国立感染症研究所

National seroepidemiological study of COVID-19 after the initial rollout of vaccines: Before and at the peak of the Omicron-dominant period in Japan

Takeshi Arashiro*, Satoru Arai*, Ryo Kinoshita, Kanako Otani, Sho Miyamoto, Daisuke Yoneoka, Taro Kamigaki, Hiromizu Takahashi, Hiromi Hibino, Mai Okuyama, Ai Hayashi, Fuka Kikuchi, Saeko Morino, Sayaka Takanashi, Takaji Wakita, Keiko Tanaka-Taya, Tadaki Suzuki†, Motoi Suzuki
(*These authors contributed equally; †corresponding author)

Influenza and Other Respiratory Viruses doi: 10.1111/irv.13094

新型コロナワクチン導入後のオミクロン流行前(2021年12月)およびオミクロン(BA.1/BA.2)流行のピーク(2022年2-3月)に、5都府県16,296名を対象として人口ベースの血清疫学調査が行われた。抗N抗体(感染のみで誘導)保有割合はオミクロン流行前には2.2%(95% CI 1.9-2.5)、BA.1/BA.2のピークには3.5%(3.1-3.9)であった。オミクロン流行前の我が国の抗体保有割合は、米国(33%)、英国(25%)、世界(45%)と比較して1/10未満であったが、多くの者がワクチンにより抗体(抗S抗体)を獲得していた。全体の疾患負荷は低かったが、都心居住者、若年者、ワクチン未接種、特定の職種(介護従事者・保育従事者・飲食業従事者)等は累積感染歴と高い相関を示した。

Non-Omicron breakthrough infection with higher viral load and longer vaccination-infection interval improves SARS-CoV-2 BA.4/5 neutralization

Sho Miyamoto, Takeshi Arashiro, Akira Ueno, Takayuki Kanno, Shinji Saito, Harutaka Katano, Shun Iida, Akira Ainai, Seiya Ozono, Takuya Hemmi, Yuichiro Hirata, Saya Moriyama, Ryutaro Kotaki, Hitomi Kinoshita, Souichi Yamada, Masaharu Shinkai, Shuetsu Fukushi, Yoshimasa Takahashi, Tadaki Suzuki.

 iScience. 2023 Feb 17;26(2):105969.

COVID-19症例におけるSARS-CoV-2オミクロンなどの変異ウイルスに対する免疫応答は、ワクチン接種や感染の有無など様々な要因に影響される。既存の免疫力を有するCOVID-19症例におけるSARS-CoV-2に対する中和活性の向上の要因を解明することは、オミクロンなどの抗原性の異なる変異ウイルスに対する幅広い中和抗体を誘導するブースターワクチンの改良に役立つ。

本研究により、ブレークスルー感染後のオミクロンに対する血清中和活性の大きさと幅は、主に上気道ウイルス量とワクチン接種から感染のインターバルによって誘導されることが明らかとなった。抗原性の離れたオミクロンBA.5亜系統までカバーする広い血清中和活性は、高ウイルス量かつ長いインターバルの症例で観察された。抗原地図を描くことで、変異ウイルスに対する中和の幅を広げる上で,インターバルが重要な役割を担っていることを明らかにした.この成果は、変異ウイルスに対する耐性を持つブースターワクチンの開発において、抗原設計と同様に投与間隔の最適化が重要であることを示している。

Discovery of super–insecticide-resistant dengue mosquitoes in Asia: Threats of concomitant knockdown resistance mutations

Kasai S, Itokawa K, Uemura N, Takaoka A, Furutani S, Maekawa Y, Kobayashi D, Imanishi-Kobayashi N, Amoa-Bosompem M, Murota K, Higa Y, Kawada H, Minakawa N, Tran CC, Nguyen TY, Tran VP, Keo S, Kang K, Miura K, Ng, LC, Teng HJ, Dadzie S, Subekti S, Mulyatno KC, Sawabe K, Tomita T, Komagata O.

