epi 2024 02
In vitro activity of cefiderocol against carbapenemase-producing and meropenem-nonsusceptible gram-negative bacteria collected in the Japan Antimicrobial Resistant Bacterial Surveillance (JARBS-GNR)

Shizuo Kayama, Sayoko Kawakami, Kohei Kondo, Norikazu Kitamura, Liansheng Yu, Wataru Hayashi, Koji Yahara, Yo Sugawara, Motoyuki Sugai

J. Glob. Antimicrob. Resist. 38, 12–20 (2024).
doi: 10.1016/j.jgar.2024.05.009.
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38789082/

厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業JANISにリンクして日本国内の耐性菌を収集した全国ゲノムサーベイランスJARBS-GNRから得られた耐性菌に対するセフィデロコル(CFDC)のin vitro活性を調査した。カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌の97.4%、カルバペネマーゼ産生緑膿菌の100%に対してCFDC感性であることが示された。また、日本で最も分離割合が多いIMP保有株の99.2%に有効であり、非常に効果が高いことが示された。これにより、CFDCは日本における多剤耐性菌に対して有望な治療薬である可能性が示唆された。この研究は、セフィデロコルの効果や耐性メカニズムを理解する上で重要であり、将来的な治療戦略の開発に貢献する情報を提供する。本研究は、独立行政法人 日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症研究プログラム」(助成番号:JP22fk0108604, JP23fk0108604)の支援を受けて実施された。

日時:令和6年7月10日-7月11日
場所:東京都江戸川区 タワーホール船堀 現地開催 もしくは Zoom等のweb開催
1.麻疹・風疹 2.HIV関連 3.インフルエンザ 4.レンサ球菌 5.カンピロバクター 6.結核 7.アルボウイルス 8.エンテロウイルス 9.ノロウイルス 10.レジオネラ 11.薬剤耐性菌 12.寄生虫 13.リケッチア 14.アデノウイルス 15.大腸菌 16.百日咳・ボツリヌス 17.動物由来感染症









An efficient trans complementation system for in vivo replication of defective poliovirus mutants

Minetaro Arita

J Virol, 2024, https://doi.org/10.1128/jvi.00523-24

ポリオウイルスが細胞に感染すると、1本の大きなウイルスタンパク質が作られます。この大きなウイルスタンパク質から機能を持った個々のウイルスタンパク質が切り出されて、ウイルスの複製を行います。しかし、ウイルスタンパク質の一部に欠陥があり、複製できないポリオウイルス変異体が、外から供給されるウイルスタンパク質を用いて複製できるかという点については、長年結論が出ていませんでした。今回の研究により、ウイルスゲノムRNAの複製を行うポリメラーゼ(ウイルスタンパク質3D)の活性は、外から与えることができてポリオウイルスの複製を効率よくレスキューすることが明らかにされました。興味深いことに、ポリメラーゼ本体ではなく、ポリメラーゼを含む前駆体ウイルスタンパク質(ウイルスタンパク質3CD)がこの活性に必要なこと、また一部のウイルスタンパク質は外から与えられたプロテアーゼでは切り出されないこともわかりました。ポリオウイルスはエンテロウイルスと頻繁に組換えを起こすことが知られており、今回得られた知見はポリオウイルスの複製やウイルス間の組換えの機構の解明につながることが期待されます。

本研究は、AEMD(課題番号:JP23fk0108627)およびJSPS(課題番号:JP22K07107)の支援を受けて行われました。

vaccine-2024-02
Prophylactic vaccination inducing anti-Env antibodies can result in protection against HTLV-1 challenge in macaques

Nakamura-Hoshi M, Hiroshi I, Nomura T, Nishizawa M, Hau TTT, Kuse N, Okazaki M, Ainai A, Suzuki T, Hasegawa H, Yoshida T, Yonemitsu K, Suzaki Y, Ami Y, Yamamoto H, Matano T

 Mol Ther, Epub (11:S1525-0016(24)00323-X, 2024).

HTLV-1感染拡大抑制は、近年、国内外の重要課題とされ、ワクチン開発が求められている。HTLV-1はcell-cell感染により伝播するため、抗体による感染防御が可能かどうかが問題であった。本研究は、カニクイサルHTLV-1チャレンジモデルを用い、抗Env抗体誘導ワクチンの感染防御効果を明らかにした。ワクチン接種群10頭のうち、抗HTLV-1中和抗体誘導の認められた8頭のみで、チャレンジ後、感染が防御され、プロウイルスが検出されなかった。このうち5頭でCD8涸渇実験を行ったところ、3頭ではプロウイルス出現や抗HTLV-1抗体上昇が検出されず、機能的にsterlileな感染防御効果が示された。本結果は、予防HTLV-1ワクチン開発における抗Env抗体誘導戦略の合理性を示すものである。

bac 2024 04
Multimodal inhibitory effect of matcha on Porphyromonas gingivalis

Nakao R, Takatsuka A, Mandokoro K, Narisawa N, Ikeda T, Takai H, Ogata Y.

Microbiology Spectrum.
DOI: https://doi.org/10.1128/spectrum. 03426-23 0:e03426-23.

歯周病は、日本人が歯を喪失する最大の原因となっており、新たな予防および治療法の開発が望まれている。本論文において、抹茶は歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisの菌体表層の正常な構造と機能を喪失させる効果と、同菌のFimA線毛に作用して菌同士を凝集させる効果を有することが明らかとなった。また、抹茶に含まれる増殖阻害活性等を示す主要なカテキン類が同定された。さらに、アズレン、麦茶、抹茶の含嗽による歯周病に対する効果を調べた所、抹茶で含嗽を行った患者のみが、介入前と比べてP. gingivalisの菌数を有意に減少させて、4〜5 mmの深さの歯周ポケットを改善させる傾向を認めた。以上より、抹茶の多面的な抗菌活性に立脚した新しい歯周病の制御手段の確立が期待される。

本研究は、抹茶と健康研究会及びJSPSの支援を受けて実施された。

Mucosal adjuvanticity and mucosal booster effect of colibactin-depleted probiotic Escherichia coli membrane vesicles

Uchiyama H, Kudo T, Yamaguchi T, Obana N, Watanabe K, Abe K, Miyazaki H, Toyofuku M, Nomura N, Akeda Y, Nakao R.

 Human Vaccines & Immunotherapeutics.
2024 Dec 31;20(1):2337987.
doi: 10.1080/21645515.2024.2337987. Epub 2024 Apr 24.

細菌が産生する膜小胞を活用した新たなワクチンの開発に向けて、細菌由来毒素コリバクチン (Clb)を産生しないプロバイオティックス大腸菌株を作製した。Clb産生、非産生株の培養上清から回収した膜小胞をマウス鼻腔に投与したところ、Clbを含む膜小胞と比べClbの無い膜小胞のアジュバント活性は高かった。また、異種抗原を発現するClb非産生株を作製後、膜小胞を回収して皮下へ初回投与後、同じ膜小胞による皮下または経鼻でのブースター効果について検討した。その結果、2, 3回目も皮下投与した場合と比べ、2, 3回目に経鼻投与すると血中の抗原特異的IgG産生は同程度だが、血中と粘膜面での抗原特異的IgA産生は増強した。以上より、皮下と経鼻のルートを組み合わせることで膜小胞ワクチンの効果が向上する可能性が示唆された。

本研究はJSPSの支援を受けて実施された。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan