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Structural insights into the HBV receptor and bile acid transporter NTCP

Park H, Iwamoto M, Yun JH, Uchikubo-Kamo T, Son D, Jin Z, Yoshida H, Ohki M, Ishimoto N, Mizutani K, Oshima M, Muramatsu M, Wakita T, Shirouzu M, Liu K, Uemura T, Nomura N, Iwata S, Watashi K, Jeremy R. H. Tame, Nishizawa T, Lee W, Sam-Yong Park

Nature
doi:https://doi.org/10.1038/s41586-022-04857-0

B型およびD型肝炎ウイルス(HBV、HDV)は肝細胞表面の、胆汁酸輸送体NTCP/SLC10A1に吸着することで感染を開始するが、その立体構造については長らく不明であった。本研究ではクライオ電子顕微鏡単粒子解析によりNTCPの立体構造を解明し、そのウイルス感染における各アミノ酸の役割を明らかにした。NTCPは、これまでに知られる近縁の胆汁酸輸送体とは異なり、9本の膜貫通αヘリックスからなり、各領域の位置や向きが変化することで胆汁酸とナトリウムを輸送することが示唆された。またウイルスとの結合には、第一膜貫通ヘリックスに存在する、27, 31, 35番のロイシンが重要であることが明らかになった。これらの結果は今後、HBV/HDVの感染機構の理解だけでなく、構造情報を基にした合理的薬剤設計を可能とする革新的な情報である。

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Fungal Secondary Metabolite Exophillic Acid Selectively Inhibits the Entry of Hepatitis B and D Viruses

Kobayashi C, Watanabe Y, Oshima M, Hirose T, Yamasaki M, Iwamoto M, Iwatsuki M, Asami Y, Kuramochi K, Wakae K, Aizaki H, Muramatsu M, Sureau C, Sunazuka T, Watashi K

Viruses 14(4): 764 (2022)
doi:https://doi.org/10.3390/v14040764

B型およびD型肝炎ウイルス(HBV/HDV)は世界にそれぞれ2億9000万人、1500万人に慢性感染する公衆衛生上重大な病原体であるが、完治可能な治療薬は存在しない。本研究では北里大学との共同研究で、真菌由来天然化合物をスクリーニングし、Exophillic acidが抗HBV/HDV活性を持つことを見出した。この化合物はHBVおよびHDVが細胞に吸着する際に用いる侵入受容体ナトリウムタウロコール酸共輸送体(NTCP/SLC10A1)と直接結合して、ウイルスとNTCPの吸着を阻害することが明らかとなった。またExophillic acidは既存薬ラミブジンおよびエンテカビルに耐性のHBVにも感染阻害効果を持つことが分かった。以上より、この化合物は新しいHBVおよびHDVの治療薬開発に有用であると期待される。

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Ligand recognition by the lipid transfer domain of human OSBP is important for enterovirus replication

Jun Kobayashi, Minetaro Arita, Shota Sakai, Hirotatsu Kojima, Miki Senda, Toshiya Senda, Kentaro Hanada and Ryuichi Kato

ACS Infectious Diseases, In Press
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsinfecdis.2c00108

エンテロウイルスの複製には、宿主細胞のタンパク質PI4KBとOSBPが必要とされます。今回、国立感染症研究所ウイルス第二部第二室と高エネルギー加速器研究機構構造生物学研究センターとの共同研究により、ヒトOSBPの脂質輸送に関与する領域のX線結晶構造解析による立体構造の決定に成功しました。さらにOSBP阻害剤T-00127-HEV2との相互作用に必要とされるアミノ酸残基を同定し、OSBPの新規活性解析法の開発に成功しました。これまでにT-00127-HEV2を含めて幾つかのOSBP阻害剤が報告されていますが、今回得られたOSBPタンパク質の構造を基にして、効果的な活性を示す抗ウイルス薬の開発が進むことが期待されます。

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imm 2022 02
Vaccination-infection interval determines cross-neutralization potency to SARS-CoV-2 Omicron after breakthrough infection by other variants

Sho Miyamoto†, Takeshi Arashiro†, Yu Adachi†, Saya Moriyama†, Hitomi Kinoshita†, Takayuki Kanno, Shinji Saito, Harutaka Katano, Shun Iida, Akira Ainai, Ryutaro Kotaki, Souichi Yamada, Yudai Kuroda, Tsukasa Yamamoto, Keita Ishijima, Eun-Sil Park, Yusuke Inoue, Yoshihiro Kaku, Minoru Tobiume, Naoko Iwata-Yoshikawa, Nozomi Shiwa-Sudo, Kenzo Tokunaga, Seiya Ozono, Takuya Hemmi, Akira Ueno, Noriko Kishida, Shinji Watanabe, Kiyoko Nojima, Yohei Seki, Takuo Mizukami, Hideki Hasegawa, Hideki Ebihara, Ken Maeda, Shuetsu Fukushi, Yoshimasa Takahashi, Tadaki Suzuki (†These authors contributed equally)