 Science Advances 8, eabq7345, 2022

ベトナムで採集されたネッタイシマカ(デング熱の主要な媒介蚊)がピレスロイド系殺虫剤に著しく強い耐性を示すことを見出し、その原因を突き止めました。ベトナムのネッタイシマカの多くで作用点ナトリウムチャネルの遺伝子上に重要なアミノ酸置換(L982W)をもたらす突然変異を確認しました。別のアミノ酸変異(F1534C)も同時に保有する個体も発見し、この二重変異は解毒酵素との組合わせで、桁外れに強い耐性(野生型の1000倍以上)をもたらすことを殺虫試験および分子モデリング解析で明らかにしました。さらにカンボジアのプノンペンでは、この多重変異を有する超耐性ネッタイシマカが70%以上を占めていました。2022年までにL982Wをもつネッタイシマカは周辺国から報告されていませんが、今後、人流・物流とともに分布が世界に拡大すれば、デング熱のコントロールにとって重大な脅威となりうると考察されました。

本研究はAMEDの支援を受けて長崎大、東京大ほかとの共同で実施されました。

A highly immunogenic vaccine platform against encapsulated pathogens using chimeric probiotic Escherichia coli membrane vesicles

Nakao R, Kobayashi H, Iwabuchi Y, Kawahara K, Hirayama S, Ramstedt M, Sasaki Y, Kataoka M, Akeda Y, Ohnishi M.

 NPJ Vaccines, Nov 26;7(1):153, 2022

感染症に対するワクチンは、年齢や疾病の有無を問わず安全に投与でき (安全性)、かつ防御免疫を付与できる (ワクチン効果) ことが望ましい。本論文では、プロバイオティクスが放出するナノ粒子である膜小胞 (MVs)を活用した新しいワクチン法を報告した。遺伝子組換え技術により、病原体を覆う莢膜抗原をプロバイオティクス大腸菌MVsの最外層に発現させたワクチンを作製した。このキメラ型MVsの特長として、熱に対する高い安定性、長期にわたる免疫誘導能力、さらに高齢個体においても強力に免疫を付与できることが明らかとなった。既存の感染症、また将来起こりうる感染症への備えとして、当該 MVsワクチンのプラットフォームの活用が期待される。

本研究はJSPS、AMEDの支援を受けて実施された。

Establishment of Vero cell lines persistently harboring a yellow fever virus 17D subgenomic replicon

Kyoko Saito, Kentaro Shimasaki, Masayoshi Fukasawa, Ryosuke Suzuki, Yuko Okemoto-Nakamura, Kaoru Katoh, Tomohiko Takasaki, Kentaro Hanada

Virus Research Volume 322, December 2022, 198935.
https://doi.org/10.1016/j.virusres.2022.198935

黄熱は、黄熱ウイルス(YFV)が引き起こす蚊媒介性感染症で、有効なワクチンがありますが、特異的な治療薬はありません。私達は、YFV(17D株)のゲノムRNA上の構造遺伝子を蛍光タンパク質の遺伝子に置換したレプリコンを作製してサル腎由来Vero 細胞に導入し、レプリコンが持続的に複製される‘レプリコン細胞’を樹立しました。この細胞では、蛍光強度でレプリコン複製の度合を知ることが可能で、実際に、YFV増殖を阻害する薬剤によって、レプリコン細胞の蛍光が低下することが確認されました。また、レプリコン細胞とYFV感染細胞における複製タンパク質および複製中間体・二本鎖RNAの分布は類似していました。以上の結果は、レプリコン複製が感染細胞のゲノム複製を模倣していることを示しており、レプリコン細胞は抗YFV薬や宿主因子の探索に有用であると考えられました。

本研究はJSPS、AMED等の支援を受け、感染研・産総研・神奈川衛研が行いました。

Macrophage depletion reactivates fecal virus shedding following resolution of acute hepatitis A in Ifnar1-/- mice

Shiota T, Matsuda M, Zheng X, Nagata N, Ishii K, Suzuki R, Muramatsu M, Takimoto K, Hanaki K, Lemon SM, McGivern DR, Hirai-Yuki A

J Virol. 2022 Nov 10 https://journals.asm.org/doi/10.1128/jvi.01496-22

A型肝炎は世界で年間140万人の患者が発生し、2016年には7千人が死亡した重大な疾病です。典型的な急性ウイルス性肝炎で、多くは一過性で終りますが、一部の患者で糞便中へのウイルス排出の再開を伴う再燃が報告されています。肝臓からのA型肝炎ウイルス(HAV)排除機構はわかっていません。国立感染症研究所とノースカロライナ大学の共同研究で、HAV感染マウスでは肝炎と糞便中へのウイルス排出の終息後も肝臓ではウイルスRNAが長期間複製し続け、この時期のウイルスの制御にはマクロファージが必須であることが明らかになりました。この新しい知見は肝炎ウイルスが肝臓から最終的に排除される仕組みの解明に貢献するものです。

本研究は、日本医療研究開発機構、米国国立衛生研究所、日米医学協力計画の支援を受けて実施されました。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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