Med, Volume 3, Issue 4, 2022

2回mRNAワクチンを接種した後にアルファ系統またはデルタ系統のウイルス感染(ブレークスルー感染)を経験した人は、2回ワクチン接種を受けたが感染しなかった人に比べて、オミクロン系統に対する高い血清中和抗体価を持つことを明らかにしました。ワクチン接種から感染に至るまでの日数が長いほど、オミクロン系統を含む変異ウイルスに対する血清中和抗体価が高く誘導されていました。このような変異ウイルスに対する中和抗体の誘導要因の同定は、各地域のワクチン接種や感染流行の状況を踏まえた集団免疫の評価に寄与するだけでなく、3回目のワクチン接種がオミクロン系統の中和抗体産生を誘導する機構の理解を進めると期待されます。

本研究では、オミクロン系統とは異なる抗原のワクチン接種とウイルス感染によるブレークスルー感染にも関わらず、オミクロン系統に対する高い中和抗体価が誘導されること、ワクチン接種から感染までの日数が回復期の従来株、アルファ系統、ベータ系統、デルタ系統、オミクロン系統(BA.1とBA.1.1)に対する血清中和抗体価と正の相関を示すことを明らかにしました。これはワクチン接種後から感染に至るまでの日数が進むほど抗体を産生する記憶B細胞の成熟が進み(Kotaki et al. Science Immunology. 2022)、感染によって記憶B細胞が反応し、中和抗体産生が誘導されることを支持しています。

※本研究はブレークスルー感染の免疫応答から、集団免疫や免疫誘導の理解のために実施されたものであり、ブレークスルー感染を3回目ワクチン接種の代替とすることを支持するものではありません。ブレークスルー感染にも、ウイルス感染による発症及び重症化、他者への感染のリスクが伴います。

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Env-independent protection of intrarectal SIV challenge by vaccine induction of Gag/Vif-specific CD8+ T cells but not CD4+ T cells

Ishii H, Terahara K, Nomura T, Okazaki M, Yamamoto H, Shu T, Sakawaki H, Miura T, Watkins DI, Matano T.

 Mol. Ther. 30: 2048-2057, 2022

ワクチン抗原至適化はHIVワクチン開発において重要であり、HIVの優先的な感染標的であるHIV特異的CD4陽性T細胞の誘導を抑制することは有望な戦略の一つである。本研究では、SIV Gag・Vifを標的とする特異的CD4陽性T細胞を誘導せずに特異的CD8陽性T細胞を選択的に誘導する新規抗原(TC11)を発現するワクチンについて、動物モデルにおけるSIV経直腸感染防御効果を解析した。低用量SIV経直腸反復チャレンジ実験の結果、ワクチン接種群では12頭中8頭で感染が防御され、ワクチン非接種群と比べて有意な感染防御効果を示した。本研究成果は、多様性の高い表面抗原Envを用いないHIVワクチンで初めて粘膜感染防御効果を示したものであり、本抗原設計を活用したHIVワクチン開発の進展が期待される。

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Induction of neutralizing antibodies against hepatitis C virus by a subviral particle-based DNA vaccine

Keigo Yato, Mami Matsuda, Noriyuki Watanabe, Koichi Watashi, Hideki Aizaki, Takanobu Kato, Koji Tamura, Takaji Wakita, Masamichi Muramatsu, and Ryosuke Suzuki

Antiviral Research Vol. 199, 105266. 2022.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166354222000341

C型肝炎に有効な治療薬が開発されたが、ウイルス感染を予防するワクチンは未だ開発途上である。我々はこれまでの研究で、日本脳炎ウイルス様粒子上にC型肝炎ウイルス(HCV)の中和エピトープを提示させる事に成功している。本研究では粒子上に提示可能な新たな部位を同定し、提示させるエピトープ数を増やすとともに、この技術を利用したDNA免疫によるHCV中和抗体誘導能をマウスで検証した。粒子上に提示するエピトープ数を増やす事により、DNAを免疫したマウスの血清はHCVに対してより強い中和活性を示した。一方で日本脳炎ウイルスに対する中和活性は減弱した。本研究により、フラビウイルス粒子を利用したエピトープ挿入DNAワクチンの、新たなワクチンモダリティとしての可能性が示された。

本研究は、AMEDの研究支援を受け実施した。

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Distinct immune cell dynamics correlate with the immunogenicity and reactogenicity of SARS-CoV-2 mRNA vaccine

Takano T, Morikawa K, Adachi Y, Kabasawa K, Sax N, Moriyama S, Sun L, Isogawa M, Nishiyama A, Onodera T, Terahara K, Tonouchi K, Nishimura M, Tomii K, Yamashita K, Matsumura T, Shinkai M, Takahashi Y

Cell Reports Medicine. 2022 Apr 21. doi: 10.1016/j.xcrm.2022.100631.
https://www.cell.com/cell-reports-medicine/fulltext/S2666-3791(22)00156-2

SARS-CoV-2 mRNAワクチンの2回接種は、強力なSARS-CoV-2中和抗体を誘導する一方で、副反応が比較的高頻度に発生する。

本研究では、92人のワクチン接種者に高次元の免疫プロファイリングを適用し、中和抗体価、副反応の重症度、またはその両方と相関する6つのワクチン誘導性免疫ダイナミクスを特定した。ナチュラルキラー(NK)細胞/単球サブセット(CD16+ NK細胞、CD56high NK細胞、Non-classical monocyte)、樹状細胞(DC)サブセット(DC3、CD11c- AS-DC)、NKT様細胞の初期ダイナミクスは、それぞれ中和抗体価、副反応の重症度、あるいはその両方に対して相関を示した。中和抗体価や副反応と相関した細胞は、共通してIFN-γ誘導性ケモカインの上昇と関連していた。一方で、ケモカイン受容体であるCCR2とCXCR3は、中和抗体価と相関した細胞ではワクチン誘導的に発現増強されたが、副反応と相関した細胞では恒常的に発現していたことから、それぞれ異なる様式で発現調節されていることが示された。本免疫データは、免疫原性を高めつつ副反応を低減させるためのワクチン戦略の構築に寄与することが期待される。

本研究はAMEDの支援を受けて実施されました。

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Activities of endogenous APOBEC3s and uracil-DNA-glycosylase affect the hypermutation frequency of hepatitis B virus cccDNA

Kitamura K, Fukano K, Que L, Li Y, Wakae K, Muramatsu M.

J Gen Virol. 2022; 103: 001732
https://doi.org/10.1099/jgv.0.001732

抗ウイルス因子APOBEC3タンパク質群は、ウイルスゲノムにC-to-Uの変異を導入することが知られている。DNAウイルスであるB型肝炎ウイルスは、感染した細胞の核内でcccDNAと呼ばれる環状DNAを形成し、これがウイルス複製の基点となっている。本研究では、肝細胞へのインターフェロンγ刺激によってAPOBEC3タンパク質群が発現上昇し、cccDNAのウイルス複製能を低下させるほど高頻度の変異を誘導していること、しかし一方で、細胞の持つDNA修復因子UNGがこの変異を除去していることを、培養細胞を用いた実験系で明らかにした。肝細胞内での両者のバランスが、ウイルスゲノム遺伝情報の破壊あるいは多様性に影響する可能性が示唆された。

本研究はAMED、JSPS及び武田科学振興財団の研究助成を受けて実施された。

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Sendai virus particles carrying target virus glycoproteins for antibody induction

Ishii H, Nakamura-Hoshi M, Shu T, Matano T.

 Vaccine. 40: 2420-2431, 2022

ウイルス表面膜蛋白質を標的とした抗体誘導はワクチン開発における重要な戦略であるが、エンベロープウイルスによっては表面膜蛋白抗原構造を維持したワクチン設計が課題となる場合がある。本研究では、HIVおよびヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)由来の表面膜蛋白質(Env)を用いた新規抗原EnvFを構築し、EnvF抗原を搭載するセンダイウイルス(SeV)粒子ワクチンを開発した。EnvF抗原はSeV粒子に効率的に取り込まれるとともに、Env三量体構造を認識する抗HIV中和抗体により認識され、EnvFが三量体抗原標的を提示しうることを明らかにした。また、動物実験で、EnvF発現SeVおよびEnvF搭載SeV粒子の接種により抗Env抗体が効率的に誘導されることを明らかにし、本プラットフォームがウイルス感染症に対する抗体誘導ワクチン開発において有用であることを示した。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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